27.襲撃と反乱
翌朝、駐屯地の横のキャンプ場に衛兵団約50人が集結していた。
「いやー、申し訳ありません。上司にはっぱをかけられまして」
ジレインの上司には、軍に対する対抗意識があるのだろう。
護衛対象が軍の駐屯地に入ったことで、衛兵団としては犯人捜索で手柄を立てるしかないので、何が何でもひっ捕らえて来いと言われたらしい。
少し、渋い顔をしたレーバルさんだったが、キャンプ地は、もともと2軍が入っても十分な広さがあったので、一応上層部に連絡するとして連絡員を出したものの衛兵団に対して滞在許可をだした。
事件は、その夜に起こった。
グランドブルグの東門、現在、俺たちがいる駐屯地から一番近い門になるのだが、そこが盗賊団に強襲されたのだ。
どこから来たのか50人にもなる盗賊団は完全武装だったそうだ。
衛兵団1軍100名と2軍100名は昼夜交替、3軍は検問と事務仕事の昼勤と予備役の休みのみなので、夜は計100名で都市の治安を守っていることになる。
東門警備の衛兵団員は第2軍の約10名だが、門を閉じてしばらくすれば、集会部隊も、第1軍も、さらに予備役にも召集がかかって、応援に来るはずだから、問題なく守り切れるはずだった。
しかし、東門は数分で突破され、盗賊団の都市内への侵入を許してしまった。
衛兵団に裏切り者がいたのだ。
盗賊団は、市内に火をかけながら、迷うことなく高級住宅街に入り、そこでも各家に火を着けて暴れまわり、町中を混乱に陥れた。
そんな事件が起こっているとはつゆ知らず、俺たちは軍の駐屯地で楽しく過ごしていた。
「カレンちゃん、右手を青、左足を赤。セラフィは右手を黄、右足を白」
ミランダさんが指示を出すと2人が一斉に動き出す。
俺が考案して試作したツウィストゲームをみなと楽しんでいた。
「うー、体が痛いよお。パドラ、私の脇に何かささってるよ」
「パドラ君、私の胸で、そんなに荒く息をしないで、よだれが付くでしょ」
これはゲーム、すべては不可効力だ。
もう我慢できないから、このまま2人の上に倒れこみ、いろいろ揉んでやろうかと考えていた時に大きな爆発音が聞こえた。
衛兵団のキャンプ地で爆発のようだ。
窓から見ていると、レーバル軍団長たちが、門から出てキャンプ地を確認に行ったようだ。
しばらく様子をうかがって、皆でホールに降りようかと話していた時に、部屋の扉が開いた。
ジレイン隊長と2名が剣を抜いて立っていた。
「みなさん、危険ですから、移動してください。隣の部屋にいたマルクさんたちは誘導に従ってホールに降りています」
俺だけ女子部屋に遊びに来て別行動していたからな。
とそこで、ジレインの脇に控える部下の2人と目があった。
新しく来た人たちなのか初めて見る顔で何だか血走って変な感じだ。
「さあ、まずはミランダさんこちらへ」
ミランダが扉に向かって歩き出した瞬間、部下の2人が動き出した。
俺はすぐに土魔法で30センチほどの塊を2人の足元に作り出し、動きを阻害した。
地面じゃないから生成に膨大な魔力を食う。
すぐに異変に気付いた、カレンとセラフィがすぐにミランダの手を引っ張って、俺の後ろに連れてくる。
エノアは部下2名の視界をつぶそうとウォーターボールを放ったが、剣で切られて失敗した。
「ちっ、素人が、動き出しがはえーよ」
ジレインは悪態をつくと、土魔法の妨害に苦戦する2人の間を抜いて、俺に向かってきた。
残念ながら、剣は、入り口の壁に立てかけてあるので、手元にはない。
素早くジレイン向けてマッドボール1発と、避けられても、後ろの2人当たればいいかと考え、アイスランスを2発発射する
同時に右足でアイスウォールを発動して、体の右半分をジレインの視界から消した。
左手でウィンドカッターを唱えて、正面を見据えるとマッドボールとアイスランスをかわしたジレインが、右手の剣を水平になるように肩の前で構えて、左手を前に突き出し、「ファイア」と唱えた。
そのファイアは強力で、ウィンドカッターをかき消しながら、瞬く間に俺のアイスウォールを溶かしていくが、俺は見えない右手で生成していたストーンバレッドをジレイン向けてぶっぱなす。
もう少し回転をつけてから放つ予定だったが、仕方ない、少し威力不足だ。
さすがに予測できなかったのかジレインは右手の剣でストーンバレットをはじくと一旦後ろに下がって、構えなおした。
ジレインの後ろでは、さっき俺が放ったアイスランスに肩と足を貫かれた2名が苦しんでいた。
「しょうがない、もう少し、混乱させておきたかったが、このあたりが潮時だな。まあ、ここの軍が、街に戻りさえしなければ作戦は成功だ。この2人は土産でおいとくよ」
とその時階段をかける音がして、マルクたちとレーバル軍団長の声が聞こえた。
「パドル、無事か?」
「全員無事ですが、ジレインさんに襲われています!」
「キャンプ地でも衛兵団は「ジレインにやられた」と大騒ぎになっていたぞ。なかなか強力な火魔法だ」
う~ん。少なくてもジレインさんが敵なのは間違いなさそうだ。
「挟まれちゃったなあ、怖いけど、飛び降りるか」
そういうとこちらに向けて「ファイア」と唱えた。
あわてて、俺とエノアでウォーターウォールを展開し炎を防ごうとするが、威力が強くてすぐに崩壊してしまう。
仕方ないので魔力バカ食いのストーンウォールを展開し、何とか炎を食い止めていると、そのすきをついて、ジレインが、俺たちの後ろにあった窓から身を投げ出して去っていった。
駆けつけてきたレーバル軍団長にもどうしようもないだろう、俺たちは、基地の門から走り去るジレインの後姿を眺めていた。




