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月天と夢幻楼にいる双子の元へ向かう途中、月天は紫苑にかけてあった制約の鎖の術を解くことにした。


これから術者見習いとして修行をするのにこの術がかかったままでは色々と不都合があるだろう。


本音を言うとこのままにしたかったのだが、双子が首にある呪印を見たら何を言い出すか考えただけで面倒なので双子に会う前にこっそりと術を解く。


紫苑に気づかれないように術を解くとちょうど双子の執務室の前までやってきた。


月天は声をかけることなく扉を開き中へと入っていく。


紫苑も慌ててそれに続くように部屋へ入ると、中では双子が月天に頭を下げ跪拝している姿が目に入った。


「白夜、極夜。これから正式に紫苑をお前達の下につける。雪が降るまでに上級術師として上役達が認める程度の力をつけさせるように。あと、紫苑はこの幽世の情勢についてあまり知らない、その辺りも不便がないよう教えるように」


双子が短く返事をすると月天は自分の後ろにいる紫苑の方を見て、部屋の隅に用意してある紫苑の席へと案内する。


「紫苑、ここが君の席になる。一応表向きは双子の助手的な立ち位置になるから、ここで来客の対応や荷物の受け取りなど双子の雑務を手伝ってやってくれ」


月天がここでするべきことを簡単に紫苑に説明し終えると、ちょうど廊下から月天を探す従者の声が聞こえてきた。


「どうやら、もう行かなくてはならないみたいだな。白夜、極夜、紫苑を頼んだぞ」


月天はそのまま部屋の中に三人を残し部屋を出て行ってしまった。


完全に月天の気配が消えると極夜が何か言いたそうな表情をして紫苑の方をちらちらと見てくる。そんな極夜を無視して白夜が紫苑に声をかける。


「もう二度と会うことはないと思っていたが、またこうしてこちら側に出てこられて良かったな」


相変わらず無表情のままそんなことを言うものだから一瞬紫苑も身をこわばらせてしまったが、白夜の性格を思い出して思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「あ、ありがとうございます?」


一応、心配してくれていたと言うことで良いんだよね?と自問自答しつつもお礼を述べると白夜のすぐ隣にいる極夜がため息をつく。


「白夜、またその言い方。そんな言い方だとまるで会いたくなかったみたいじゃない」


「そうか?事実を言ったまでだが……」


「大丈夫です!白夜さんは悪気なくそう言うことを言ってしまう方だって分かってますから」


紫苑がすかさずそう言って笑い返すと極夜は少し目を見開いてから、くすりと笑った。


「月天様に監禁されてどうなってるか心配してたけど、前より図太くなった?それならここでも生きていけそうだね」


極夜はそう言うと、改めて紫苑の前に立ち左手を差し出す。


「これからは一応あんたの師匠ってことになるわけだから、これからよろしく」


紫苑は差し出された手を見つめてから極夜の顔をもう一度見直してしまう。


あれだけ自分に敵意を向けていた極夜がこんな友好的な態度を取るなんて何か企んでいるのでは……と思わず疑ってしまう。


「ちょっと!狐の親切は素直に受け取っておくもんだよ!まったく!」


紫苑が極夜の態度を訝しんでいるの察し、極夜は少し拗ねたような表情を浮かべ紫苑の右手を無理やり握り握手する。


握った極夜の手は少し冷えていて、緊張しながら手を差し出してくれたのかと思うと思わず笑みが溢れた。


紫苑と極夜が握手を交わしていると間を割るようにして白夜も紫苑の空いている方の左手を握る。


極夜のように手を握ると何を言うでもなくじーっと紫苑の顔を見てくるので紫苑はこれはどう対応するべきなのかと困って極夜へと視線を逸らす。


「白夜、これはこれからよろしくお願いしますって挨拶なの。何も言わずにただ握ってるだけじゃ薄気味悪いよ」


極夜は既に紫苑の手を離し自分の机に置かれた資料をいくつかまとめ始めていた。


取り残された白夜はもう一度握った紫苑の手を見ると、表情を変えることなく挨拶を交わす。


紫苑もそれに応えると白夜も満足したらしく、何も言わずに自分の机へと戻っていった。


とりあえず、月天に言われた通り部屋の出入口のそばに置かれた机に座り、書類の山に目を通していると極夜がこれからの紫苑の修行に関する日程などをまとめた紙を持ってきてくれた。


「一応、冬までに上級術師として認められるために必要な修行を組んでおいた。今のあんたの実力を知りたいから、この後修練場で実技試験させてもらえる?」


紙にびっしりと書かれた修行内容はどれも難易度の高いもので、修行以前に自分の力が本当に足りるのだろうかと不安になる。


「今のあんたならサボらずに修行さえすればあっという間に上級くらいはとれると思うから、そんなに不安がらなくても大丈夫だと思うよ。じゃあ、一刻後にここを出て修練場に行くからいつも使っている札なんかは準備しておいて」


「わかりました」


極夜はそう言うと白夜にも同じ紙を渡して、この後の予定を何やら二人で話始める。


(大丈夫、このために鬼の力を引き出せるように頑張ったんだもの)


紫苑は自分の心を奮い立たせるように胸元で手をぎゅっと握ると小さく深呼吸をしてから実力試験で使えそうな札や人形を準備し始めた。





ここまで読んでいただきありがとうございます!

また、新たにブクマしていただけた方本当にありがとうございますー!


最終回まで引き続きお付き合いいただければ嬉しいです~!

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