6.交換留学生 雑賀孫一
本題。
ジンクスは、ある行動に対する結果です。
当たり前ですが、結果だけを生じさせることは出来ません。
君の周りにもよく居たのではないでしょうか?
晴れ男や雨男。
大事なときに出掛ける日にそうなる、って奴ですね。
かと言って、彼らの周りの環境が常に晴れていたり、雨が降っていたりなんてことはなかったでしょう?
そうだとしたら、それはもう天災です。
つまり彼らは、彼らの意識するところの、もしくは無意識で、誰かが特定したもしくは自分が特定したその日、自らが赴くことによって事象を発生させることが出来る。
ジンクスとは、つまり、そう言う事になるのですよ。
そして、貴方の場合は、貴方が相手の名前を呼ぶことがトリガーです。
あと、そうそう。
坂月太槻君についてですが、もうお察しの通り、ある意味人質です。と言うよりも、何と言えば宜しいのでしょうか。
雑賀君も、思うところがあるでしょう?
彼の不可解な行動や言動と、何故大切な思い出ばかりを忘れてしまうのか。
そして何故貴方と話が食い違う事があるのか。
貴方が帰国したら、その答え合わせもしましょう。
勿論、坂月君の側には、私達の仲間が居ることをお忘れなく。
鈴木はそう俺に言った。
里奈ちゃんと悟。
もし、二人の命が本当に俺のジンクスのせいで失われたのなら…。
あの日から、うっすらと自分に纏わり付いていた影。
だが、取り返しがつかないその事象を悔いても、二人は戻ってこない。
だから俺は、二度とそんな事にならないように、万が一彼らを、俺がうっかり名前を呼んでしまった彼らを必ず救えるように、強くなった。
いや、強くなろうと努力した。
ただどうしても、二人が生きてたらと思うと居てもたってもいられなくなる。
未だに夢に見ることさえある。
仄暗い海辺で俺を見つめる悟。いたるところに車がひっくり返り、火を噴く地獄絵図の中、立ちつくす里奈ちゃん。
二人とも俺に助けを求めてはくれない。
こんな俺に、二人は声一つ掛けてくれはしないのだ。
俺と言う死神に出会ったばかりに、あの二人の命は終わった。
それが、俺にとっての事実だ。
ただ今、この俺の力を必要としている人がいる。
この俺のどうしようもないジンクスで世界を救うヒーローになれと言う人がいる。
ヒーローは悪を倒してこそヒーローなのだと、そういう人も居る。
だが、俺の憧れているヒーローはその中にはいない。
俺の憧れたヒーローは、守れるヒーローだった。
嬉しいはずがない。
だが、一国の、というか連合国家の長に頭を下げられたことの重大さは分かる。
何となく分かる。
だけど、トロシュキン大統領さんよ。
例え相手が悪人だろうとなんだろうと、俺が人を殺すことに、変わりはないんだろ?
このシーンを書いたのは12月中旬でした。
リアルでは某国、暴動が広がっていて、現大統領勢力に対する逆プロパガンダが始まっているようです。