侍女の休暇
リリー視点です。
◆◇◆◇
当日。休暇1日目。
「これを」
お嬢様から腕輪を渡される。
「この腕輪は1度だけ命の危機に瀕するような攻撃から身を護ってくれる、発動したら私に伝わるから、そしたら兵を連れて助けに行くわ!」
私と同じ腕輪を掲げて言う。
なるほど2つで1セットなのですね。
そして兵を連れる...だめだ、それは目立ってしまう。
「それはおやめ下さい、兵を連れたら大事になります、本来の目的が達成出来ないでしょう...」
お嬢様が確かに...!という顔をなされた。
「それは...何とかする」
むくれたお嬢様を見て思わず笑みがこぼれた。
お嬢様は昔から気持ちが揺れたり隠そうとするとき口調が崩れる。
私を心から心配しているのが分かる。
「お気持ちだけで十分ですよ」
そもそも私が完璧に任務を遂行すればいいだけのこと。
「それでは行って参ります」
◆◇◆◇
ここは地下の競売場。
開催時間は毎回変わるので参加するのは難しい。だが、旦那様の情報部隊のおかげで開催時間は分かっている。一見バラバラに見える開催時間は実は規則性があるらしい。
メイソン子爵家の紋章を見せる。
家の名前を使うのは嫌気がさすが仕方がないですね...。
すると受付が確認し中へ入ることが出来た。それと同時に仮面を渡される。
こんなに簡単に入ることが出来るとは...。そして迅速な対応、見世としてよくできています。
中へ進むと円形のホールが広がっていた。
まるでオペラ会場のようですね。
席について侯爵を探す。
いた...!
侯爵は2階の端に座っている。
2階はお得意様、上流貴族が多いようです。
壇上に一人の男が現れた。これから競売が始まる。
◆◇◆◇
どれもこれも胡散臭いものばかり。やれ賢者の石だと伝説の剣だの。信憑性に欠けます。
「最後に本日の大目玉!これを使えば、しわ、しみがたちまちに消えると言われている魔法の粉!金貨10枚から!」
金貨10枚?!その量で、その小ささで...ぼったくりではないでしょうか。
「12!」
「...15!」
貴族と言えどもさすがにそう易々と出せる金額では無い。
「他にいらっしゃいますか?」
侯爵もこれが目当てではないようです。
「では金貨15枚でそちらの貴婦人がお買い上げになります!」
侯爵はもう帰るようですね。
「皆様、またのお越しをお待ちしております」
そんなに簡単には行きませんよね...。休暇はあと4日。また明日参加するとしましょう。