55.戦況
ラッシュビルから攻めあがってきた3軍は、侵攻を諦めて撤退したようだ。
帰りは1軍にも足らないくらいの人しか残っておらず、街道に死体と、けが人を残したまま、逃げるように引き返した。
少し前、俺は今回戦争準備をしながら一つのうわさを流していた。
いやこれは単なるうわさでなく、事実なんだが、救出した獣人がカルザンの村にそのまま滞在しているという話だ。
嘘ではない。
全員ではないが一部は確かに残った。
拉致された後、成人しても捕虜になっていたもので、戦士として戦いたいと参戦を希望する者が相当数いたのだ。
この噂につられて、例のケモミミスキーが出てくるのではないかと期待したのだが、それを裏切ることなく、奴はクレイビルを出発した軍隊と一緒に出てきていた。
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俺はケモミミが好きだ。
ケモミミの男の子と触れ合うことこそが生きる喜びだ。
幸いにして、俺は領主という立場があり、金と権力を自由にできた。
これは神が俺にケモミミを自由にしてよいとおっしゃって
だから神はいい奴だ。
俺と同じように神を信じている奴らがいて、ケモミミをくれる代わりに金をくれと言ってきた。
ケモミミに比べれば金など何の価値もない。
俺は大金を払い続けた。
クレイビルの商人たちが何かを調べ始めたようだが、金もケモミミ輸送ルートも見つけることはできないだろう。
俺はこういった悪事を考えさせたら天才みたいだ。
ケモミミにさえ狂わなければ、案外いい領主になっていたかもな。
ふっ、ありえないな、ケモミミのいない人生なんて。
ケモミミのオトコノコがいない人生なんて。
俺は全力で取り戻しにいくぞ!
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俺は、ケモミミスキーとして、奴のことを許せなかった。
ケモミミスキーは、ケモミミが好きと同時にケモミミから好かれないといけない。
自分が抑えられず、欲望のまま行動するから、大体初対面で嫌われてしまうが、それでも嫌われたままでよいわけがなく、好かれるよう努力しなければならない。
確かに奴は、拉致してきたケモミミのオトコノコを大切に扱っていた。
でも無理やり拉致して、女の子は他国に売り渡すとか非道を行った。
ケモミミに好かれるわけがない。
このまま奴をケモミミスキーと呼ばせるわけには行けない。
やはり、カルザン軍が到着する前にスライドバレン軍が俺たちの村の近郊に現れた。
6軍が健在だ。
ラッシュビル軍と同じように街道で攻撃をかけようとしたが、魔法使いと近距離戦士を入れた数人のチームを斥候として行動させ、こちらの迎撃部隊を見つけると攻撃してきた。
カルメラとばあちゃんを守る護衛を増やしたが、敵が2チーム以上で向かってくると魔法が使える距離まで敵軍に近づくことができず、結局、攻撃を諦めた。
明日には到着するであろう主力軍が参戦するまで、獣人軍と冒険者軍の2軍と俺たちで凌げるかどうかがキーになるだろう。
当然、村と屋敷は土魔法で要塞化し、要所に魔法や弓で敵が攻撃できる場所を用意してある。
早朝から、敵の攻撃が始まったが、敵は距離を取って、弓と魔法の遠距離攻撃をするだけで、要塞には近づいてこなかった。
昼を過ぎた頃、様子を見に行った斥候から、本体がすぐ近くまで来ており、予定通り、明日の朝には到着するという情報が入り、一斉に湧きたった。
この世界では魔法による遠距離攻撃があるが、それは、魔法によるレジストも可能だ。
だから城攻めは魔法使いの数と質が重要で、そういう意味では俺たちは優位だった。軍隊には遠距離攻撃専門の魔法使いが少なくない数配属されるが、あくまでも魔法が使える戦士であり、専門の魔法使いに比べものにならない。
だから攻め手の魔法は、すべて師匠たち魔法のスペシャリストと冒険者の魔法使いがレジストして被害はほとんどなかった。
逆にカルメラやばあちゃんの高威力広範囲殲滅魔法はある程度近づく必要があるが、砦から届く範囲に敵は来ず、また、こちらから近づくこともできなかったので、なかなか決定的な攻撃ができない。
そんな魔法戦の膠着状態がいつまで続くかなと思っているころ、そいつが現れた。




