11.土魔法の師匠
翌朝起きると師匠が一人の女性を連れてきた。
「体術と土魔法を教えてくれる先生を連れてきたよ。今日一緒に家まで帰って、何日か滞在して教えてもらうからね。はい、元気にあいさつして!」
「よろしくおねがいします!」
昨日の飲み屋で意気投合したらしい。
ちょうど探していた2属性が使える先生だそうで、2人雇わなくてよくなったとリーリン師匠は喜んでいた。
女性は、リーリン師匠よりも少し年上に見えたが、黒髪に朝黒い肌をした、背の高い人だった。
「私は土魔法と体術を合わせた戦闘しかできないから、2人には体術と土魔法両方覚えてもらうよ」
おー、魔法と一体化した体術か楽しみだな。
市場によっていくつかの食材と俺たちの衣類を買い込むと、グランドブルグを出発して、別荘に戻った。
新しい先生の名前はナレンダといい、もっと南の島国の出身で、故郷を離れた後は、冒険者として、隣の連合国を中心に10年以上活動してきたそうだ。
その後は土魔法と体術を極めるために修行というにはちょっとのんびりした一人旅を続けているらしい。
早速、サキと模擬戦をしながらその技を見せてもらったが、俺は衝撃を受けた。
おそらく近接格闘では最強ではないだろうか。
相手の足元に穴をあけて、バランスを崩したり、手から砂を出して目をつぶしたり、足元に剱山のようなとんがった石を出して、足を負傷させたり、一つ一つは大したものではないが、すべてが攻撃と連動して放たれることで一瞬のうちに勝負を決めてしまえる力がある。
例えば相手が攻撃で踏み込んできた足のかかとに土魔法で3センチほど引っかかるように壁を作り、こちらが足を狙った攻撃を放つふりをするだけで、相手は足を引けず、バランスを崩して、次の一手を食らってしまう。
はっきり言って、せこい。
だが最初にこれを見たときの衝撃はすごかった。
何としても極めてみたい。
サキは何度組み手をしても思い通りに動けない状況にされていたが、俺のようにこの戦法の可能性に気づいていないのか、ナニコレって顔をして首をひねっていた。
俺は早速、勝手に、ナレンダ拳法と名付け、ナレンダを師匠と呼んで教えを請うた。
「いきなり相手の足元に針を出しても踏んではくれないさ。まずはこちらから一手だ、相手の次の動きを誘導し、制限する動きの訓練からだ。どこにどのスピード、角度で攻撃すると、相手がどう動く可能性が高いのか体に覚えさせろ」
こちらから拳を突き出す瞬間に相手の動きを予測して、可能性の高いところに剱山石を発生させたり、泥沼を発生させたり、石のブロックを生やしたり、何パターンも体に覚えさせる訓練をひたすら行った。
瞬く間に2か月が過ぎ、ナレンダ師匠は別荘を離れた。
本格的に修行をつけてもらうことをお願いしたため、街の拠点を整理してこちらに引っ越してくることになった
知人にも挨拶しておきたいということだったので、1月ほどで戻ってくるはずだ。
久しぶりに鑑定をして成長を確かめた。
<名前> パドラ
<年齢> 6歳
<生命> 50/50
<体力> 50/50
<魔力> 60/60
<腕力> 10
<敏捷> 12
<器用> 9
<耐久> 10
<思考> 17
<武技> -
<魔法> 土魔法3、水魔法1、風魔法1、生命魔法2
<特殊> 健康体2
<名前> サキ
<年齢> 10歳
<生命> 50/50
<体力> 75/75
<魔力> 25/25
<腕力> 20
<敏捷> 25
<器用> 17
<耐久> 17
<思考> 14
<武技> 体術3
<魔法> -
<特殊> 隠密1
相変わらずサキの能力値の上がり方はすごい。
成長期っていうのは俺にもいつか来るのだろう。
リーリン師匠が鑑定結果を見てうなる。
「2人とも異常な成長だね……ちょっと偏り出してるのが心配だなあ。まあナレンダが戻ってくるまでに少し成長が遅れたところ挽回しようか」
俺はこれまでの訓練でどうしてもやってみたいことがあったので、師匠にお願いした。
「え、石をもっと固くしたいの?」
確かに今でも魔物を倒せるくらいの強度はある。
ただし、思いっきり固くして、風魔法で回転させて、弾丸のように射出しないと殺傷力が出ないので、攻撃までの準備時間が長かった。
多人数で敵をけん制しながらだったら使えるが、1対1での戦闘では使えない。
せめて強度が上がれば、回転数を抑えてもある程度の貫通力が出るので、発動時間の短縮になると考えたのだ。
「石の成分を変えるといいかも。風と水魔法の応用で、水分を抜く乾燥を生成と同時にできるよう練習してみよう」
さすが師匠。
ナレンダ師匠が帰ってくるまで、生命魔法や乾燥魔法をたっぷりと特訓できた。




