10.グランドブルグ
師匠の別荘から2時間歩いて街道に出ると、小さな村と馬車乗り場があった。
首都とグランドブルグという街を結ぶ馬車が1時間に1本ほど走っていて、そこは馬の休憩地点になっていた。
村には数名が生活しているようで、馬房で馬の食事の世話をする人が数人常駐している。
そこで馬車に乗ると、3時間ほどでグランドブルグについた。
「帝国でも3本の指に入る巨大都市だからね。これからも来ることがあるだろうから覚えておいてね。早速冒険者ギルドに行って魔物素材を売ろう」
冒険者ギルドは街に入ってすぐにあり、大きな建物には冒険者と思われる人がひっきりなしに出入りしていた。
ダブルホーンボアの角、肉、皮は結構な値段で売れたようで、師匠はホクホク顔をしていた。
「武器と服を見に行こうか」
冒険者ギルドからほど近いところに大きな武器屋があった。
「サキちゃんは体術が使えるけど、体術は拳や脚だけが武器というわけではないよ。ナックルガード、グローブ、シューティングシューズなど保護具的な武器はもちろんのこと、実はナイフは剣術よりも体術で鍛えた方が強いんだよ」
なるほど、動きや間合いは体術の方が近いか。
サキのナイフ、ナックルガード、ブーツを購入したが、俺用の弓も購入するという。
「パドラは器用が高いから弓を覚えるといいよ。魔法使いも武技を覚えるといろいろ役立つよ」
先に魔法を極めたいので、あまり練習はしないだろう。
今日は宿に泊まるということで、リーリン師匠行きつけの小さいけどおしゃれな宿に入った。
「ここにもお風呂があるからね。パドラはまだ6歳だから、女湯に一緒に入ろう」
おおっ。興奮が表情に出ないように必死に抑え込む。
別荘ではサキが俺の体を洗ってくれるので、サキの裸はいつも見ているが、リーリンや大人の女性の裸は見たことがない。
先に湯船に入って待っていると、素っ裸のリーリンが現れた。
おっ、思ったよりでかいな。
ぶかぶかした服を着てローブを羽織っていたからわからなかったが、意外に締まって、出るとこが出た体つきだった。
できるだけ見ていないふりをしながらガン見しておいた。
風呂から出ると食堂に行き夕食を食べた。
リーリンとサキの手料理以外を食べるのは初めてだったが、とても美味しかった。
「私は少し街に出てくるから、2人は部屋で大人しくしてるのよ」
リーリンは酒場に行ってお楽しみか、俺も早く酒が飲めるようになりたい。
サキと二人で部屋に戻ってしばらくすると、疲れていたのかサキが眠ってしまった。
一人で起きているのも暇だから寝てしまおうと一緒に寝台に入ったところで、外から声が聞こえた。
「やっぱり黒鳥館のバイオレットは最高だな。」
「いや、今日のスカーレットちゃんもよかったよ。今度また指名するからな」
おいおい娼館があるのか……今はまだ6歳だが後学のためにも一度見ておくべきか。
6歳児が真夜中にたった一人で、通りを娼館に向かって堂々と歩く。
これは俺が前世で風俗に行くときに、「みんな紳士の俺を待っていてくれると自分に思い込ませ、自信を持っているように見せることができるスキル」を身に着けていたからだ。
6歳児がやれば、違和感がありそうなものだが、あまりに堂々としているせいか誰も声をかけてこなかった。
娼館の前で声をかけているお姉さんはとてもきれいな人で、こちらに気づくと話しかけてきた。
「僕、お母さんとはぐれたの?それともここでお母さんが働いているの?」
なるほど、娼館で母親が働く設定か。
「ママを探しているんだ。どこにいるかな?」
「じゃあ、待合室に行って、見てみたら。ママに会えるといいね」
すんなりと娼館の中に入れてくれた。
女性たちが待機している大部屋の脇に別の部屋があり、そこに連れていかれた。
中には、赤ん坊から10歳くらいまでの子供たちが思い思いに遊んでおり、数人の女性が世話をしているようだ。
「誰の子かしら、初めて見るわね」
と言いながらよくあることなのか、抱っこされて、女の子が一人で絵を描いている机に連れていかれた。
「カレンちゃん一緒に遊んであげて」
カレンと呼ばれた女の子は、軽いウェーブがかかった銀髪で肌が白い少女だった。
サキに匹敵するほどきれいだし、この子絶対美人になるわー。
カレンちゃんは絵をかくのをやめて、何する~?とかわいく聞いてきた。
俺はカレンちゃんを楽しませようと決めた。
まずは、日々の練習の成果を披露しようと土魔法で動物、まずは犬の人形を作ってわたす。
不細工だが、カレンちゃんは喜んでくれた。
「すごーい。犬さんだ。もっと作って」
一匹作るのに5分くらいかかるが、その間、カレンちゃんはじっと待っていてくれる。
猫とウサギが完成した。
カレンちゃんはすごくかわいい笑顔で
「ありがとう。パドル」
と言ってくれた。
その笑顔の対価に最近練習で成功し始めた土魔法を見せることにした。
材質を少し変えて、硬い白い色の平たいコインのようにして、端を6角形にカットする。
そして、真ん中には赤い模様を浮き上がらせてウサギを描き、上部に小さな穴をあければ完成だ。
お世話係のお姉さんに毛糸の切れ端をもらって結んで、カレンちゃんの首にかけてあげる。
「今日の笑顔のお礼だよ。思い出にあげるよ」
カレンちゃんは顔を赤くして、抱き着いて喜んでくれた。
そろそろ戻らないとサキが心配するかもと思い、帰りたいとお姉さんに告げた。
「いいよ。お母さんどこかわかる?」
心配しないでと言い、一人でホールにでて、ひな壇の女性をじっくり眺めながら、どうどうと正面玄関から宿に向かった。
次にこの町に来た時にも必ずこの娼館に立ち寄ろうと決めた。




