42.ノラ
今、俺はノラに呪術を教えてもらっている。
ノラは6歳の俺にいきなり矢を刺してけがをさせた人物だ。
カルメラと薬師のおばばが命を救ってくれたから助かった。
けがをさせられたことは、俺個人的には、特に恨んでいない。
ノラが、リーリン師匠から性格、いや、人格が変わるほどの拷問を受けたことも聞いたし、母親や家族とは離れ離れになったけど、その後、家族には心配をかけたが、俺自身は幸福だった。
さらに、俺に2度も呪術をかけ、6歳の時、俺を母から引き離した一因を作った人間だ。
まあ、1度目の呪術の時、実際に連れ去ったのはリーリン師匠で、2度目の呪術はカルメラに頼まれて、俺を更生するためのものであったらしい。
あの時、呪術を自分で解いたり、その後、カルメラにかけたりしたことで呪術に興味が湧いた。
せっかくなので、呪術を教えてもらおうと、思い切って、でも、軽い口調でノラに頼んだら、うんとうなずいてくれた。
そして、ライコスの隣で、先ほど倒した敵の何人かを生命魔法で回復させてから、呪術の実験台、いや、訓練に付き合ってもらっている。
自白、記憶操作、記憶封印はもちろんのこと、俺が他人への奉仕を強制するようにかけられた、特定の感情を強く意識させ、行動に制限をかける術など、いろいろ学べた。
特に面白かったのは、自分が自分以外の何かだと思わせる術で、猫だったり、犬だったり、娼婦だったりとまるでものまね大会のようなことができる。
他にも、ノラは物に呪術の効果を物質に乗せる術も使えて、前に俺に苦痛を与えたある特定の条件になると石が動いて苦痛を与える魔法も教えてもらった。
解呪については、すでに自分で編み出したの覚える必要はないが、どうにも通常の解呪とは違うようで、ノラがびっくりしていた。
また、他の魔法との掛け合わせ、例えばカルメラに使った生命魔法との混合魔法などは、ノラはあまり使えないということで、これは今後の自主研テーマとなった。
呪術をかけて解呪することを繰り返していたら、2人が口から泡を吹きながら何かをぶつぶつ話すだけの状態になってしまった。
それを見た残りの2人がすべてを話すからと懇願してきたので、話を聞くだけになった。
せっかく呪術で聞き出そうとしたのに。
スカイドール、エアービー、ウィンスールの3人は、度重なる暗殺の失敗で、かなり焦っており、今回の暗殺者に入っていた2人は、もともとスライドバレン辺境伯から連絡係として送られてきた人間で、彼ら3人の周りにはこれ以上強い人はいないということだった。
3人のところに乗り込む前に、ライコスとノラに確認をとる。
「俺たちは、家族の敵、師匠の敵、獣人の敵であるスライドバレン伯爵とラッシュ子爵を撃つ。カルザンの力を貸してほしい」
ライコスはノラと顔を合わせてうなずくとこういった。
「俺たちに奴ら2人のとどめを刺させてくれるなら、お前にカルザンをやるさ」
いや、いらんけど、協力してくれればいいから。
そこで、ばあちゃんと、カルメラが口々に言った。
「パドラや、とりあえず、総帥と名乗って、こいつらの頭に立て。それがこういうやつらをまとめるには最も効率が良い方法じゃ」
「すぐにスカイドール、エアービー、ウィンスールの3人をパドラ1人で倒して、組織全体に号令を出すよ。忙しくなるねえ」
スカイドール、エアービー、ウィンスールの3人は集まって、暗殺の結果を、不安の中待っていたので、効率よく退治できた。
今後の2領主との抗争の間で使えることもあるかもしれないので、とどめは刺さず、逃げられないように足だけ切って、牢にぶち込んでおいた。
その気になれば俺が治せるからな。
ムーンイブとソルダーについては、組織を出るか忠誠を誓うか選ばせた。ソルダーは組織を出て去っていったが、ムーンイブはなぜかうるんだ瞳で俺個人に対して忠誠を誓ってきた。
何だかかわいく見えたから、ペロッと耳をなめておいた。
俺が、総帥として、すべてをまとめる統治体制にするので、国名をカルザン共和国からカルザン・パドラ国に変更した。
どうせ、すべて終わったら王国と帝国に領地を返すつもりだからな。
国名変更、俺の総帥の就任と、新体制を同時に布告し、新幹部には、防衛担当ライコス、軍務担当ノラ、財政・鉱山担当カルメラ、内政・外交総帥補佐ライラが就任した。
ムーンイブが使えそうだったら、ばあちゃんと交代だな。
まあ、領土は結構広いけど、大都市もなく農村がいくつかあるだけの場所だから、奴らと決着をつけるまで存在すればいい。
当座必要なことを皆で決めて、とりあえず、組織が動くようにしてから、ライコスとノラを残して、屋敷に帰った。
当然、ライコスを生命魔法で完治させ、ノラにも長年の無理がたたって身体に不調が出ていたので、完治させたら、なんか若返ったと言って、やる気になっていた。
ノラの顔に少し表情が出るようになっていた。




