冷たい家
ーーー更にまたとある場所。
重厚な石造りの館の窓の外は秋の気配がわずかに感じられる。部屋は少し冷えていた。
その寒さより寒い空気が壮年の男二人と女一人を凍えさせている。
「……死んだか」
「はい、お父さん」
鋭く冷たい声が三人を震わせる。
声の主はとある国の大企業の主であり、三人の父親であるゴードンという老年の男である。
彼は海の向こうにいるテセウスの父でもあり、フラットとアルトの祖父でもある。
テセウス、アルトと同じ灰色の目は二人と違って冷たく強いものであった。
「ふん、あの高慢ちきな女。貧民に落ちてもなお中々くたばらんと思っていたが……やっとか。全く」
やれやれと言わんばかりに人の死を嘲る。
とはいえ、この男は公私は分けるタイプで微妙な関係になっている三男との取引を不当に打ち切ろうとした事は無い。
会長としては懐の大きさも見せ、決して部下たちに嫌われてばかりではなく恐怖で縛りもしない。部下としての子や孫に何かするでもない。
ただ父親、一家または一族の当主としての面を見せる時は特別厳しかった。
ゴードンは三男テセウスが自分の反対を押し切って勝手に籍を入れた事を未だに不服としており、離婚してもまだコソコソと元嫁に尽くそうと足掻く辺りは一層腹立たしいようだった。
「これでテセウスも踏ん切りがつくだろう。まあ良かったとするか」
三人の子ども達は少し顔を見合わせる。
「あの、テセウスの次男については……」
長男がおずおずと口にする。
途端にゴードンはギッと睨みつけて壮年の息子を震え上がらせる。
「あの女に育てられた奴を孫と呼べと?ろくな教育も受けていない貧民育ちなんだろう?」
「しかしそれでも血縁です。彼には他に身よりも無いはず……おそらくテセウスが引き取ります」
「知らん。孤児院にでも入れてしまえば良いが……アイツはどうせやらんだろうからな……引き取るなら下男にでもさせておくように伝えろ」
「……」
「聞こえなかったか?」
「……分かりました。伝えます」
三人は頭を下げ、部屋から出ていく。
ゴードンはわざとらしくため息をついた。




