46.救出準備1
最後の土壁を壊して、乗り込もうと動き出す獣人5人を土魔法で拘束し、サキから話をしてもらって、とりあえず、我慢してもらった。
獣人も、敵の勢力も何人いるかわからないし、今すぐ、坑道から全員で逃げるのは距離と食料の問題で不可能だ。
皆で作戦会議を行う。
カルメラが言うには、坑道を進んできた方角、距離からこの場所が地上のどの辺りかは大体わかるそうで、すでにカルザン勢力圏ではなく、ラッシュ領の可能性が高いらしい。
「私は、一旦地上に戻って、地上からここの位置を特定、敵の守りを確認してから、地上軍を編成して、休出するのがいいと思うのじゃが、旧坑道を通ると一本道だが、さすがに馬車で走ることもできんしのう。獣人の子供をつれて、逃げるのだから、追手が早いとなかなか難しい」
カルメラの意見はもっともだが、この坑道を使わないのも惜しい。
「カルメラは獣人軍2人と一緒に一旦屋敷に戻り、地上調査隊を派遣して、ここの特定と防衛体制、屋敷までの退避ルートなどを検討してくれ。獣人軍はそのまま獣人国に連絡して、救出軍検討をお願いしてほしい。うちと共同で実施すれば、獣人たちも安心できるだろう。あと、カルメラ、もう一つお願いがある、俺とサキ、ばあちゃんと獣人3名はここに残って、もう少し調査を続けるつもりだが、屋敷に戻ったらすぐ母さんに馬を使って食料をここに届けるように頼んでくれないか?馬車は無理でも馬なら何とかなりそうだし、母さんなら馬に生命魔法を使って、ゴリ押しして、3時間くらいで来れそうだからな」
カルメラは俺の提案にうなずき、
「いい案だねえ。さすがダーリンだ。私が屋敷に戻る帰り路に、土魔法で馬が通りにくいところを整備し、迷わないようしるしをつけながら帰ることにするよ」
さすがカルメラ、話がはやい。
「俺はその間、ここに拠点を作って、少し離れたところに地上への抜け道を作れないか試してみるよ。うまく地上に出れたら、土魔法で目印を作っておくから、また合流しよう」
カルメラたちを送り出した後、まずは土壁の上の隙間から常に外の状態が見やすいように足場を作り、こちらが見つかりにくいように土でカモフラージュを作ったりした。
そしてしばらく生活する拠点として、テントを作成、寝台、お風呂、かまど、土鍋、食器などを整えた。
念のため、外敵から守るためにテントの周りに2メートルほどの土壁を作ったところで、俺の魔力が切れたので、サキと一緒に早く寝た。
目が覚めると、すでに皆が起きていて、俺だけまた10時間以上寝ていたようだ。
すでにばあちゃんがご飯の用意をしてくれていたので、食べてから、今日の予定を話し合った。
残った獣人軍人3人は、犬耳のカヌー、狼耳のラダ、トラ耳のサンズといった。
何とサンズはトラ耳将軍の息子だということだ。
犬耳のカヌー、狼耳のラダをケモミミランドの見張りのために残し、キャンプ周辺の坑道を調査することにした。
旧坑道はここに来るまで脇道がほとんどなく、あっても数メートルで行き止まりだったが、壁を壊して土で埋めた状態の道はいくつかあった。
ただし、ここで、行き止まりになるまでは、そういった閉じられたところを掘り返して道を作って進むことをしなかった。
現在キャンプを張っている突き当りから1kmほど戻ったところに壁を崩して閉じられた脇道の跡があったので、一度掘り進んでみることにした。
俺が掘って、ばあちゃんが火魔法で固めて、サキが風魔法で土を排出する。
すぐに土で埋められた空間を抜けて、坑道に出たが、存外、奥までつながっているようだ。
しばらく進むと魔物が大量発生していた。
角があるバッタのホーングラスホッパー、まるっきり大きな芋虫のホーンワーム、角が生えたテントウムシみたいなレディボーイバグ、そして、昔、2人の師匠と一緒に倒したアーススネークがいた。
全部で30体くらいいるので、全体魔法でやっつけることにした。
ばあちゃんが、アイスミストを広範囲に展開し、サキがそこにダイヤモンドダストで冷気を拡散して温度を下げ、俺が魔力全力放出で上乗せすると、瞬く間に魔物たちは動きが悪くなった。
サンズ、サキ、俺で、1対1対、とどめを刺していく。
ばあちゃんには他から追加の魔物が出てこないか警戒してもらった。
魔物を倒してしばらく進むと、道が上り坂になり、壁を崩して土砂で埋められた行き止まりまで来た。
外につながっている可能性があるので、土魔法で慎重に掘り進む。
しばらくすると、ごそっと大きな音がして、土が剥がれ落ち、光が見えた。
しまった!
慌てて土壁を内側に展開して、声を潜めて様子をうかがうが、物音は聞こえない。
土壁を解除し、そっと光が漏れている穴から外を見るとそこには緑の草花と木々が見え、人影は見当たらなかった。




