【 第十三話 王国武道大会⑥ 】
お待たせしました!
俺たちが体勢を整えると、すぐにヒョウの剣が襲ってきた!
その剣を受け流しながら、俺たちは反対側へ回り込み、ヒョウとの間合いを少し広く取った。
「白虎、あいつの足を止める魔法はあるかい?」
「たぶん魔法は防御されると思いますわ」
「・・・まぁ、そうだろうね。じゃあ、俺が頑張るしかないのかねぇ?」
「はい、それなら問題ありませんわ!ご主人様のハートがあきらめない限り、
白虎は無限に強くなりますわ!」
「わかったよ!やってやらぁ!!!!!」
俺はケイデンスを上げた! ギュンギュンギュンギュン・・・130rpm!
輝きを増すJC白虎の体 ――― 次の瞬間 光速で動き出す!!
俺たちは光線のように壁から壁へと、まるで星を描くように飛んでいる。
「な?!なんだ?! どこにいる????」
ヒョウが完全に俺たちの姿を見失い動きを止めている。
――― 今だっ!
「よしっ行くぞっ! 剣光斬っ!!!」
JC白虎が光線のようにヒョウとすれ違う瞬間。 キンッ!
ガラスを斬るような音が、辺りに響く。手ごたえはあった・・・。
「くそっ・・・氷壁を鋼の強度で防御したが・・・防ぎきれなかったか・・・」
ドサッ。
ヒョウは口から血を吐いていたが、まだ息はあるが。
しかしもう立ち上がることはできないようだった。
「ふぅ、コイツが武道大会に出てこなくて良かったかもな」
ふと天井を見ると、マリナを閉じ込めていた鳥かごが消えていた。
「えっと、マリナは・・・どこだ??」
天井のどこにも姿は見えない・・・え?マジ?消えたのか???
まさか、攻撃に巻き込まれた・・・とか?
まさか・・・無事でいてくれ。
俺はだいぶ焦って必死にマリナを探そうとした ――― 瞬間、マリナの声が聞こえた!
「ライドっ!!!」
俺が振り向くとバッと抱きつかれた!
顔が近いっ!今にも唇がくっつきそうだ!
「わ、わ、わ!」
それに気づくとマリナもバッと離れた。お互い顔、真っ赤だろうね。
「えっと、あの・・・ライド、ありがと♡」
「う・・・うん、マリナが無事でよかった・・・。一瞬、消えたかと思ったよ?」
「うん、それね・・・頑丈だったから大丈夫だったよ?」
マリナは無傷だった。
鳥かご はヒョウが倒れた瞬間にゆっくりと地面に着地して、そのまま消えてしまったのだそうだ。
ほんと安心したよ。
「さぁご主人様、イチャついてる場合ではありませんよ? 後のことは皆さんに任せて、
試合会場にすぐ戻りましょう!」
「あぁ、そうだな。行こう!マリナ!」
「うんっ!」
「では、ご主人様。特別シートを準備しますから!二人乗りでイキますよ!!」
と言うと、JC白虎はロードバイク形態になり、シート部分が縦方向に長く大きくなっていた。
確かに二人座れるが、ちょっとママチャリみたいでヤダな。
「白虎・・・せめてサイドカーにしてくれよ。」
「何をおっしゃいますか? サイドカーにしたらペダリングできないじゃないですかっ!」
・・・確かにそうだけど・・・マリナが俺に抱き着く形になるよね? ね?ねぇっ!!!
今、俺の顔は間違いなく真っ赤だろう。
「えッと、マリナはいいのかな?一緒に乗る形になるけど?」
『抱き着く形』とは言えなかった。恥ずかしいっ!!!
「うん、問題ないよ? ライドと一緒に乗るのってうれしいよ?」
そんな純粋な笑顔で、見ないで~~~!
くっそう、できるだけ平静を装うしかないっ!俺は埴輪だ!
「そう?じゃ、行くか?」
俺はいそいそとロードバイクに跨ると、後ろにマリナが座ってきた。
で、当然のように両腕を俺の腰付近に回してくる。
さらに背中にマリナの双丘の感触が・・・あ、とても柔らかい。
・・・いやいやいや、気を取り直して!埴輪精神でムシュカを抑える!
「じ、じゃあ、白虎。できるだけ速く頼むな!」
「ムフッフッフ~、ご主人様?いいんですかぁ?光速ですぐついちゃいますよ~。」
それはそれで残念だけど、次の試合があるからね。
その試合を勝てば、俺は堂々とマリナに・・・おっし!気合入った!!
「あぁ!頼むぜっ!」
俺はそう言うと高速でペダリングを回す!
・・・・同時に背中の感触が俺を癒してくれる!! ホワホワホワ~というイメージだ。
俺たちが倉庫から出ると、すでに賊の制圧も終わっていた。
騎士団員たちが賊どもをロープで縛り上げているところだった。
俺は途中でナターシャに声をかけ、付いて来てもらうようにし、
ゲンさんと騎士団員には「後はよろしくお願いします!」って伝えてから港を離れた。
とにかく試合会場へ急がなくては!!!!
――― 試合会場付近 ―――
「よし、ここでいいだろ。」
俺は会場付近に人気のない場所を見つけたので、そこでマリナを降ろそうとした。
すると、マリナがギュッとしてきて俺の耳元で「ライド、絶対勝ってね!」と囁いてから、
ロードバイクを降りた。ほどなくして、ナターシャも合流してきた。
二人は魔法具の『姿を消すマント』に身を包むと、会場の中へと向かって行った。
俺たちは選手受付に向かう途中で、もう一人のJC白虎とも合流する。
彼女たちはすぐに融合し、メイド白虎へと姿を変えた。精霊って自由なんだろね。
そして受付を手早く済ませると、選手専用出入口から試合会場へと続く通路に入った。
「ふぅ、試合開始5分前かぁ、余裕だったなぁ。」
「ご主人様、これどーぞ!」
「ん?おぉ!ポーションか?」
「はい、ただのポーションではありませんよ。こんなこともあろうかと準備しておいた、
白虎特性のミラクル・ポーションですよ?」
「え?変なもの入ってないだろうな?」
「いいえぇ?そなことしませんわよ?」
ニコニコ笑顔で白虎が言う。 ・・・うそつきだよな・・・。
でも体力を相当使ってしまったからな。飲むしかないっ!
ゴクゴクゴク!
「実は、私の秘密の毛を入れてありますの。」
「ブフォッ!何だって?」
「精霊である私の体の一部は、あらゆる性能を高めますのよ?」
「うわ~っ、もう飲んじまったぁぁぁ!」
「聞いてませんわね・・・。」
「・・・って、あれ?体が軽い?」
「当り前ですわ!それに、ただの髪の毛ですわよ?」
「でも毛は入ってたんだ・・・。」
「ホホホ、これでご主人様と一心同体ですわね?」
「よし!これなら全力で戦えそうだ!見てろよ!マッスル国の野郎!」
「そうやってスルーするご主人様って、クールで素敵ですわ。」
“ア~ア~、間もなく決勝戦を開始します。選手はご入場ください。”
入場を促すアナウンスが、かすかに聞こえてきた。
決勝戦なので会場の熱気が湧いているのがわかる。
俺は白虎に跨り、ペダリングを始める。
すぐに剣士白虎に変形が完了し、戦いの舞台へと歩いていく。
通路を抜けると、観客席からの歓声が聞こえてきた!
ウワアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!
ウオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!!!
「うわっ!すごい熱気だなぁ・・・。」
ものすごい大歓声と拍手の中、俺はステージ上にいる黒鎧の男をじっと見据えた。
『あれがマッスル王国の王子か・・・まるでゴリラだな。』
だがゴリラよりだいぶ太い腕だ。
そして、あの黒い剣はなんだ? 異様な雰囲気を持っているようだが・・・。
『ご主人様?あれは魔剣ですわ!』
『白虎、知っているのか?』
『ええ、魔王国の幹部クラスが使う剣で、その能力は狂戦士らしいですわ。』
『・・・また、なんてやっかいなものを。』
『魔王国の人間が使うから武器になりますが、普通の人間が使うと魔力を吸われ命奪われると
聞いていますわ。』
『・・・あのゴリラ王子、そのこと知っているのか?』
『さあ、どうなんでしょう。』
“エ~、それでは、これより決勝戦を行いますが、その前に、この栄えある決勝戦に勝ち残った
2名の選手をご紹介しましょう!
マッスル王国 ゴリアーデ選手
エトワール王国 ライド選手
両者とも戦いの準備はよろしいでしょうか?“
二人とも頷く。
“両選手とも準備万端ですね!では、試合開始の合図を審判におまかせいたしま~す。”
審判が頷く。
観客はこれから始まる決勝戦に興奮し熱狂して、あらん限りの声援を両者に送っていた。
しかし審判が両手を上げると、一気に歓声が静まった ―――。
「それではっ、試合っ始めっ!」
マリナ、見てろよ! マッスル王子を必ずブチ倒してやるぜ!
読んでいただきありがとうございました。
書くのが遅く不定期更新ですので、気長に更新を待っていただけると助かります。