36.綻び
1か月に1度、カルザン共和国幹部の会合に出席するため、旧ラッシュ領と帝国領の境にある小さな町に行く。
ここがカルザン共和国の首都だ。
私の領地から馬を走らせて、4日というところなので、億劫だが、何とか続けてて参加していた。
今回は、パドラとリーリンも連れてきた。
サキも来たがったが、ナレンダがいつ帰ってくるかわからなかったので留守番させた。
最近、幹部会議がきな臭いので、パドラとリーリンは私のボディガードだ。
どうもライコス、ノラを中心とした私たち盗賊団出身幹部と南部砦奪取作戦の時から参加した傭兵上がり幹部とで争いがあるようだ。
ライコスとノラはいまだにグリーンベアーとレッドビートル壊滅作戦に参加したラッシュ領主軍に復讐しようといろいろ動いているようだが、傭兵上がりは、そんなことよりとにかく稼ぎたいらしい。
で、私のところには鉱山があるから、この利権に食い込みたいという野心が駄々洩れな奴もいるんだよ。
そんなに楽してかせげるわけないんだけどねえ。
今回も方針変更なし、特に懸念事案無しということで、会議が終わり、いざ領地に帰ろうとしていると、傭兵出身では、唯一の女幹部ムーンイブが話しかけてきた。
「少しあなたと利害の確認をしたいのです」
なかなか率直な物言いをする奴だねえ。
「黒鳥さんは、今の幹部会の方針に問題がないと思っていますか?」
「質問の意味が分からないね。それを話し合ってさっき決めたんじゃないのかい?」
「いつまでも復讐などと言って騎士団と争う必要はないのではないですか?」
「私らは盗賊さ、領地を奪ったら、奪われた奴が奪い返そうとしてくるのは当たり前だろう?復讐でもなんでもラッシュ領騎士団とは戦い続けるしかないと思うがねえ」
奪われた側から奪い返すのを諦めてくれるまではね。
奪った側は、復讐心でも持たないと戦い続けるなんて無理だと思うけど、それもわからんのかねえ、最近の若い奴らは……
「あなたも古いタイプの人間だとわかりました。ラッシュ騎士団の一部とはすでに領地の一部返還で和平成立の可能性を議論しています。成立した折にはあなたにお願いしないといけないかもしれません」
ま、私の領地は一番ラッシュ領に近い場所で、重要な鉱山もあるからねえ。
「幹部会で了承されればそれに従うさ」
「わかりました。お時間を取らせました。失礼します」
去り際にパドラがムーンイブに向かってほほ笑むとムーンイブは顔を真っ赤にして去っていった。
お前もうとっくに30過ぎてるだろう……16のガキの笑顔にときめくなよ。
ムーンイブの反応に少し脱力していると、リーリンも同じ感想だったのか唾を吐いていた。
その夜、ライコスとノラが同時に暗殺者に襲われた。
幸い、撃退してけがもなかったが、幹部の中での疑心暗鬼が増大し、共和国の運営にも問題が出てきた。
私の屋敷も防衛にも力を入れないといけないねえ。
領地に戻って、最初の夜、さすがに疲れて、パドラのマッサージを入念に受けていた時だった。
敷地内で爆発音がした。
おそらく中級火魔法だろう。
「パドラ~おねが~い」
リーリンが風呂上りにごろごろしながら、パドラに指示した。
「おい、あんたは先にマッサージ終わっただろう?私のマッサージ時間にパドラに戦闘させるんじゃないよ!」
「えー、しょうがないじゃん。私もうお風呂入ったから汗かきたくないし」
こいつ何のためにこの屋敷に居候してるんだ?パドラ更生のためだっけ?
「ちっ、パドラさっさと済ませてこい。またマッサージで奉仕させてやるからな」
「はい。ありがとうございます」
5分後、無双したパドラが10人ほど敵の暗殺者を捕らえてきたが、パドラは、さっさとマッサージ奉仕がやりたくて、しょうがない様子で、結局、とらえた暗殺者の尋問は、リーリンが文句を言いながらやるのだった。




