父子の再会
兄弟は船着場に立っていた。
目の前には船が横付けされて、下船を今か今かと待つ乗客が集まっているのが見える。
フラットは父を探し、アルトは緊張でモジモジしている。
後方では一頭立ての馬車が主人たちを待っている。
そのうち板が渡され、甲板から人が降りてくる。
待っていた人達とハグなどで再会を喜び合う姿がどんどん増えていく。
兄弟はソワソワと待ち、そして数分後遂に薄いコートを着た男が降りてくる。フラットはそれを見てパッと明るい顔をしたので、アルトは慌ててその男を見た。
男の方もまずフラットを見つけ、隣にアルトを見つけ、笑顔を見せる。
アルトは目を見開いて男を上から下までまじまじと見た。
(この人が……)
「やあ、二人とも迎えに来てくれたんだね……分かっていたらもっと早く出てきたんだが……」
そう言いながら陸に立つ。
フラットはサッとお辞儀をし、それを見て慌ててアルトもお辞儀をする。
「おかえりなさい、父さん」
「お、おかえりなさい」
「ただいま。そしてはじめまして、アルト。会いたかったよ」
「……!」
アルトの鼓動は父が近付く程に大きく早くなる。汗もかく。
父はなんとも言い難い笑顔を浮かべ、次男に寄っていく。
「また大きくなったな……何センチも伸びたように見える」
「……え」
「ああ、そうだな。説明は後でする。それより」
テセウスは真顔になり、そして沈痛の面持ちになる。
「エリーゼの事、本当に辛いことだ。君も苦しい思いをして、長く苦労もさせてしまった……それまでの事も含めてな。本当に……本当にすまなかった」
「……」
「遅れたが、私が君の父のテセウスだ。仕方なくかもしれないが、これからよろしく頼む」
「は、はい。お世話になります」
ぎこちなく握手をする。
その時、アルトは父の左手に銀色に光るものを見た。
(結婚指輪……?離婚しているのに……?)
それに気がついたテセウスは悲しそうに、優しそうに言う。
「私はエリーゼしか愛さない。その証だよ……一方通行かもしれないがね」
「……母さんはしてなかった……」
「だろうね。それもこれも私が不甲斐ないからだが……いや、後にしよう。ここで話し込むのもおかしい」
「は、はい」
一同は馬車に向かって歩こうとするが、直ぐにテセウスが足を止める。
「それでもね、アルト」
「はい?」
「伝わらないかもしれないが、私は君たちをずっと愛していたし、これからもそのつもりなんだよ」
「……」
「本当に会いたかった。きちんと、目の前で。やっと会話が出来ただけでも……」
すまない、行こう。とテセウスは言い直す。
しかしアルトはその目が潤ったのを見たし、フラットも辛そうにそれを見守っていた。
(やっと再会できた。でも、四人揃いはしなかった)
フラットもアルトもテセウスも、同じ事を考えていた。




