【 第十五話 王国武道大会8 】
ケイデンスの回転エネルギーが魔力に変換され、白虎の精霊体に力を与えていく!
「剣光斬!!!」
近衛兵や騎士団に当たらないよう、少し高い位置を飛ぶ!
観客席に展開した防御魔法を壁のようにキックし、方向を変えて攻撃をする。
クレイジービッグエイプの身長は約10mはある。
当然、横幅もあるので一撃で倒すのは難しそうだ。
『まずは奴らの注意を俺に引き付ける!』
俺はRPG風に“クレイジービッグエイプ”を“A・B・C・D・E” に振り分けた。
腕を今にも振り下ろそうとしているクレイジービッグエイプAの右腕を斬る!
丸太のような腕が兵士たちの足元に落ちる。
「ギャオォォォォォッ!」
その叫び声に、他のクレイジービッグエイプたちの動きが止まりこちらに視線が集中する。
『よし、狙い通りだ!』
兵士と近衛兵たちが「おおお!」と驚いている。
『そんなことより、早く逃げろよ!』
クレイジービッグエイプAが、左の拳を振り上げた!
『 あっ!あぶなっ!』
兵士と近衛兵たちは「ヒャーッ!」「逃げろ~!」とか叫びながら、
あわてて、入場門へ退散していく。
『ふぅ、危なかった・・・しかしこの国の兵士には猛者はいないのかよ?』
俺はちょっと、いや、かなり心配になった。
けど、そんなことを考えている場合ではない!
俺はそのままクレイジービッグエイプBへと飛んでいき、顔面を斬り裂く!
Bは両手で顔面を抑えている。
「ギャオォォォォォッ」
俺は防御壁を足場にターンして、クレイジービッグエイプCに向かって飛んでいった。
しかしCは急にしゃがみ躱された!
俺はそのまま飛び越し、その先にいたクレイジービッグエイプEの首を貫いて倒した!
Eは魔素となって消え、魔石を残した。
一瞬、ステージ上で休んでいるゴリアーデの姿が見えた。
あれだけの召喚をした後だというのに、余裕の表情をしている。
『コノヤロー!待ってろゴリアーデ!すぐに相手してやるからな!!!』
俺はさらにケイデンスを上げる! ヒュンヒュンヒュン・・・
それに応えるように剣士白虎の体も光り輝く!
もう一度ターンするとクレイジービッグエイプAに向かって飛ぶ!
剣光斬に体の回転が加わり、キリモミで飛んでいく!
クレイジービッグエイプAの胸部に風穴を開けて倒すと、そのまま残りの三体へ向かう!
クレイジービッグエイプCが、剣士白虎を叩き落さんと腕をぶんぶん降ってくるが・・・
剣光斬は光速に近いスピードで敵を斬る技だ、当たるわけがない。
クレイジービッグエイプCの前を通過するたびに、切り傷をつけてやる。
その間に、うまく防御壁でターンを繰り返しながら、クレイジービッグエイプBとDも倒す。
仕上げで、クレイジービッグエイプCを真っ二つに切り裂いて、ステージに戻る。
「キヒヒ。やるではないか・・・・。」
ゴリアーデには、少し焦りが見え始めている。
『やっとゴリラの相手ができるぜ・・・ぜぇぜぇ・・・』
『ちょっと、ケイデンスを上げすぎたかもしれないな・・・』
と思った瞬間、俺の目の前が急に暗くなった・・・
『あれっ?』
ドサァッ・・・
俺を包んでいた白虎の精霊武装が消滅して、ロードバイクは少し離れた場所に横倒しになっている。
――― 会場がざわめく ―――
来賓席のマリナが驚き立ち上がる!!
「え?あれ?ライド?どうしたの?」
会場内がざわつく中、審判員がステージに向かって歩いてくる様子が見えた。
『これ、もしかして“ハンガーノック”かぁ? 試合直前に食事する暇なかったからなぁ・・・
うぇ、気持ち悪い』
頭ではわかっていても、体が反応しない。
ゴリアーデが、いやらしい笑みを浮かべ近づいてきた。
『ヤバイ!!!』
するとゴリアーデを止めるように審判員が会場に上がって来て、カウントを取り始めた!
助かった・・・が、10カウントで俺の負けだ。
『どうする?・・・もうきつくて体が動かねぇみたいだぞ。』
「ワン・・・ツー・・・スリー・・・」
カウントは無情にも正確に進んでいく・・・
『マリナ・・・すまない。 俺は、ここで・・』
「フォー・・・ファイブ・・・」
『って、何考えてんだ俺。あきらめてたまるかよ!何か食って回復しないと。』
「シックス・・・セブン・・・」
『・・・ポケットには、何にもねぇ・・・』
「エイト・・・」
『くそっ!白虎の奴、どこに行ったんだ?』
「ナイン・・・」
『くっそお・・・くやしいなぁ・・・・あれだけ頑張ったんだぞ!』
その時、どこからか声が聞こえてきた・・・
――― あきらめちゃダメですよ! ご主人様! ―――
すると、俺の胃袋辺りが急に光り輝き出した!!!
『なんだ?!』
ハンガーノックの嫌な感じが和らいでいく!
頭もすっきりして、体の疲れがみるみる取れ、筋肉がモコッとしてきた!!
『何だこれ?体のパワーが!!!』
次の瞬間、俺はバッと飛び起きた!
「テ・・・っと、おおお?!」
審判員が少し驚いた顔をする。
“おっと――――っ?! ライド選手、カウントのギリギリで飛び起きた―――っ!!!”
“そして? なんだか体が一回り大きくなっていますねぇ、何が起きたんでしょうか?”
「ライド選手?まだやりますか?」
「あぁ、もちろんだ。」
“おおっと、ライド選手、試合続行の意思を示した!”
『ロードバイクはあるけど、白虎の気配が消えているってことは・・・たぶん魔力切れのせいかな。』
『 ご主人様!白虎の髪の毛が役に立ちましたね!ロードバイクでのお手伝いはできませんが、
そのまま“拳”で、やっちゃってくださぁぁぁいっ!!!』
『は?何言ってんの白虎???』
『こんなこともあろうかと、“武闘家スキル”が発動するように準備してたんですよ?』
『はぁぁぁぁぁぁ?????』
『白虎は神の眷属精霊ですよ?その力を一時的に使えるのですよ?最高ですわよ!!!』
『いや、でもこれだけ体力回復しているんだ、ロードバイクで戦えるだろ?』
『先ほどの“剣光斬”の途中でケイデンス上げましたよね?』
『ん?それがどうした?』
『ロードバイク内に張り巡らされている魔法回路がオーバーヒートして、すぐには使えませんのDEATH♪』
白虎の姿こそ見えないが、テヘペロな表情をしているのが手に取るようにわかる。白虎コノヤロ!!!
『ってことは、この“武闘家スキル”で倒すしかないのか? 勝てるのか?』
『ご主人様?疑ってますね神の力を?大丈夫ですわよ!あんな魔剣だよりのゴリラになんか負けませんって!』
白虎がそこまで言うなら、だまされたと思って戦ってみるか。
俺はゴリアーデを見据える。
「キヒヒヒヒヒ!さて、武器を奪われてまだやるかね?ライド君?」
・・・ゴリアーデの野郎。余裕の表情しやがって!
しかし、不思議と負ける気はしない。闘志に満ち溢れている。
ピピッ♪ “緊急セーブスキル解除により、スーパー武闘家スキルが発動しました!”
『え?なに?スーパー武闘家??』
すると、俺の体が闘気の爆発に覆われ、さらに身体強化がされる。髪の毛が伸びて金色に輝いていた!
『なんじゃこれ!?どこぞのスーパーヒーローかいっ!』
地球人として、突っ込まずにいられない。
しかし、見かけはともかく白虎と一緒に戦っているときと同じ、精霊武装に守られている波動を感じる!
これなら、いける!!!
「キヒ?なんなんだねそれは? そんなこけおどしで、勝てると思うのかい?」
と言うと、ゴリアーデが間合いを詰めて攻めてきた!
奴の黒剣が振り下ろされる!!
俺は素早く身を開いて躱す!
ゴリアーデの黒剣はステージの床をたたき割る!
「!?!?!?」
ゴリアーデの表情が驚いていた! 奴の動きが止まったように見えた!
俺はその一瞬の隙を逃さず、顔面へ拳をたたきつける!
ドガスッ!!
ゴリアーデの頬に拳がクリーンヒットし、黒剣と一緒に吹っ飛んでいく。
ドーン! ゴリアーデの体は壁にめり込み、すぐに地面に落ちた。
起き上がった奴は、信じられないという表情をしていたが、すぐに怯えに変わった。
「・・・嘘だ?そんなはずが?!キヒ?奴はロードバイクの力がないと戦えないはずでは???」
超展開にビビるゴリアーデ! 俺もビックリしてるけどな!
俺はフットワーク軽く、シャドウでパンチを出したりキックをしたりして、ゴリアーデに向け
指で“来い来い”と挑発した。
『カンフーヒーローの真似、一度やってみたかったんだよな~!』
正直、今は自分の体ではなく、誰かに操られているような感覚だ。
「シュッ、シュシュッ!どうしたゴリラ王子?もうギブアップするか?」
マリナにつらい思いをさせた分を、今から百倍返ししてやるぜっ!!
お読みいただきありがとうございました。
超展開でしたね。
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ではまた!