50.サキの記憶
私は獣人国のお姫様として生まれた。
3歳くらいの時にまわりからもお姫様として大事にされていることに気がついた。
姉が1人いた、とても優しくて大好きだった。
母が2人いた、姉の母と私の母。
姉の母は黒耳で私の母は白耳で、でも私も姉も母とは少し色の違う白耳だった
父と同じ銀耳だと姉が教えてくれたが、父のことはあまり好きではなかったので、そんなにうれしくなかった。
成長して5歳になった。
学校に通い始めたけど、友達ができなかった。
皆、私が銀耳だからって近づいてこないし、こちらから近づくと避けられた。
悲しくて学校に行きたくなくたって、行かなくなった。
8歳になった。
姉が家から連れ出してくれた。
2人で少し遠くまで馬車に乗って出かけた。
別荘に着くと、近くの湖で魚を一緒に取って遊んだ。
夜に別荘に戻ると知らない馬車が止まっていた。
父が来ていた。
最近、姉の母と私の母がよくケンカをするので、逃げてきたと疲れた顔で言っていた。
そんなに好きではなかったけど、なぜかかわいそうに思って、頭を撫でたら、ありがとうと言って喜んでくれた。
それから父と一緒にこの別荘に来て過ごすようになった。
たまに姉も一緒に来たが、私が父と仲良くできるのを見ると、少しほっとしていた。
別荘に居るときの父はまるで子供のような振る舞いをすることがあって、私が姉のように注意することもあった。
そんな時はごめんなさいと反省するけど、すぐ笑顔になって抱きしめてくれた。
ある日、姉の母がこっそり訪ねてきて、父に会いに来た。
母は知らないうちに居なくなっていたので、何も話はしなかった。
その日の夜、父が倒れた。
慌てて馬車に乗せられた王城へ帰っていく父が心配だった。
私は少し落ち着いたら王城に帰るように言われたので、何日か別荘にいた。
そしたら、賊が入ってきてさらわれた。
気がついた馬車に乗せられてどこかに向かっていた。
途中から他の獣人の男の子たちと一緒になったけど、昔学校で友達になれなかったことを思い出して、話しかけることができなかった。
何日も馬車に乗り、洞窟の中を歩いて、山に囲まれた小さな村に着いた。
すると、立派な服を着たおじさんが私に怒鳴り始めた。
何でも女の子が混じっているんだって、怒っているようだ。
女の子は私だけだった。
大きな土壁のそばに牢屋があってそこに入れられた。
上の方に隙間があったからそこに入って洞窟のような場所に入った。
あそこが怖かったから必死に走った。
途中で魔物に襲われてけがをしたけど、それでも一生けん命走った。
気がついたら、薬師のおばばが治療をしてくれていて、カルメラが
「よかったねえ。けがが治るまでここにいな」
と言ってくれた。
可愛そうなサキ。
今のお前には仲間がいっぱいいるし、俺もいるぞ。
記憶を思い出したサキは、少し落ち着かないようだったが、俺が抱きしめると抱きしめ返して、安心したようだ。
サキがいいといったんで、バレンシアを呼んだ。
「お姉さん、記憶を思い出しました。間違いありません。私はあなたの妹のアンドラでした。ご心配をおかけしました」
その言葉にバレンシアは号泣してサキを抱きしめていた。
サキも泣いていた。
感動の再会というところか……でも疑問が残る。
サキの記憶について、皆が話そうとしなかったのか……多族であることがそんなに秘密にするようなことなのか?
この疑問にバレンシアが答えてくれた。
「実は父が倒れて12年未だに意識が戻っていません。原因はチョコレートを食べたことによるアレルギー発作でしたが、父がチョコレートアレルギーだったことは、家族なら皆知っていました。その日、私の母が手作りの菓子を持って行って、父に食べさせたことが確認されています。母はチョコレートを入れていないと言っていますが、疑われて今日までそのまま軟禁されています。アンドラ、あなたはあの時、別荘に居ました。記憶を戻してすぐお願いすることは申し訳ないと思いますが、当時のことを思い出してもらえませんか?」
サキは少し記憶を探るようなそぶりをしたが、まっすぐバレンシアをみてこういった。
「お姉さん、私が何を言っても罪に咎めず、また、このままこの国でパドラと一緒にいることを許すと約束してもらえませんか?獣人国での地位もアンドラという名前も忘れろというなら忘れても構いません」
バレンシアは少し驚いた顔をしたがサキの目を見て約束した。
「獣人国としてあなたをどうかしようとはしないことを約束します。」
サキは頷き、話を始めた。
皇帝は、チョコレートアレルギーで倒れたが、どうやら、チョコレートが大好きで、皆の目を盗んで、少しずつ食べていたらしい。
サキはチョコレートアレルギーのことを知らず、何も言わないので、別荘に来たときにサキがいる前で「内緒だよ」と言って、食べていたらしい。
で、その日、黒猫耳母が仲直りのためにケーキを持ってきてくれたことがうれしくて、母が帰った後、ちょっとチョコレートを食べすぎたようだ。
倒れるときに「食べ過ぎた~」と王様はサキに言ったらしい。
「母にこのことを早く伝えてあげてください。」
これを聞いたバレンシアは、すぐに出発した。
シラランとトラ耳司令官も証人として連れていかれた。
サキが、記憶が戻っても元気でよかった。




