【 第十四話 王国武道大会⑦ 】
「それではっ、試合っ始めっ!」
審判が腕を振り下ろすと、再び歓声が会場を包み込んだ!
審判はいったん場外へと退いて行く。
ワァァァァァァァァ!!
俺はゴリラの力量を見るため、まず先手で突っ込む。 キンッ!
当然、俺の剣は受けられ、鍔迫り合いの形になった。
ゴリアーデが話しかけてきた!
「あぁ、うれしいなぁライド君。キヒヒ。」
「え?なんだ?」
「知ってるかな?」
「何を?」
「王女マリナは俺が預かっているのだよ。返してほしくば、この試合に負けることだぁね。
じゃぁないと、彼女の安全は保障できないよぉ?キヒヒ。」
とゴリラがニタァと笑う。
『コイツ、何を言ってやがる!マリナを連れ去り自分の嫁にするってキモイ計画だったと、
ヒョウが言っていたな。』
『でもおかしいな?マリナが解放されたことを、まだ知らないのか?』
だから、俺はわざとこう言ってみた。
「何だと?ゴリラ、嘘をつくなっ!」
マリナはとっくに助けているが、それを教える気はねぇ!
この野郎は絶対許せない!! マリナの感じた恐怖は底知れない!!!
マリナの分まで、ブチのめしてやるからな!!!!
「ヒャーハッハァ!嘘なもぉんかい!俺が下々(しもじも)に命じたからなぁ。」
「・・・フフフ、やっぱりゴリラは脳が足りねぇ。」
「なんだとぅう?」
「貴賓席をよく見ろよ?」
「ん?・・・なっなんで王女がっ?!」
ゴリアーデは目を剥いた。
「とっくに俺が助けたからだよっ!」
バッと俺はゴリアーデから距離をとった。
奴が怒りに震えているのがわかる。
「なぜだぁ?まさか、あのヒョウが負けるわけがねぇ。」
「その『まさか』だよ。俺がヒョウを倒したんだよ!」
「そうかぁ・・・ヒョウほどの魔法剣士を倒すかぁ・・・なら、もう容赦はしねぇ、
貴様には死んでもらおう。」
コイツ、容赦する気あったのか? なめられたもんだ。
おっと、すぐ頭上からゴリアーデの剣撃がきた! ゴッ!
俺はそれを後ろへ飛び躱す!そのまま黒剣は床を切り裂く。
ドッゴォォォォン!
床に亀裂が入り、砕け、飛び散り、そこから地面が見えていた。
「おぉ、さすが筋肉ゴリラ王子だな。スゲェパワーだ!」
しかし、動きは鈍そうだ。
もしかして、もう狂戦士化が始まっているのか?たった一振りで?
戦い難そうだから、白虎に頼んで床をもとに直してもらう。
次は俺だな。ペダルを踏み込み前進する!
ヒュゥオッ! ザンッ!
ゴリアーデの左腕をカスッた!
「キヒヒ。非力の癖にやるではないか?」
黒剣の横薙ぎが来る! ブオンッ!
それをしゃがんで躱すが、すぐにケリがきた!
俺は衝撃を和らげるため、わざと後ろへと飛び、後ろに回転しながら、フワリと着地した。
ワァァァァァァァ!!!
「ほう。やるではないか?ライドくん。キヒヒ。」
「なめてもらっては困る。」
「じゃあ、そろそろ本領発揮と行こうかぁねぇ。」
ゴリアーデが何か唱えると、体が一回り大きくなった。
『身体強化か?』
考えている暇もなく、ゴリアーデがこちらへ飛んできた ――― 速いっ!
ギリギリで躱すと、次は、剣でのラッシュが来た!
「いくぞぉ!ライドォッ!」
キキキキキキキキキキキキキィィン。
ビュッ、ザッ、バッ、ガッ、ザンッ!
先ほどとは全く違うスピードと猛攻!
「痛っ!」
ゴリアーデの剣が顔をカスッた!
『くっそぉ!!!!!』
俺はケイデンスを上げた!
同時に剣士白虎の体が光り、スピードとパワーが上がる!
バンッ!
ゴリアーデを鍔迫り合いの体勢から、弾き飛ばす!
「な?!なにいっ??!!」
奴の体が浮かんで数メートル飛んだ!
驚きで尻もちをつくようにしていたが、すぐに立ち上がると、
「キ、キヒヒ・・・中々、やるではないかぁ!」
先ほどもきいたセリフだが、明らかに焦りをにじませている。
「ゴリラ王子、もうおしまいか?」
「キヒヒ。バカ言うなぁ。」
とゴリアーデは言いながら立ち上がると。
「しかたねぇなぁ・・・」とニタッと笑う。
『・・・なにをする気だ???』
すると、ゴリアーデが貴賓席に向かって叫び出した。
「王様よーーーっ!もう王女から話は聞いているだろう?
俺は王女が欲しくて欲しくて堪らなかった・・・だから、ある計画を建てたんだぁ!」
『なんだ、コイツ?自分からマリナをさらったことを言うのか?』
「王女をさらい、マッスル王国に連れ去る計画だぁ!!!」
『言った―――――――――――っ!』
『ご主人様、やはりゴリラですわね。』
『うん、ゴリラに失礼だけどね。脳みそはゴリラ以下だろ。』
会場が一気にザワザワと不穏な雰囲気に包まれる。
俺は状況を見守る・・・。
王様がマリナに話しかけ、確認をとっている様子が見えた。
マリナが頷くと、王様は驚いていた。
・・・当たり前だ。
王様は席から立ちあがり、近衛隊長に指示を出している。
『・・・おっと、なんかヤバイ雰囲気だな。ゴリラをボコボコにしたいのに。
試合中断とか?やめてほしいぜ。』
今のうちにドリンクを飲んで、体力を回復させる。
近衛兵と騎士団たちがワラワラと会場に入ってきた。100人はいるかな?
ゴリアーデは、ニタァっと笑っている。
そして黒の魔剣をスッと空に向けると、何やら唱えた・・・
すると、魔剣の先から黒い稲妻がほとばしり、魔物が出現した!!
『白虎、あの魔物はなんていうんだ?』
『クレイジービッグエイプ・・・Aクラスの魔物ですわ。』
『へぇ~。』
転移者の俺には魔物の知識はほとんどないが、今、出現した奴らは強力な魔物らしい。
しかも5匹・・・会場が魔物に囲まれて逃げ場はない。
『とにかく、みんなを守らないと。白虎!防御系の魔法で観客席を守ってくれ!』
『はいっ!お任せください! 守障壁!』
白虎が魔法発動すると、観客席全体がドーナツを横に切ったような形で覆われる。
さすが神の眷属精霊だ。これで観客に危害はないだろう。
『にしてもあの魔剣、ちょっと変じゃないか?』
『そうですわね、私が存じている黒魔剣より、ハイスペックですし。』
『ん?おいあれ、剣に魔石が埋め込まれていないか?』
『ものすごい魔力が込められていますわ!』
『なるほど、あれでコントロールしているのか?』
「キヒヒー!皆殺しじゃ―――っ!」
クレイジービッグエイプが、会場周辺にいる近衛兵、騎士団たちを襲い始める。
エイプたちの拳がバコンッ!ボコンッ!と音を立て近衛兵や騎士団を攻撃している。
その間を必死で逃げ惑う近衛兵と騎士団たち、このままではケガ人が出てしまう!
『まずい!』
『白虎、あのサルどもを一気にやれないか?』
『ご主人様次第ですよ~?』
『ペダリングしろってことね?』
『はい!白虎の為にハァハァしてくださいね!』
『白虎!言い方っ!』
そう言いつつも、俺はケイデンスを上げる。ヒュンヒュンヒュン ――― 130rpm!
長くは持たないが、スピード勝負だから、これで行く!!!
『 剣光斬っ!!! 』
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