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――マジかよ………。

次に目が覚めた時には全てが終わっていて、男達は全員死んでいた。


俺の目の前には知らない女がいたけど、それよりもまずは自分の体の心配をした。


まだ生きている事に驚きつつも、腕を見る。


そこには先ほど刻まれた刺青は無くなっており、代わりに奇妙な模様が刻まれていた。


それは赤い線で描かれた幾何学的な紋様で、よく見ると文字にも見えた。


 ―スキル、【ゾディアック・サイン】をインストール完了しました。―


頭の中で急に声が聞こえた。


―え…? 何これ…? 


何が起こったのか全く理解できずにいると、再び同じ声が頭に響いてくる。


―新しいスキルをダウンロードしますか? はい/いいえ  どういう事なのかは全く分からない。


でも俺は直感で、はいと答えた。

すると次の瞬間、頭の中を何かが駆け巡るような不快感に襲われる。


それは数秒間続き、終わった頃には気分が悪くなっていた。


「おい、大丈夫か?」


たった今、助けてくれた?女性に話しかけられる。


その人は俺と同じ黒髪で、腰まで届く長い髪をポニーテールでまとめていた。


身長は高く、170センチ以上はあるんじゃないだろうか?

スレンダーな体型をしていて、凛々しい顔立ちをしていた。

服装は黒いコートを着ており、ズボンも黒くブーツを履いていた。


そんな彼女は俺に向かって手を伸ばしてきた、どうやら倒れていると思ったらしい。


俺は彼女の手を掴んで立ち上がり、礼を言う。


「あ、ありがとうございます」


「気にする必要はない、人助けは趣味のようなものだ」


「……えっと……?」

何だこの人……? 言葉使いといい態度といい、まるで物語の騎士みたいじゃないか。


いやまぁ確かに、この女性は騎士っぽい格好してるんだけどさ。


とりあえず、いつまでもここに居ても仕方ないので移動する事にした。


この女性が言うには近くに街があるらしく、そこへ行けば何とかなるかもしれないと言われたのだ。


だがしかし、その道中で問題が起きた。


突然女性が倒れたのだ。


最初は躓いたのかと思ったが、違った。


地面に膝をついたまま動かず、苦しそうな呼吸を繰り返していた。


そして額からは大量の汗が流れ落ちている。


明らかに様子がおかしいと思い、慌てて抱きかかえる。


「おいっ!? しっかりしろ!」大声で呼びかけるが返事はない。


完全に意識を失ってしまったようだ。


いったいどうしたら良いのか分からず困り果てたが、このままではいけないという事だけは分かった。

だから俺は女性を背負いながら歩き始めた。


それからどれくらい歩いただろうか……。森を抜けて少し歩くと、前方に街の灯りが見えてきた。

ようやく辿り着いたのか? そう思い安堵のため息をつく。

だが、その直後だった。


背中から重みが消え、俺は振り向く。


そこには誰もおらず、地面の上に一本の剣が落ちているだけだった。


俺は思わず周囲を見渡す。


だが人の気配はどこにもなく、ただ風が吹く音だけが耳に届いてくる。


 『しまった!!』


何故か剣が落ちている方から声らしきものが聞こえてくる。


「まさかね…」


そのまさかの可能性にかけて剣に向かって話かけてみる。


「もしかして喋っているのか?」


『私の声が聞こえているのか!?』


大声で脳内に響いてくるのでちょっとびっくりした。どうやら俺の予想通り、あの剣が喋っていたらしい。


念の為もう一度確認する事にした。


もし違っていた場合、恥ずかしいしな。


だから少し緊張しつつ、恐る恐る聞いてみた。


もしかしたら空耳かもと思ったが…。


「もしもし……聞こえますか……?」


『うむ、聞こえるぞ!』


どうやら俺の考えは正しかったらしい。


「なるほど、そういう仕組みになってんのか……」


つまりはあれだろ? 俺の脳に直接語り掛けてるみたいなもんなんだな。


「なぁあんた、名前はなんていうんだ?」


気になったので名前を尋ねてみると、返ってきた答えは意外だった。


『名はディレーネという。元が剣だから名しか無いがな…』


「そっか……じゃあディレーネ、なんで俺を助けたりしたんだ?……」


どうして俺なんかを助ける必要があったのだろうか? それが不思議でならなかった。


「なぁ教えてくれよ……俺みたいな人間なんてそこらにいっぱいいるだろ?なんで俺だったんだよ?」


そう尋ねると、暫く間が開いた後に答えが返ってくる。


『……私の元主が言っていたからだ。自分以外の者の為に力を振るえと。

「あいつ」はいつも言っていた。人間は弱い生き物だとな……だからこそ守れと。それが私の使命なのだと……まぁそんなわけだ。要するにお前を選んだ理由は特にない、偶然だな。それと一つ言っておくが、私が助けたのはお前が初めてではない。まぁ【剣の】私の声が聞こえる奴は初めてだがな…」


『とにかくだ、この状態になったら3か月は元に戻れん。申し訳ないが私と共に行動してもらう事になるだろう』


「は? 3か月? なんだそりゃ? それってどういう意味だよ?」


『そのままの意味だ。さっきから言っているだろう? 剣の状態に戻ったと。今の私は普通の剣と変わらん。故にこのままでは、魔力が溜まるまでは剣として存在するしかないという事だ』


――………。


マジかよ……―。

こうして俺と剣の旅が始まった。

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