秘密のお茶会
◆◇◆◇
休暇2日目。
リリーは今頃競売に参加しているところでしょうか。
私は先日届いた招待状のお茶会に参加しています。なぜならルトコフスキー侯爵令嬢が参加するそうなのです。侯爵の情報を探るいいチャンス!残念ながらまだ到着していないみたいですね。
ラファナ・ルトコフスキー侯爵令嬢。サブの悪役令嬢です。歳は私と同じく14歳。ゲーム内で私の取り巻きになる方です。性格は、少々内気ですね。この方は将来の宰相様と既に婚約しています。
「あら、ルトコフスキー侯爵令嬢 お待ちしておりましたよ」
良かった...!来てくれて!
主催者の令嬢がそう言うと侯爵令嬢は謝罪して私の隣に座る。子供のお茶会だと侮るなかれ、身分の高い順に奥から座って行くのだ。
「侯爵令嬢、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」
とても緊張していらっしゃる...!私のせいですかね?!なごませるために何か会話を...。
確か、侯爵令嬢は植物が好きだとか!
「侯爵令嬢は植物が好きなようですね、私は前に一度育ててみたのですが直ぐに枯らしてしまったことがあります...何か育てやすいコツや植物はありますか?」
本当は育てたことあるの前世だけど!
「そ、そうですね...」
黙り込んでしまった!
「あの、侯爵令嬢...?」
「...っはい!!」
ガタッと急に立ち上がったものだから侯爵令嬢の紅茶がドレスにかかってしまった。
「大丈夫ですか?!火傷は?!」
侯爵令嬢の顔が青ざめていった。
「すみませんっ!...これで失礼致します!」
侯爵令嬢が走っていってしまった。
「侯爵令嬢が心配なので私も失礼致しますね」
早く追いかけないと。
◆◇◆◇
馬車に乗ろうとする侯爵令嬢を見つけた。
「...令嬢!侯爵令嬢!待って下さい!」
腕を掴む。
今帰られては火傷も心配だけど、情報も何も聞き出せない!引き止めないと!
「侯爵令嬢と仲良くなりたいのです!ですので私の家でお茶会やり直しませんか!」
言い方間違えた!でも仲良くなって色んな話をしたいという点では間違いではないです!大丈夫!
「ですが...私ドレスも汚れてしまって...」
ドレスも...?
「ドレスなら私の家でお貸し致しますよ」
「それだけじゃなくて...お茶会のマナーもできないのに...」
そういうことか。
「そんなことは気にしなくて大丈夫です、私と侯爵令嬢の2人のお茶会なので失敗しても私が教えられます」
「それなら...分かりました、伺います」
半ば私のゴリ押しで参加させることが出来ました!
◆◇◆◇
エバンス公爵邸。温室。
「素敵なところですね」
さっきよりは落ち着いたようです。人が多いと緊張してしまうのでしょう。
「そうでしょう、庭師が丹精込めて育てていますもの」
お茶を飲む。
「あの...仲良くなりたいというのは本当ですか?いや、疑っている訳では無いんですけれど...!私なんかと仲良くしたいと思われることが不思議で...」
この子は自己肯定感がとてつもなく低いのですね。
「そんなことないと思いますよ、私の経験上、植物を育てている人は総じて心優しい人ですもの」
実際、庭師のお爺さんも優しい。
「そんなことないです...実は、育てているのは植物の中でも薬草なんです」
「薬草?」
「はい、私の母が病弱なのは有名ですよね、なので少しでも体に良いものをと思い、薬草を育て始めたんです」
なるほど、だから先ほどのお茶会で返答に困ってしまったのですね。
「なので薬草以外の植物は育てたこともないのでコツなどはお教えできません」
「凄いですね、お母様のためにそこまで行動できるなんて、やっぱり植物を育てている人は心優しいですね!ね、当たっていたでしょう?」
「そんな...いつも叱られてばかりで何もできない役立たずですのに...」
!!
子供に向かってそんなことを言うなんて...!
「そんなこと誰が言ったのかしら!人のために行動できる人がどれだけすごいことか...!私はあなたを尊敬致します」
侯爵令嬢を泣かせてしまった!
必死で謝っていると「ありがとうございます...そんなことを言われたのは初めてです...」と言われました。
「あの...もし良ければ名前で呼んで貰えますか...?呼び捨てで...」
出来れば口調も砕けて欲しいとの事なのでありがたくそうさせてもらいました。私としてもその方が話しやすいです。
「もちろん!よろしくお願いするわ!ラファナ!私のこともぜひ名前で呼んで!」
何やら、ラファナが呻いたような気がする。
「ラファナ、大丈夫?」
「...大丈夫です、ナディア様に名前で呼ばれたのが嬉しくて...いや、これからもよろしくお願いします!」
これは...お友達ということでしょうか?予定とは違う結果になってしまいましたが、これで侯爵の情報も集めやすくなったはずです!