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サイアイ  作者: ガエイ
第二章【彩愛】-ユキナ=ブレメンテ-
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第二章 第四話「はじめまして」

 季節は移り、厚手のパーカーを着ていたと思ったら、いつの間にかTシャツを着るようになった。


 私は彼のいない生活にも少しずつ慣れてきた。むしろ今まで彼のことで頭が一杯だったのだと改めて自覚をした。家に一人でいる時も、大学で講義を受けていた時も、バイト先で働いている時も、いつだって心の中心には彼がいた。


 そんな少しずつ彼が日常から離れつつあるとき、その手紙は突然届いた。



 差出人の名前はヨーコ=マサキ。

 結論から言うと、それは【ルーラシード】が困っているから助けに来て欲しいというむねの内容だった。


□ □ □


――私は【ルーラシード】と共に調査を行っているヨーコ=マサキという者です。突然の手紙をお送りしてしまい、本当に申し訳ありません。


 【ルーラシード】についてはユキナさんもご存知ぞんじかと思いますが、現在は日本を離れて、私が調査の活動拠点としてるイギリスに来てしています。


 私と【ルーラシード】は長年調査を共に行い、旅をしている間柄です。


 これまでは何かあったとしても他人に頼らず、私たち二人で解決をしてきました。


 しかし、詳しい状況は説明できませんが、現在彼は『のろい』のようなものによって自分の意思で動けなくなっています。


 そして、その状況が先日から悪化してきており、苦慮くりょしています。


 もしかしたら日本で彼と親しい仲にあったユキナさんであれば、この苦しみを軽くできないかと思い、ご連絡をした次第です。もしよろしければご協力いただけるとさいわいです。


□ □ □


 手紙にはその後、具体的な連絡方法や訪英ほうえい手順などが記載きさいされていた。


 正直なところ、この文章を読んだだけではこの相手を信用できるのかはわからない。彼と共に調査をしている人であれば信用は出来るけれども、それは彼がその人を紹介した場合に限っての話だ。


 しかし、彼が苦しみ困っているのであれば、私は地の果てでも世界の果てでも助けに行かなければならない。例え、それが嘘やわなや信用できるのかわからない相手であってもだ。


 私はその日のうちに出国準備をして、すぐにイギリスへと向かった。こんなところで、高校の修学旅行でオーストラリアへ行くために作ったパスポートが、再び役に立つ日が来るとは思わなかった。


◇ ◇ ◇


 空港のゲートを出ると、ヨーコと思われる人物が私を待っていた。少し短めの黒髪ボブヘアーで、私よりも更に小柄な少女であった。

 かわいらしい服装をしていて、耳にきらりと光るイヤリングをしている。


 恐らく、事前に容姿ようしを聞いていなければ、絶対に彼の調査仲間とは認識出来なかっただろう。


「はじめまして、私がヨーコ=マサキです。気軽にヨーコとでもお呼びください」


「こちらこそはじめまして、ユキナ=ブレメンテです。お手紙をいただきありがとうございました……」


「面識もないのに、急にお呼びしてしまって申し訳ありません。お呼びしている立場ですので、私に対しては敬語なども気にしないでください」


「お役に立てるかわかりませんが、彼が困っているというのであれば、いつでもけつけますよ」


 私がニッコリと笑うと、彼女はどこか少し怖がっている様子だった。


「とりあえず、私が拠点としている部屋があるのでそちらに移動しましょう。【ルーラシード】は今はそこにいます」


 彼女に案内されるまま歩いていくと、空港の駐車場に着いた。


 そこには、車高が低く、派手で、何かとがっていて、『車のことはよく知らないけど、あーこれ、多分これめちゃくちゃ高いだろうなぁ』ってわかるタイプのスポーツカーが駐車されていた。


 きっと知っている人が見たら乗れること自体に感動するのかもしれないのだろうけど、高級車どころか車のことすらわからないから申し訳ない気持ちになる。


「後部座席がないので、荷物は少し狭いけどトランクに入れてもらってもいいですか?」


 容姿とは裏腹に結構攻めた車に乗るのだなと圧倒されてしまっている。そもそも見た目以上にその資金力にも驚いている。日本でだってこんな車なんて乗ったことがない……。


 トランクに荷物を入れ、車の左側にまわると運転席があったので、慌てて反対側へ向かった。きっと挙動不審きょどうふしんだったに違いない……。


「時差で身体の調子が優れないところで恐縮きょうしゅくなんですけど、この車の座席って結構重心が低めになっているので、普通の車よりも少し酔い易いから気をつけてくださいね」


 車の助手席に乗ると、シートがピッタリと身体にフィットして少し締め付けられるくらいの印象だったが、それよりも見た目以上にシートが深く、座った時に驚いてしまった。


 「それじゃあ、出発しましょうか」


 ヨーコが運転席に乗り込み、サッとサングラスを装着し、車が発進した。


◇ ◇ ◇


 酔った。


 ジェットコースターに近い感覚の酔い方に近いだろうか。運転が下手という意味ではなくむしろ上手いのだろうけど、そんなことは関係なくヨーコの車には二度と乗るまいと心に誓った。帰るときはタクシーか何かに乗ろう。


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