26.敵の目的
俺はジレインさんと相談した結果、街の東郊外にある軍駐屯地に向かうことにした。
今月、そこには第4軍団、レーバル軍団長たちが駐屯しているからだ。
このグランドブルグ周辺には、街中に1つ、郊外の東西に各1つの合計3つの駐屯地があるが、戦闘訓練のために何度も来ているから、場所もよくわかっている。
ジレインさんもレーバル軍団長を知っているようで、いい案だと賛成してくれた。
馬車に乗って約3時間、駐屯地に到着した。
先にジレインさんが早馬を出してくれていたので、駐屯地で隊長自らが出迎えてくれた。
「パドラ、相変わらず、変なことに巻き込まれているな」
「すいません、レーバルさん。お世話になります。ついでに訓練お願いします」
レーバルさんには戦闘訓練をしてもらって、剣術、魔法の使い方など、いろいろ教わっているが、師匠や先生とは呼んでいなかった。
レーバルさん一人からというよりは、軍隊のいろんな人に教えてもらっていたし、リーリン師匠とナレンダ師匠と比べてしまうのがいやだったからだ。
この第4軍にはマルクたちも訓練をしてもらっているので、他の隊員ともみんな仲良しだ。
特にカレン、セラフィ、エノアの3人の人気は抜群で、軍の基地内では軍団長よりも貴重な存在として、いたせりつくせりのサービスを受けることができる。
まるで女王様だ。
別荘の調査と手じまいを終えた衛兵団のジレイン隊長が基地に来た時には、もう夕食を食べる時間になってしまったので、食堂で、今後の打ち合わせをしようということになった。
マルクたち男子連中は団員と訓練、ミランダさんはお風呂に入って休みたいということで、俺とカレン、セラフィ、エノア、ジレイン隊長、そしてレーバル軍団長と数名の士官が食堂に座った。
カレン、セラフィ、エノアの横には、それぞれお世話をする隊員が片膝をついて控えていた。
「いや、さっきまで一緒にいたうちの隊員の中でも、3人に対して好意的な者が多かったですが、ここではすごい人気のようですね」
ジレイン隊長が驚きながら述べると
「お恥ずかしい。数年前から、軍にいろいろ教わりに来ていたので、みんなでかわいがっていたんですがね、この3人はちょっと才能がありすぎて……」
おそらくこの3人なら、第4軍を乗っ取ることも可能だろう。
「早速情報共有ですが、今日、ストラデス様の別荘を襲った連中は、外国の盗賊団を装っていました」
「外国?連合ですか?」
「いえ、王国製の武器と服を着ていました。ま、それだけでは何とも言えませんが……」
レーバルさんも少し考えこむ。
ここグランドブルグ侯爵領は帝国第3都市グランドブルグを領都として抱え、かなり広い領土を持っている。
グランドブルグの街は、連合国との国境に近いが、グランドブルグ領の南西は王国とも国境を接している。
地理的に3か国の軍事的、政治的な活動に巻き込まれやすい。
「敵からしたらストラデス様と良い関係だと思われる女を狙った襲撃だ。別荘襲撃の目的は、対象の捕獲か、殺害かどちらでしたか?」
「馬車など周辺に準備していないことを考えると、殺害または襲撃そのものが目的かと」
「ということはこの襲撃を知った人間がどう動くかですね。ストラデス様や衛兵団はどう動きますか?」
「ストラデス様は引き続き衛兵団とパドラ達で護衛を継続せよという指示でした。私が引きつれていた衛兵団は1小隊10名のみでしたが、対象が軍の駐屯地に入った時点で、護衛そのものの任務は必要なくなったといえます。そこで逃げた敵の捜索を主任務に変更したいと考えています。申し訳ありませんが、捜索隊として、さらに1中隊20人をこの軍駐屯地そばに置かせていただけませんか?」
レーバルさんとジレイン隊長の会話は 少し踏み込んだ話になったようで、
「それは構いませんが、衛兵団1中隊はどこから?」
「予備役から10名と市内治安から10名を移動させます」
衛兵団は3軍、1軍各100人で構成されていて、現在は1軍が市内治安、2軍が街を取り囲む防衛壁と街の周辺、3軍が検問と事務仕事にあたり、3軍の半分は予備役として休暇ということだ。
1軍、2軍は昼夜交替になるので、人口数万に及ぶ大都市の警備としたら少ないが、領主軍4軍も都市内と近郊にいるので、十分対応できるのかもしれない。
まあ、冒険者、貴族の私兵、一般市民でも戦える人間はいるからな。
ジレインさんの提案について、少し考えたレーバルさんは
「わかりました。駐屯地の外にある、野営訓練用のキャンプ場を使用してください。」
と言って、部下に受け入れの準備を指示していた。




