両親の離婚
アルトとフラットの両親は14年前に離婚した。当時フラットは10歳だったそうだ。フラットは父親について、この家を出ていった。
フラットとアルトの間には本来ならあと2人兄妹がいたのだが、死産だとか産まれてすぐだとかに死んでしまった。
父親は商売人で遠出をする事が多かったし、そもそもこの家は荷馬車を待つ為の別宅であった。本来の家は隣の隣の街にあったらしい。
ただ離婚して数年たち父の母が亡くなったのを機に父とフラットは遠くの街へ事業の事もあって引っ越してしまった。
一応その住所は母にも渡してあって、何かあれば連絡するように……と。
だが、喧嘩別れだったらしい母は父を嫌ってそれらを何もかも隠して黙っていたようだ。
本人も突然死ぬとは思っていなかったのだろうが……と兄は付け加えた。
「じゃあ、今お父さんは……」
「父さんは海の向こうだ。商売で海峡の向こうに行ってる」
「生きてるんだ……」
「生きてるよ。膝を悪くして杖ついてるけど」
「お兄さんは……」
「僕は父の留守を守って本社にいる感じかな」
「……」
本社のある街は海沿いで、ここからは馬で3日かかるそうだ。
「父さんには君の手紙を元にして事情云々送ったけど……届くのにあと……2週間くらいはかかるんじゃないかなあ」
「そんなに……」
「色々まわってるだろうし……僕が受け取ったの、定期連絡の直後だったんだよね。それに僕自身ここ半年ほど社屋の改修でバタバタしてて手紙が届いてるの気が付かなくって。申し訳ない」
「いえ、そんなこと」
「ううん、身寄りもないし困ってただろ。母さんの事だから近所にも何も言ってなさそうだし」
母親は離婚してからこの家に越してきたらしく、それで近所の人はアルトの父や兄を知らないようだ。
この家は離婚の時に父から慰謝料と共に譲られたのだとか。
「父さんも今の所に移るつもりだったし、ちょうど良かったんじゃないかな」
「そうなん……ですね」
アルトはまだ心もとないようで俯いている。
「……」
フラットはそれを少し観察してから笑みを浮かべる。
「大丈夫、父さんは君を置いていったとかじゃなくて……ましてや捨ててもないし。赤ちゃんだから母さんが必要だったとか、母さんが連れてくなと言ったとか……そんなんだよ」
「そうなの?」
「喧嘩も母さんが一方的に浮気疑ったとかが発端らしいし、もちろんそんな事なくてただの取引先の女性と商売の話をしてただけなんだけど。ホントに」
今も取引してるけどお互いドライな関係でプライベートでは一切会ってもないし、とてもとてもとフラットは笑った。
「母さん、僕が覚えてるだけでも嫉妬深いところあったし……ちょっとしたお嬢さん生まれで世間知らずな部分もあったしね。でも女手一つで働いて君を養ってたのは凄いと思うよ」
「働いてるのも知ってたんですか?」
「もちろん。紹介したの父だし、何度か僕もここに様子見に来たし……父は母に入れて貰えなくてその辺で飲んでたけど」
世話して貰っておいて家にも入れないとは。と思わないでもないが、喧嘩の理由はそれだけではなくて
父も母に負い目もあるし、まだ愛しているから遠くから見守っていくつもりでいたらしい。
「負い目?」
「祖父さんが酷い事言ったらしい。母さんの事好いてなかったしなあ……父さんと祖母さんで色々苦心したらしいんだけど、同居に耐えられなくなったんだろうねぇ」
商売で留守にするから上手く母さんを守れなかったんだ。と父は悔いてるそうだ。
フラットもそれ以上細かい事は知らないし、夫婦の問題に子が深入りするのもね。と困ったように笑った。




