56.決着
人が小さな虫に見えるほどの大きな黒い体。
獰猛な性格を表すような大きく、鋭くとがった牙。
そして、どこまでも飛んでいけそうな大きな翼。
ブラックドラゴン。
ここからずっと西側に行った山脈に生息すると言われる伝説の生物だ。
過去、何例か人の支配下に置かれ、使役されたという伝説は伝わっていたが、現代にそれを成功させたという話は聞こえていなかった。
ドラゴンの背中には褐色の肌で黒上の長髪をなびかせた女がドラゴンの背中につながった紐のようなものを握って、一人座っていた。
「アンジュ!?」
ばあちゃんとじいちゃんがその女を見て驚いた声を上げた。
どうやら知り合いらしい。
何でもドラゴンサマナーという職業を代々受け継いでいる家の人で、昔冒険しながら知り合ったらしい。
ドラゴンを従えて、操ることができるが、従えていたドラゴンはあんなに大きくなかったそうだ。
こんなタイミングで異世界ファンタジー感漂う職業が登場した。
スキル、魔法、猫耳、ドラゴン、ここは異世界で間違いはない。
ばあちゃん、じいちゃんの友達ならあまり攻撃したくないが、そうも言ってられない。
おそらく、スライドバレン辺境伯に脅されたか、だまされたか、呪術にでもかかっているかで従わされていると思われるが、この戦いで負けるわけにはいかない。
とりあえず、ドラゴンを倒せば勝利に近づくと思うが、この世界のドラゴンの強さはどんなものだろう。
俺はこちらの世界に来てから、いつか強大な敵が現れた時にそいつを倒せる攻撃力を持ちたいと思い、ずっと訓練を積んできた。
昔、大規模広範囲魔法にあこがれて、リーリン師匠に教えてもらおうとしたが、師匠はあまり得意ではなかった。
最近は、カルメラやばあちゃんに教えてもらっていたが、魔力と威力は十分だが、制御が甘く、想定外のところに被害を及ぼすことが多くて、使えるようにならなかった。
魔法能力10でも結局使えない。
才能は開花しているから努力すれば使えるようになるかもしれないが、戦争までに間に合わなかった。
で、やはり神様にも師匠にも認めてもらった土魔法に頼ることになる。
俺が最初に使った魔法は生命魔法だったが、一番得意なのは土魔法だ。
土魔法でも大規模戦闘に向く魔法は使えないが、1つの強敵を倒す魔法を追求し続けてきた。
その魔法は、リーリン師匠に土魔法を教えてもらって、初めて魔物を倒した時に使ってから変わっていない。
そう、ストーンキャノン、俺が一番好きで研究し続けている魔法だ。
今、その成果を試そう。
俺はあらかじめ作っておいた砲弾を手にする。
即席で作るものよりも、時間と魔力を十分にかけて作った砲弾の方が、精度強度が段違いに良い。
即席の魔法で作った砲弾では、最大出力で打ち出すのに耐えられないので、今は作り置きを使うしかないが、いずれは、瞬間的に魔法で作れるようになりたい。
まだまだ、研鑽が必要だ。
砲弾の大きさは、直径220㎜、長さ700㎜
土魔法、水魔法、風魔法、火魔法を駆使して、材料精錬、造形、焼入れなど幾重にも渡る工程を経て完成させた超高硬度超重量精密砲弾だ。
この砲弾には、貫通力を上げるために、ばあちゃんと一緒に研究した炸薬がタップリ詰め込まれている。
風魔法砲身を作り、筒の中を真空にして砲弾の発射速度を上げる。
この砲身はカルメラと研究したもので、射出される弾丸の発射精度と速度を最大化したものだ。
砲弾の後部には薬きょうを作り、空気を圧縮させて充填した。
込めれるだけの魔力を込め、ドラゴンに狙いを定めて、火魔法で点火。弾丸を発射した。
大爆音とともに撃ちだされた砲弾は音速を超えて、ソニックブームを発生させながら、一瞬のうちにドラゴンにぶち当たった。
その弾丸の風圧と轟音に多くのものが吹き飛ばされ、耳を抑えてうずくまる。
静寂の中、皆その目に信じられない光景を焼き付けた。
ドラゴンの胸の部分に大きな穴が開いていた。
崩れ落ちるドラゴンをみて、いち早くカルメラとばあちゃんが動き出した。
サキとリーリン師匠を護衛にして、敵軍まで近づき、大規模魔法をぶっ放していた。
更に獣人軍と冒険者軍が浮足立つ敵軍を襲撃した。
敵はとうとう撤退を開始した。




