19.娼館
俺には、ここグランドブルグに、6歳の時から通う行きつけの娼館がある。
孤児院ビジネスで金が入ってきたから、久しぶりに娼館に行くことにした。
入り口で何度か顔を見たことがある綺麗なお姉さんを見つける。
「あれ、パドラ君久しぶりだね。さ、入って」
顔パスで中に入る。
案内されたのは、ひな壇が並ぶロビー……ではなく、女性陣が待機する部屋の更に奥にある子供たちの遊ぶ部屋だ。
「パドラくん!久しぶり、もうあんまり顔出してくれないと私すねちゃうからね」
カレンちゃんのお店のお姉さん顔負けのすね顔+デレに瞬間で撃沈し、謝りながら早速プレゼントを渡す。
銀で作られたペンダント、ちょっと金ができたから奮発したのさ。
「ありがと!大切にするね」
満面の笑顔でお礼を言われ、買ってよかったと満足する。
カレンちゃんは初めて見る女の子と遊んでいた。
歳は同じ10歳で、セラフィというらしい。
印象はだいぶ大人しい感じだった。
セラフィにも昔カレンちゃんにも上げたペンダントを土魔法でちょこちょこっと作って渡しておく。
セラフィも顔を笑顔でいっぱいにして喜んでくれた。
俺の右腕に胸をしっかり当てて抱き着いて、耳元に小さな声でお礼を言われた。
「ありがと!」
また、今度も作ってあげよう。
ふと周りを見渡すと、ずいぶん子供の数が増えているようだ。
「最近、周りのお店が何件かつぶれて、この娼館に女が集中してるのよ。ここに来る子供も増えたの。中には乱暴者もいて、小さい子たちをいじめて困ってるの、パドラ君助けてくれない?」
カレンちゃんの10歳とは思えない娼館事情通ぶりに少しびっくりした。
要は、カレンちゃんのいうこと聞かない生意気な奴がいるからちょっとシメてくれってことだね。
「カレンちゃんのためなら喜んで!」
10-14歳くらいの新参者の子供たちは、子供部屋の一角に集まって、7,8人でカードゲームをしていた。
以前は、もっと小さい子供たちがお絵かきをしていた机だ。
「おい、お前ら、ここのルールはこちらのカレンちゃんだ。ちゃんと言うことを聞くように」
いきなりけんか腰に話しかけると、
「なんだと、誰だ、お前!」
と当然のように喧嘩になる。
俺は体術10まで極めた男、子供の喧嘩で負けるはずがなく、一瞬で勝負はついた。
相手が14歳くらいの年上だと、サキぐらい能力値があると勝てるかどうかわからないが、ここにいる子供たちは、おそらく、歳は上でも能力値が10歳の俺よりも低い買ったのだろう。
中には少し武技を使える子もいたけど、敵ではなかった。
全員を土下座させ、上下関係をはっきりさせる。
「今後はこちらにいるカレンちゃんがここのルールになる。カレンちゃんが白と言ったら白、黒と言ったら黒だ。わかったな」
「はい!」
「みんな、よろしくね~」
かわいい。この可愛さなら問題ないだろう。
「でもこの部屋狭いよね。大きな子も増えたから、毎日ここにずっといるのは大変かも。パドラ君どっかにいい場所ない?」
カレンちゃんの続けざまのお願いに少しいやそうな顔をしそうになったが、息がかかるほど近くに寄って、耳元で小さく「お願い」と言われた瞬間、俺にとって最優先ミッションとなった。
早速、孤児院の院長に相談してみる。
実は、孤児院と娼館は結構近い。
親が娼館で働いていて、あの子供部屋で育った後、親がなくなってこの孤児院にきた子も何人もいるそうだ。
「そうだね。食堂の横の物置なら、空いてるけどね。どうせなら、少し働いてみるかい?実は薬膳スープの配達のお願いが多くてね。特に夕飯時に寝たきりの老人宅から依頼が多い。10歳以上の子たちならここの近隣だったら配達しても問題ないだろう」
なるほど、さすが院長。金の成る木をちゃんとわかってらっしゃる。
「ほめるんじゃないよ」
院長も恥ずかしいらしい。
院長が言っていたのは、食堂の隣にある小さな小屋で、今は野菜置き場として、使っていた
そこを配達員待機所として使うことにし、椅子やテーブルが無かったので土魔法で作ってみた。
思ったよりもいい感じでできたので、調子に乗って、壁を作って部屋を拡張してみたが、結構使えそうだった。
娼館に戻って、皆を集める。
薬膳スープ配達の仕事をやってみないかと聞くと、みんな賛成してくれた。
最初は10歳以上のみのメンバーでカレンちゃんとセラフィを含めて、10人だった。
新参者は14歳のマルクを筆頭に、13歳のカルロ、ミゲル、ラーダ、12歳のダル、ソンダ、11歳のコール、エノアで、エノアは実はボーイッシュな女の子だった。
マルクの妹ということで一緒にいたそうだが、一緒にボコってしまった……
謝ると笑って許してくれた。
「痛くなかったけど、次からは優しくしてね」
耳元でささやかれた。
一応、連れ出しの許可を誰かにもらおうとすると、ちょうどカレンちゃんのママが休憩で待機室に戻ってきた。
理由を説明するとすぐに認めてくれた。
「老人に薬膳スープを届けるなんて立派な仕事じゃない。孤児院の子たちが働いているちゃんとしたお店だし、みんなには話しておくから、心配しなくてもいいわ。気を付けて行ってくるのよ」
笑顔で送り出してくれた。




