51.帝国軍
ライコスから連絡があった。
帝国軍が大軍で南下を始め、領地奪還を目指しているようだ。
急いで、南部砦に行くと、すでにライコスとノラが陣を整えていた。
ライコスとノラは、ここにカルザンを立ち上げてからずっと、この旧グランドブルグ領とラッシュ領の間の山岳地帯で人を集めて訓練し、軍の整備を行っていた。
すでに6軍、600人の規模まで拡大した。
ただ、この軍は、南側のスライドバレンとラッシュの領主軍12軍と戦うときの主力なので、帝国軍との戦いに使うわけにはいかない。
正直、旧帝国領は2領主と決着がつけば、帝国に返そうと思っているが、今はダメだ。
この山岳地帯に軍の訓練所を設け、傭兵を募集しているが、ここには屈強な盗賊団が多く、良い軍人を確保できるのだ。
2領主との決戦が始まり、全軍南下させるまでは、渡せない。
今南下させると食わせていけない。
ということで皆と砦で作戦会議だ。
「パドラが帝国軍相手に一人で無双すればいいじゃん」
リーリン師匠がなかなかいい意見をいう、あんたがやれ。
「え~たぶんできると思うんだけどなあ~」
俺はそこまで人外ではない……たぶん。
帝国軍は6軍で攻めてきた。
さすがに8軍全部は出せなかったみたいだね。
治安維持もあるし。
「侵攻軍の責任者はレーバル騎士団長だそうだ」
んっ!レーバルさん騎士団長に昇格したのか!
戦いたくないな、あの人とは。
仕方ない交渉に行くか。
砦からサキとカルメラと一緒に帝国軍陣地へ向かう。
まだ行軍途中だから離れた位置にいるようだが、いずれ砦近くの陣地に現れるはずだ。
俺だけで行くつもりだったが、どうしてもついてくるというので、帝国軍の中に行くのは俺だけという約束で連れてきた。
帝国軍の陣地が見えたが、大将旗が見当たらない。
しばらく遠目で見ていたが、知り合いに会えるかもしれないので、心配する2人を置いて、一人で軍に近寄って行った。
向こうから俺を見つけて警戒しながら近寄ってきた。
第4軍団でいつも訓練をつけてくれていた人だった。
「お久しぶりです。パドラです」
挨拶するとびっくりされて、急いでレーバルさんのところに連れていかれた。
「パドラ!無事だったのか、よかった」
俺は少し涙ぐんだ。
レーバルさんは変わっていなかった。
頭皮が見えるようになった以外は。
騎士団長の貫禄が出ていた。
「今まで……いや、今は何をしているんだ?」
レーバルさんには最初からすべて隠し事無しで話すつもりだったので、黒鳥館から拉致されたところから順に説明した。
「今、カルザンの王様をやってると!?」
「いや、王様じゃなくて総帥です」
そこはこだわる。いずれ右手を挙げてジーク・〇〇〇。
「そこで交渉に来たんです。領土は後でお返しするので、少し待ってもらえませんか?」
俺の提案に目をつぶってしばらく考えたあと、レーバルさんは言った。
「獣人国が帝国に攻め込んできて、危うく戦争になりかけて、俺は人質として獣人国まで行ってきた。そんなことを策謀したスラテリア、スライドバレン、そしてラッシュこそ真の敵だ。わかったパドラに全面的に協力しよう。しかし、本国に話を通す必要もあるので、もう少し政治力がある味方がほしいな」
グランドブルグの知り合いだとバーンズさんやマーラさんぐらいかな……あ、そうだ。
「獣人国も仲間になって、今の話を裏付けしてくれると思います。実際に獣人捕虜を一緒に開放しましたから」
「おしっ。それなら十分だ。すぐに本国に戻ろう。パドラも一緒に来るだろう?」
うーん。今離れるのはな……
「すいません。俺は、南の動向が気になるので残ってはだめですか?」
「そうか。わかった。連絡係として、こちらの人間をお前につけるから受け入れてくれ」
「わかりました」
そして、俺がこれから一緒に行動する連絡係に引き合わされた
カレン、セラフィ、エノアだった。




