大誤算
途中視点変わります。
◆◇◆◇
「ナディア、明日登城することになった」
突然父にそう言われた。
なぜ?!
「新しいドレスをリリーに渡しておくから明日はそれを着ていきなさい」
「ちょっとお父様っ...」
言い終わる前に出ていってしまった。
「お嬢様良かったですね!」
何も良くない!!この時期に登城する理由なんて婚約ぐらいしか思いつかない...!
でも!もしかしたら違うかもしれない!うん!
◆◇◆◇
違くなかった...。
遡ること数時間前。
いつもより、気合いの入った服装で登城すると国王陛下と王妃殿下が待ち構えていた。
「エバンス公爵!よく来た!おぉ、そちらが公爵の娘のナディアか、とても美しく成長しているな!」
「ありがとうございます、両陛下にお目にかかれて光栄に存じます」
おしとやかにお辞儀してみせる。
「妻に似てとても美しいでしょう」
お父様!国王陛下にまで家族自慢をしないでください...!
「公爵は相変わらず家族が好きなようだな、ほれ、いつまでも立ってないで座るが良い」
「陛下、私は公爵夫人とお話してきてもよろしいでしょうか?」
王妃殿下が国王陛下に話をする。
そう、お母様と王妃殿下は親友でとても仲がいいのです。
「良いぞ、久しぶりに友にあったのだ、ゆっくり話してくるといい」
「ありがとうございます」
母と王妃殿下がお辞儀をして去っていった。
「では、公爵、本題に入ろう」
「はい」
「今日そなたたちを呼んだのは他でもない、婚約の話だ」
最悪だ!!なぜ...第一王子殿下は男色家なはずなのに...!
「ナディアが良ければぜひヘリオスと婚約してもらいたい」
国王陛下直々に言われたら不可避ではないですか...!!
「公爵には元々伝えていたんだが、ナディアの気持ち次第だと言われてしまってな、無理にとは言わない」
お父様...国王陛下...おふたりとも私の気持ちを優先してくださっている...。
よし、はっきり断ろう。
「申しわ...」
「遅れて申し訳ありません、父上」
断ろうとしたら誰かの声に被せられた。
「やっと来たかヘリオス!ナディア、そやつは我が息子ヘリオスだ、ヘリオス、こちらはエバンス公爵家の娘、ナディアだ」
軽く礼をする。
「ちょうど良い、ヘリオスに庭園を案内させよう、ナディア、返事はそれからでも良いだろうか」
「分かりました、そうさせていただきます」
「ではヘリオス、案内を」
「はい」
こちらに向かってくる。
「お手を」
見上げるとその人は金髪碧眼でまさに王子様という風貌でした。ですが...不思議と懐かしいような気持ちになりました。お会いしたことは一度もないのに、なぜでしょう...?
手を借りて椅子から立ち上がる。
「ありがとうございます」
「では庭園をご案内致します」
今度は腕を差し出された。
手を置く。
お父様と陛下がニヤニヤしています...。どんどん断りずらくなっていくではありませんか...。
◆◇◆◇
ここは天界。
長髪の老人と強面の老人が話をしている。
「お主のところの少年はどうなったのじゃ?」
「あぁ、ちゃんと主が担当している童がいるところに送ってやった」
「ほぉ、お主が大人しく送ってやったとは驚いたの」
「まぁな、少しまじないもかけてやった」
「...全然大人しく送ってはいないのじゃな」
「なに、良いまじないだぞ?」
「ではどのようなまじないなんじゃ?」
「一度だけ前世の姿を見せるまじないだ」
「...説明はしたのか?」
「していない」
「それでは目の錯覚と思ってしまうのではないか?もう少し優しくしてやれば良いものを...」
「それにもう一つ、主が担当している童にも名前を呼ばれると一度だけ伊織の姿を見せるまじないをかけた」
「いつのまに...」
「儂は優しいからな、記憶も残してやったし、あんなに執着してるいるんだ、会って話でもすれば分かるだろうよ、主こそ性別を変えてしまったではないか、おかげで探すのを苦労しておったぞ」
「はて、まさか同じ転生先に来るとは思わなかったからの」
「白々しい、何がもう少し優しくしてやれば良いものを、だ」
「じゃが、お詫びに記憶を思い出させてやったぞ」
「ふん、お詫びをするならあの童が心の奥底では伊織を好いていることを自覚させてやれば良かったではないか」
「それではつまらんからの」
「...確かにな」