41.カルザン
妹とじいちゃん、ばあちゃんが屋敷に来た。
やはり安全を考えるとラッシュ領やスライドバレン領よりもカルザン支配地域の方がいいようだ。
ここは生まれ故郷だし当然だろう。
「お兄ちゃん!」
2人の妹が駆け寄ってくる。
最後に見たのは3歳。もう13歳。当然誰だかわからないが、少し面影があった。
薄い金髪で褐色の肌のスーラ、銀髪で白い肌のカーラ。
すでに体は大人だった。
ふたりの頭をなでなでしながら、声をかけた。
「大きくなったな」
「お兄ちゃんはケモミミスキーなの?」
スーラが聞いてきたので、俺は笑顔で答える。
「ははは、かわいい女の子だったらみんな大好きだよ」
「違うでしょスーラ、お兄ちゃんは大きいオッパイスキーだって、母さんが言ってたわ」
カーラが訂正してくれた。
「ははは、どんなおっぱいも大好きだぞ」
「うわー、変態だ……」
思春期の妹というのは容赦がない。
じいちゃん、ばあちゃんは相変わらず俺のことが大好きで、手放しで再会を喜んでくれた。
ばあちゃんは、やはりきれいなままで30代前半にしか見えない。
「パドラは強くなったね。おじいちゃんも負けそうだ」
「そういえば王都にいるおじいちゃんの友達でとても強い人が仲間になってくれるって聞いたよ」
「ああ。あいつは強いからなきっとすごい力になってくれるよ
力強い言葉に勇気が出た。
「パドラ、お嫁さんを紹介して」
ばあちゃんの一言にカルメラとサキが反応するが、どうにもカルメラの様子がおかしい。
「まさか……ライラか……」
「カルメラ!!あんた、なに私の孫と一緒にいるのよ」
2人はどうやら知り合いらしい。
「ちょっと待て、お前、孫って……」
「カルメラ、向こうで話しましょう」
そう言って2人はどこかに消えていった。
サキはじいちゃんに自己紹介して、頭を撫でられ嬉しそうにしていた。
俺は、カルメラとライラばあちゃんと一緒にカルザンの本部村に来た。
あの後、カルメラとばあちゃんは話し込んでいたが、どうやら俺とカルメラのことについては、カルメラの一方的な好意と理解し、俺の気持ちに任せるということでほっておいてくれるらしい。
ばあちゃんがついてきたのは、ただ単に俺のことが心配だったからだ。
じいちゃんは妹2人の護衛で屋敷に残っている。
とりあえず、ライコスとノラに幹部たちとカルザンの現状を確認し、これからの戦いに協力を得られるか確認するためにここに来た。
来る前にリーリン師匠にライコスとノラのことをどう思うか聞いた。
ライコスやノラ達の襲撃でリーリン師匠は拷問を受け、家が燃えてしまったのに、リーリン師匠に言わせれば、先に拷問したのは自分で、襲撃の時は、魔法で痛みを感じなくしていたから拷問を受けたと感じておらず、また、家もどちらかというとリーリン師匠が自ら狙って燃やしたということで、ライコスとノラに対して、特に思うこともないということだった。
ライコスは寝込んでいた。
暗殺者にやられたらしい。
ノラは相変わらずの無表情でライコスの隣に座り込んでいた。
俺とカルメラの顔を見るとライコスが話し出した。
「10年前、シャープクロウをつぶしたとき、俺はスライドバレンの支援を受けていた。ラッシュの盗賊をたたいて、支配しろということだった。勢力拡大は俺の目標の一つだったから受けた。俺たちがシャープクロウをつぶした次の日に、俺たちがラッシュ領主軍につぶされた。スライドバレンとラッシュの権力争いに巻き込まれたと思ったが、奴らはグルで、どうやら最初からはめられたらしいと気づいた。グレインダートのやつもそう言っていた」
グレインダートとはクレイビル商業組合の冒険者でリーリン師匠別荘襲撃の時、馬に乗ってみていたやつで、リーリン師匠と取引した人物でもある。
「あの辺一帯の盗賊を一網打尽にして、奴らは何かをやっていた」
気になるな……ケモミミの楽園もまだ見つかっていない。
「カルザンの幹部連中で俺たちがラッシュ領主軍と敵対することに反対している奴は5人、スカイドール、エアービー、ウィンスールの3人は、ラッシュ、またはスライドバレンとつながっているが、ムーンイブとソルダーはほかのやつに乗せられているだけだ。そいつらは俺たちが南部砦を落とすときに兵力が足らなくて雇った傭兵団のやつらで、いいところに都合よくいたなと思ったさ。結局大した戦闘にもならず、いらなかったけどな」
そこでノラが立ち上がった。
俺もさっき気配を感じた。
そういえば、カルメラとばあちゃんはどんな戦い方をするのだろう?
先に聞いておけばよかったな。
「ライラ、あんたここではメガファイアストームとかメガフレアは止めなよ。みんな燃えちゃうからねえ」
「カルメラこそ、ハリケーンバーストやヴァイオレントストームなんか使わないでよ。地形変わっちゃうから」
たぶん2人にはここで戦わせてはイケナイ。
俺が全部倒そう。
敵は10人。
口上も何もなく襲い掛かってきた。
後ろにいる2人はかなりできる感じだったので、弱い8人を先に倒す。
ストーンバレッドをけん制に、すきを見て死角からストーンキャノン、アイススピアやファイアボールで相手の動きを誘導してから、剣かストーンスピアでとどめを刺す。
俺は敵の一人と対しているときに、俺と対していない敵に陽動で魔法をかける。
それが俺と対している敵に対しても陽動になるからだ。
そりゃ、いきなり目の前の敵が、明後日の方向に攻撃始めたら、びっくりするよね。
そういったけん制、陽動を駆使して、弱い敵を殲滅すると、後ろの2人がこちらに動き出した。
一人はストーンウォールと泥沼で足止めしてから、もう一人に多弾ストーンバレッドを食らわせるが、相手は剣でかわす。
次も多弾ストーンバレッドを発射して、すぐウィンドカッターを追加する。
ウィンドカッターに押されたストーンバレッドは、拡散して、軌道を変えるが、かすり傷程度しか与えない。
もう一度ストーンバレッドと発射、敵も今度はしっかりかわそうと剣を構える。
しかし3度目のバレッドはただの石ではなく、火魔法を加えた、小さな爆弾だ。
無数の爆弾がまじかで爆発し、ダメージを食らったところにノラが近づいてきたので、とどめは任せて、足止めしているもう一人の前に立つ。
もう一人はストーンウォールをかわしていたが、泥沼に足を取られて、転ばないよう立ち止まって、魔法を放ってきた。
高火力のファイアランスだ。慌ててウォーターウォールを展開すると同時にストーンキャノンを隠れて準備し、ファイアランスが消える寸前にウォーターウォールの裏から解き放った。
そいつはウォーターウォールとファイアランスが消えた瞬間、ストーンキャノンが迫ってきたため、かわし切れず左肩と腕を持っていかれて、泡を吹いて倒れた。
俺がふう~と一息ついた後ろで、ノラが呪術を使って、もう一人を尋問していた。




