44.獣人の居場所
5人の獣人たちの話を聞く。
帝国に拉致された獣人はいなかった。
するとやはり王国ではないかという意見が多くなった。
すると前回帝国に獣人がいるといった神聖国のやつらが、王国ではなく、新しくできたカルザン共和国というところにいると言い出した。
前回嘘をついてだまし、他国に出兵までさせ、しかも頭まで下げさせた国の言うことなど信じるはずがない。
すると最近カルザンでケモミミスキーがトップに立ったといううわさが広がった。
神聖国がやはりそうだったではないかと大きな声でいったから、軍の命令で調査に来たということだった。
おい!なんだそれ?脳筋にもほどがあるだろう。
この5人はそれなりにそんなわけないと思っているが、ただじっとしていられなかったので、可能性があるところならどこでも探したくて来たということだった。
問題は軍のトップか……
「あなたは一度会ってますよ」
獣人国の軍のトップは、グランドブルグの郊外で対面したトラ耳司令官だった。
とりあえず、この国における獣人国の代表者を決めて、いつでも話ができるようにしたら、獣人国の諜報機関、軍人は、拉致獣人捜索のためであれば、カルザン・パドラ国に入って調査していいことにした。
この国はできたばかりで、この国ができる前に獣人を捕らえた場所があるかもしれないので、もし、見つけた場合は、襲撃する前にこちらと一度協議することを約束させた。
それで、この約束事を獣人国のトップに伝えて承認を得てこいとシラランを送り出すことにした。
軍人→トラ耳司令官ルートだと不安に思ったからだ。
シラランは、いざ出発するときになって、サキのことを説明しろと喚きだした。
俺がサキに会ったのはサキが10歳の時で、その前のことはサキに聞けと言ったが、サキも覚えていないそうだ。
カルメラに聞くとけがを負ったサキを鉱山の中で見つけたらしい。
「今掘ってる坑道じゃなくてね、最初に掘って使われなくなった坑道が少しはなれたところにあってねえ。魔物や獣が湧くこともあるから、定期的に中に入って確認しているんだが、そこに瀕死で倒れていたんだよ」
と教えてくれた。
俺がさらわれる1年ほど前のことだったそうだ。
連れ帰って薬草おばばに治療させたらしい。
おー、俺の最初の師、薬草おばば今どこにいるか聞いたら、なんか近くの村で隠居生活をしているらしいので、今度遊びに行くことにした。
で、その坑道にほかの獣人がいる可能性だが……
「ないとは言えないが、基本的に定期的な見回りで行けるところは全部見ているはずだからねえ。一度みんなで行ってみるかい?」
ということで、皆で潜ることにした。
何で軍の5人がその旧坑道の近くに集まっていたかというと、野生のカンということだった。
サキがここにいる理由をとりあえず俺たちがわかる範囲で聞いたシラランだったが、彼女たちが知るサキの話はしてくれなかった。
何でも彼女の話をするには許可が必要とかで、これは軍人5人も一緒だった。
サキ自身が話してほしいと頼むと、額を床につけた土下座で、ご容赦願いますと言ってきたので、さすがに無理強いできなかった。
シラランが獣人国に向かった次の日、俺たちは旧坑道に向かった。
俺、サキ、カルメラ、ばあちゃん、獣人国軍人5人の計9人だ。
母さん、じいちゃん、妹2人は留守番だ。
シラランが急いで獣人国に戻るためにエーナを残して行ったから、彼女の面倒も見る必要があるからだ。
まずはサキが倒れていたところに案内してもらった。
「確かこのあたりだって聞いたけどね」
入り口から1時間ほどもうほとんど閉じられた旧坑道の最奥だ。
壁を崩して土を積んだうえで、木の板で道が塞いであったので、この先には進んでいけない。
「この坑道が閉められたのは私らシャープクロウが手配を始めるずーと前だそうだ。そのころは領主が直接運営をやってたそうだよ」
閉じられた坑道の入り口を見ると確かに上部に少し隙間があるが、後は完全に土で埋められてしまっている。
俺は土に触って魔力を流してみた。
崩れた硬い岩盤と砂が混じって坑道を埋めていた。
少しずつ魔力を流して、土を動かして固めてトンネルを作っていく。
「とんでもない魔力だね。パドラ、手伝ってやるよ。ほら、ライラもやるよ」
俺が土魔法でトンネルを作り、ばあちゃんが火魔法で焼き固め、カルメラが風魔法で土を外に放出した。
ふさがれた入り口の手前は少し広い空間になっていたから、砂の搬出ができた。
50メートルほど進んだところで、埋められていない旧坑道にたどり着いた。




