15.襲撃
突然思い出した俺の記憶のノラ隊長は、ニタニタと笑っている男だったが、目の前のこいつの顔は、およそ、笑うという機能を搭載していないのではないかと思われるほど、表情のない顔だった。
まるで生気を感じられないが、その目の奥はらんらんと狂気の光を放っていた。
かなりやばい人だとすぐわかる顔だ。
俺はすぐに距離を取ろうと奴が踏み込んで窓枠を越えてくる前に、奴の足元の土を泥に変えながら、後ろに下がったが、奴は腕の力だけで、窓枠を越えて部屋に入ってきた。
迎撃するため、ストーンキャノンを最速で生成、回転を始めるが、放つ前に詰め寄られ、腕をつかまれてしまった。
やはりこの魔法は1対1では使いにくい。
ストーンバレッドではけん制にしかならないしな。
ちょうど奴の顔の横の壁が土壁だったので、一部を棒のように隆起させてストーンスピアを発動したが、簡単に手で折られてしまった。
うーん。手づまりだ。
首根っこをつかまれて、リーリン師匠たちがいるところまで連れていかれた。
黒ローブは、リーリン師匠、ナレンダ師匠、サキを一人ずつ監視しながら、ノラ隊長以外のもう一人が全体の指揮を執っているようだった。
そのリーダー黒ローブがいきなり命令をだした。
「リーリンの目を開かせろ」
黒ローブの一人が、リーリン師匠の頭を持って顔を上げさせると、師匠は口から血を流しており、あごの骨が砕かれているようだった。
その瞬間、怒りで俺の体中の血が沸騰したように感じた。
何とか師匠に生命魔法をかけようと少し距離はあったが、魔力を練った。
「ほー、生命魔法が使えるのか。ちょうどいい。小僧、リーリンを回復させろ」
こいつらは命を奪うつもりはないのだろうか?
不思議に思いながら、俺はリーリン師匠に近づいて、回復魔法を唱えてあごの傷を治した。
少し時間がかかったが、あごの傷がいえたところでリーリン師匠は意識を取り戻し、俺と目があった。
とその瞬間、リーダー黒ローブはリーリン師匠の顎を剣の柄で殴りつけた。
治したばかりの顎が砕け、口からまた血があふれる。
倒れこむリーリン師匠を見ながら、俺は頭が真っ白になった。
「おい、小僧、回復させろ。早くしないと出血で死ぬぞ」
俺は、怒りと混乱と焦りで何が何だか分からなくなっていたが、すぐにリーリン師匠に回復魔法を変えた。
回復した途端に、今度は左足のももを剣で刺した。
「うっあああああ!」
リーリン師匠の悲鳴が辺りに轟く。
俺は助けを求めて周りを見るが、ナレンダ師匠は右手を失った状態で、こちらに向かおうとしたところを黒ローブに押さえつけられていた。
サキはよく見ると両足の健が切られて気絶させられていた。
「早く回復させろ」
俺は体が動かなかったが、黒ローブは、今度は、師匠の右足のももを剣で刺しながら再度言った。
「回復だ」
師匠の喉が焼き切れるような悲鳴が響く中、俺は師匠に対して回復魔法を唱えた。
回復させても、また、師匠が傷つけられる状況を何度か繰り返して、俺は思考ができなくなり、目の前に起こっていることが理解できなくなった。
師匠の傷も深いからすぐに治らず、集中して回復魔法をかける必要があり、師匠を殺さないためには魔力も思考も集中しないといけない。
回復させるとすぐ傷つけられるので、まるで自分が師匠を傷つけているように感じ始めていた。
魔力も残り少なくなって、師匠と目があったところで、俺は気を失った。




