28.反乱の影響
俺たちが街に戻ったのはそれから3日後のことだった。
街で起こった反乱の状況がすぐにはわからず、安全が確信できなかったのと、今回のミランダさん警護の依頼者、ストラデスさんと連絡が取れなかったからだ。
ストラデスさんは死んでしまっていた。
東門から街に入り、火を着けながら高級住宅街まで到着した盗賊団は真っ先にストラデスさんの屋敷に侵入した。
ストラデスさんは盗賊団が入り込み、街に火を放っていることを知ると、すぐに自分の警護担当の衛兵団や私兵を街に向かわせてしまったらしく、盗賊団がストラデスさんの家に襲撃してきた時には数名の護衛しかいなかったようだ。
襲撃した盗賊団の頭は、数年前に起こった娼館と用心棒組織の対立で、街から追い出された用心棒組織のトップだった男だった。
あの一軒でストラデスさんがこの街の裏社会の顔になったのだが、逆恨みをされていたのだ。
その盗賊団の頭に対して、ストラデスさんや街への復讐をそそのかし、盗賊団に資金と武器防具、そして、今回の作戦を与えたのが、ジレインさんたち衛兵団の数名の裏切り者であった。
6名。今回の反乱事件の後、消息が分からなくなり、反乱を主導したと認定された衛兵団の団員の数だ。
ジレインさん、東門夜勤で盗賊団を入れた3名、事務担当だった3軍の1名、そして、昼勤の1軍の1名だ。
最後にジレインさんと一緒に襲ってきた2人は盗賊団だったそうだ。
反乱当日に50名もの人員を郊外に派遣した衛兵団長は、うまく踊らされただけで、裏切り者ではなかった。
しかし、内部から裏切り者をだし、街に盗賊団の侵入をゆるし、街の有力者を殺害させてしまった衛兵団に対する街の人々の目は厳しかった。
衛兵団の処分が始まると、幹部はほとんど全員責任を取らされて、事件とは関係ないところで素行不良やわいろなどが見つかった団員もすべて解雇または降格・減給の処分を受けた。
衛兵団はその力を実質半分に減らされ、街の治安を維持する能力も大幅に不足してしまった。
当然、その代わりに街の治安維持を期待されるのは領主軍の領都駐留の各軍団である。
「おかげで夏の南部砦への派遣は中止になったよ」
レーバルさんが教えてくれたが、本人にとっては、最愛のカトリーヌと娘との生活が続けられるのでうれしいことだろう。
「実はもう一人うまれてな」
顔が緩みまくっていた。
レーバルさんは、反乱当日、衛兵団が50人もの人員をキャンプに派遣してきたとき、どうにもきな臭いものを感じて、すぐに騎士団長と1、2軍団長に都市治安活動の強化を進言した。
西の郊外駐屯地にいる3軍には西門と南門の警備強化も依頼した。
しかし、賊は東門に集結した。
東門の異常を察知した瞬間、最寄りの第4軍から出動も考えたが、駐屯地横でキャンプを張る衛兵団が敵か味方もわからなかったので、出動ができなかった。
「まんまと敵の策中にはまったな」
と苦笑いをしていたが、あの日キャンプ場で爆発があってすぐ、これが敵の策だと気づいて、俺たちのところに戻ってきてくれたそうだ。
あのままジレインと戦って無事でいられたかどうか。
あの火魔法の威力は脅威で、ウィンドカッターもアイスウォールも吹き飛ばされた。
力負けする状況を見せつけられ、どうにも自分が器用貧乏になってしまったかのように感じている。
使える魔法の数は多いけど、局面を打開できるだけの破壊力が無いようだ。
今回の影響は、当然ながら、衛兵団と領主軍だけではない。
まず、黒鳥館、食堂、デリバリービジネスなどで、もめごとが起こりやすくなった。
ストラデスさんがいろいろ調整してくれていたのだろうが、もういない。
代わりにマルクやタクトなど成人したものや戦闘訓練に参加していた者は、俺と一緒にもめごと処理ばかりすることになってしまった。
もめごと処理班も徐々に組織化して、規模を拡大してにらみを利かせられるようになった結果、何とか落ち着いて、商売ができるようになってきた。
そのころ、黒鳥デリバリーもめごと処理班は街の皆から名前を付けられ、一定の力を持つようになったが、俺はその名で呼ばれるのが非常に苦痛で、何とか変えさせたいと思っている。
そう、グランドブルグの人々は、その組織を“パドラ組”と呼んだ。




