1.尿管結石は激痛
午後から出張に出て、会社に戻ろうとしたときに腹部に激痛が走った。
この痛みは尿管結石だ。
歩道橋の上でうずくまり、息も絶え絶えになって苦しむ。
何とかカバンから痛み止めを出し、水もなしに飲み込む。
少し痛みが和らいだので、何とか病院に行こうと歩道橋を降りているときに激痛に襲われて、意識がなくなった。
白い靄のかかった空間にいた。
さっきまでの激痛から解放されて、一息つく。
「はあー、生き返った」
「いや、お前さんはもう死んどるよ」
突然、声が聞こえてびっくりして振り向くと、白いひげを伸ばした爺さんが立っていた。
このテンプレ展開は……まさか。
「お前さん意識をなくして歩道橋の階段を滑り落ちたんじゃよ。打ちどころが悪くそのまま死んだんじゃ」
まさかとおもって全身を確認すると、自分の足がなく途中から透明になっていた。
「異世界への転移と現世への輪廻とどっちがいい?」
「早いな!もっとこう条件提示とかないのか?」
「わしも忙しくてな。異世界なら、お主は体内で石を作り出すことができる特殊能力があるようだから、土魔法の才能がありそうじゃぞ」
結石って土魔法なのか……まあ、便利そうだから才能がある分にはいい。
「後、痛みに耐えた最後だったから、生命魔法の才能もあるようじゃ。激痛にゆがんだ死に顔があまりに不憫だったから、健康体という能力をサービスしよう」
何かひどいことを言われているような気がするが、死んでしまった今はどうってことない。
土魔法、生命魔法、健康体か。
何か異世界に行くこと前提になってないか。
「現世に輪廻してもいいけどお主はまた体内で石を生成して激痛で死ぬ運命じゃ」
何という運命だ……あの痛みの直後に再度それを選択する勇気はない。
「わかった。異世界に行こう。現世では43年間彼女もできず、独身だった。異世界では結婚ができる容姿もサービスしといてくれ」
「健康体には健康美になれる能力も含まれておるから心配せんでよい。異世界では幼少期から能力開発などする必要がないからのう。最近は赤ん坊から魔力を使い切るトレーニングが流行っておるようじゃが、お主が行く異世界は、6歳になるまで魔力も発現せんからのう」
幼児スパルタチートはなしか。
まあのんびり行こう。
「じゃ、達者でな」
神様の声を聴きながら、俺の意識は落ちていった。
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