48.救出
俺はここ数日、野望を達成するために、自分を抑えて生きてきた。
特にケモミミランドを探すために坑道に入ったあたりから、成果を急いで、毎日魔力を使い切るほど働いていた。
一緒に来ているサキもばあちゃんも、先ほどまでいた母も、俺が獣人捕虜のために身を粉にして働く姿を見て感動しているはずだ。
獣人軍人たちも、当初、俺に対して、ケモミミスキーの悪代官というイメージを持って疑心を抱いていたようだが、最近は俺の言うことに素直に従い、俺のために働いてくれる。
俺が獣人捕虜を助けることを目標にしていることは間違いないが、俺をここまで真剣にさせる真の野望があるからだ。
そう、俺の国にケモミミランドを誘致したい。
捕らわれたケモミミたちを解放し、一旦、俺の国で住んでもらい、強制はしないが、好条件の移住提案を行い、残っていいと考える者には屋敷の近くに住居を与えてケモミミ街を作りたい。
のちのち獣人国に奴隷だ拉致だと言われないよう、獣人国には開示してオープンにやりたいと思う。
誰も残ってくれそうになかったら、サキに頼んでもらおう。
何か獣人のお姫様っぽいし。
野望の達成まで残り僅か、俺は胸の内から高まる興奮に身悶えしていた。
調査隊を従えたカルメラと合流した。
今日の朝、母さんが街道沿いに屋敷に向かうとちょうど出発したばかりのカルメラたち地上捜査隊に会うことができたので、一緒に森の坑道口まで来てくれた。
調査隊人員は20人で、遅れて10台ほどの馬車がこちらに向かって出発することになっているそうだ。
それまでにできる限り調査し、今いる人員で獣人開放ができそうか、さらなる増援が必要かを判断する。
獣人国には声だけかけたし、間に合わなかったら知らん。
獣人国が来なくても、俺が全員助けるつもりだ。
調査の結果、ここには約100人の獣人が捕らわれており、衣食住などの状況は非常に良好に見えるということであった。
時折獣人たちの笑い声も聞こえてきたし、辛い目に合わされてはいないのだろう。
調査を始めて5日たったが、一度もケモミミスキーことスライドバレン辺境伯やラッシュ子爵の姿を見たことはなかった。
時折、軍人らしきものが山間の洞窟から現れて、食料などを置いていくのが確認できた。
あの洞窟がどこにつながっているかまでは確認できていないが、その洞窟の前を常時3~5人で守っている者以外は兵士を確認できなかった。
会議を招集、これはチャンスということで明日早朝に救出作戦を決行することにした。
旧街道側から渓谷に侵入、戦闘部隊が兵士を抑えて、搬入用の穴を封鎖、同時に誘導班が獣人たちを坑道内に入れて、一気に森の出口から脱出。
馬車に乗って一路俺の村まで逃走という作戦だ。
俺の役目は、土壁を破壊し坑道とつなげることと、兵士を襲撃、穴を土魔法でふさぎ、獣人たちが逃げた後に旧坑道を魔法で封鎖、そして、全員が馬車で退避した後に森の出口も封鎖して、殿を務めて馬で帰れば終了だ。
作戦間近となり、全員の表情を確認すると、皆一様に緊張しているようだった。
指を立てて合図をし、早速土魔法で壁に穴をあけ、人を通れるようにする。
一気に坑道から飛び出し、まずは、俺、ばあちゃん、母さん3人で兵士を抑えに向かう。
ストーンバレッドで強襲したあと、すぐさま生命と水の混合魔法で眠らせ、洞窟内で動けないように固定してから、洞窟の入り口を入念にふさいだ。
一応、食料を少しだけ持たせておく。
同じ獣人の方がいいだろうということで、サキ、獣人軍人3人は誘導班だ。
俺が洞窟を入念に封鎖している間に、全員の坑道への退避が完了していたので、素早く残りの全員で坑道内に入り坑道出口を入念にふさいだ。
念のため坑道出口付近で待機して、追手の侵入がないことを確認してから、森の坑道出口に向かう。
皆、すでに馬車に乗り込み出発を待っていたので、素早く出口を土魔法で封鎖して、俺も馬に乗り、一番後ろから号令をかける。
「出発!俺たちの村へ!」
そして約6時間後、俺たちは村に到着、あらかじめ用意してあった獣人用の宿に皆を収容し、救出作戦は終了した。
救出作戦に参加したメンバーは一様に作戦成功を喜んでいたが、俺はこれから始まる獣人たちとの定住交渉に向けて、今まで考えた条件を紙にまとめたものを見直し、準備を行っていた。
そして、翌日初めて獣人たちと顔を合わせる集会に出て、そこでこの国での定住を呼びかけようとした直前に俺は気づいた。
獣人は全員男の子だった。




