43.獣人
俺たちが気づいたくらいだから、奴らも気づくだろう。
この地域のどこかに伝説のケモミミランドが作られていることに……
そろそろなんか仕掛けてくるかなと思ったら、見たことある人が村をうろうろしていた。
シラランとエーナだった。
俺が声をかけると「あーっと」肩を掴んで迫ってきた。
近い。ペロってしちゃうぞ。
「どこに行ってたんですか?あの後獣人国と帝国の交渉は危うかったんですからね」
すごい剣幕で怒り心頭という感じだったが、不可抗力だ。
「とある組織に拉致されたんだよ。獣人国とも帝国とも敵対する意図はなかったようだけど……」
とりあえず、言い訳しておく。今そのとある組織のトップは一応俺だ。
「詳細はまたお聞きしたいですが、今は何であなたがここにいるかです。今この国の立場はわかっていますか?」
ん、なんかまずかったっけ?
「獣人国はこの国に拉致された獣人が捕らわれていると思っています。また根拠のない情報に踊らされているのではないかと私の上司が私を確認のために派遣したんです」
「ああ、何とか皇女殿下だったね」
「バレンシア皇女殿下です。獣人の拉致、奴隷化を絶対許さないお方ですが、不確かな情報に基づく軍事行動をしないように、要するに、うちの国の脳筋たちが踊らされて利用されることを危惧して、いろいろ考えている心労の多い人です」
うわっ。大変そう。すぐ禿げそうだな……
結局、俺が拉致された後、人質として、獣人国に向かったのはレーバルさんだったそうだ。そりゃ軍団長クラスが行かないと人質にはならんよなあ。
「で、今回はこの国が獣人国の脳筋たちの中で怪しいと思われているわけだ」
「ええ。先日この国のトップに立った人間がケモミミスキーという犯罪者だといううわさが流れていまして」
……ケモミミスキーだが犯罪者ではない……はずだ。
「国名が変わってなんて言いましたっけ、変な名前なんですよね、カルザン・ポポタ国でしたっけ?」
なんか平和そうな名前になったから、そのままでいいや。
「パドラ、お母さんが呼んでるわ」
そこに白猫耳のサキがやってきた。
サキを見て固まる黒猫耳のシラランとエーナ。
「銀猫耳族……姫様……」
突然ひざまずいて、頭をたれる。
サキはその二人を不思議そうに見ていた。
とりあえず、跪いている2人を放っておいて、屋敷に戻ろうとすると連れて行けとうるさいので連れてきた。
サキをちらちら見ながら何かを聞きたがっているが、話しかけられないようだ。
「母さん、獣人族の人つれてきたよ~」
「ええ、お友達?」
「ううん。元部下だった人。でもスパイだったんだけど」
「へえーそうなんだ。ゆっくりしてってね」
ちょうど、そこに、ばあちゃんとカルメラもいたので、紹介した。
「この国の財政担当カルメラと外交担当兼総帥補佐ライラおばあちゃんだ。話はこの二人としてくれ」
突然友達のうちに遊びに行った時のお母さん会話から、政府の要人紹介になったため、シラランが対応できずに挙動不審になっている。
「そういえば、サキが、母さんが俺を呼んでるっていってたけど。」
「そうそう、村の村長さんからね、最近鉱山の周りに盗賊みたいなのがいるらしくてね、たぶんラッシュ領主の嫌がらせだと思うけど、見てきてやっつけといてね」
「わかった。じゃあ、サキと言ってくるよ」
挙動不審になって固まっているシラランを置いて、サキと家を出た。
鉱山までは屋敷からすぐだが、すぐに数人の気配を感じることができた。
鉱山の入り口から少し離れたところに集まっているようだ。
サキに隠密を使ってもらって、気づかれないように近づいて確認してもらったら、
5人ほどいて、確認できた3人は、耳としっぽがあったらしい。
ん?獣人?シラランの仲間か、それとも脳筋派の人たちか?
いずれにしろ敵対する必要がないので、サキに声をかけてもらうことにした。
当然攻撃されたらすぐに守れるようにすぐ後ろに控える。
「あのー、出てきてもらえませんか?この国では獣人は歓迎されますよ」
サキの問いかけに一瞬構える気配がしたが、すぐに5人とも姿を現し、
「ああ、姫様!」とシラランと同じように跪いて頭を下げた。
やっぱりサキはなんか偉い人の娘なのかな……
5人を連れて屋敷に戻ると、フリーズモードから解放されたシラランが、カルメラ、母さん、ばあちゃんと話し込んでいた。
エーナはお外で妹2人と遊んでいた。
「ただいま~」
「お帰り。どうだった?」
「また獣人連れてきたよ」
「今日はお友達多いわね。さあ、ゆっくりしてってね」
さすが母ちゃん、誰でも温かく迎え入れてくれる。
それに気づいたシラランが大きく目を見開く。
「ちょっと、軍の諜報部が何でここまできてるんですか?ここは外交部の管轄でしょ?」
まずいと思ったのか5人は顔を背ける。
「上を通して、後でしっかり抗議させてもらいますからね。で、何をやっていたか吐いてもらいましょう。こちらは、この国の幹部に協力をお願いし、成立も間近なのです。余計な横やりを入れたらただじゃすみませんからね」
観念したのか5人の獣人は、説明を始めた。




