【第一話 目覚めたら、そこは異世界だった・・・なんじゃそりゃ?!】
第2作目になります。
私はロードバイクが好きで、ロードバイクが活躍する物語にできないかと試行錯誤してできた作品です。
まだまだ表現力やストーリー展開に物足りなさを感じるかも知れませんが、
どうぞ、ロードバイクの活躍する物語をお楽しみください。
「ふぁ、あ~あ。」
いつもの朝、鳥の声が聞こえ、日差しが優しく室内を照らしている。俺はベッドから降りて、窓のカーテンを開ける。
「・・・・ん?!」
あれ?何かがおかしい。いつもの見慣れている風景と違っていた・・・目の前にはヨーロッパ風の建物が並び、道を歩く人々の服装も何だかRPGの世界のような恰好をしている。俺は気のせいなんじゃないかと、そしてまだ夢の中なんじゃないかと思った。階段を下りてロードバイクが陳列してある1階の店舗スペースへと降り、通りへ出た!
空気を感じる。匂いも全く違う。人々の話し声もはっきり聞こえる。そして、今、目の前に広がる光景が現実のものだとはっきりと思わされたのは、一人の長身の男が声をかけてきたからだ。
「ん?おぉ!今度はロードバイク屋さんが転移したのかぁ。珍しいなぁ。」
聞き慣れている日本語の響きに安心する・・・が、この男は今『転移』と言った。どういうことだ?
「すみません、あの?『転移』ってどういうことですか?」
「ん?あぁ、文字通り。異世界『転移』したってことだよ?・・・店舗ごとな。」
グッとサムズアップして陽気に答えてくれた男とは裏腹に、俺の頭は混乱してしまった。
・・・異世界転移、店舗ごと?・・・え?え?えええええええええええええええっ??????
俺、本当に異世界に来たのかよ・・・目覚めたら、そこは異世界だった・・・って、なんじゃそりゃ?!
「兄ちゃん、びっくりしただろ?実は、俺も転移者なんだ。」
「え?ええっ?!そうなんですか?」
「あぁ、この世界は転移者が結構いるんだぜ。面白いだろ?はははははっ!」
面白いだろ?じゃないよ!何なんだよ?いったい?俺は、剣も魔法も使えないんだぞ。どうやって生きていけばいいんだ?家は『ロードバイク屋』だぞ?異世界のどこにそんなもの走っているって言うんだ?まぁ一台も無いってことは独占市場ってことだけど・・・でも仕入れは一体どうしたらいいんだ?
俺が製造工場を作らない限り無理だろ?そんな金もないし・・・考えれば考えるほど絶望的な状況だぁ!あああああ~!!!
「兄ちゃん?そんな絶望的な顔すんなよ?大丈夫、ちゃんとこの世界で生きて行けるって?秘密兵器があるんだよ?」
「・・・秘密兵器?」
「あぁ、そうだ、今からそれを教えてやるから・・・で?兄ちゃん、名前は?」
「三智雷人です。皆からは『ライド』って呼ばれてます。」
「そうかぁ、じゃあ、俺もライドって呼んでいいか?」
「はい、もちろんいいですよ!」
「サンキューな。俺の名前は浅達 陽介ってんだ。同じ日本人で嬉しいよ!」
「え?朝立ち???」
「ち、違う!漢字が違うんだよ!ったく、それ、お約束のツッコミなんだよなぁ。」
「ははは、すみません。どうしても突っ込みたくて。」
「あぁ、わかってるよ。さて、ライド。ちょっと店の中に入ってもいいか?」
「あ、はい、どうぞ。」
浅達さんは店内に入ると、何かを探しているようだった。
「・・・・っと、どこかに魔法陣があるんだけどなぁ・・・。ライドも探してみてくれ。」
「はい、わかりました。」
・・・魔法陣?何の魔法陣だろう?とは思ったが、俺も探してみる。すると、レジのあたりにそれはあった。ほのかに光を発している。
「浅達さん、ありました!」
なんか、笑えてくる。
浅逹さんは「おぉ。あったか!」と言いながらこちらに歩いてきた。あそこは・・・うん、普通だ。
「この魔法陣で仕入れができるんだよ。」
「・・・・・はいぃ????」
意味がわからなくて、おかしな返事になってしまった。魔法陣って・・・普通、召喚獣とかを呼び出すものだよな?
「疑問に思うのも当然だな。これは商業用に特化した召喚魔法陣なんだ。」
「商業用の召喚魔法陣ですか?」
「そうだ。どういう仕掛けかは俺はわからないんだが、自分の仕事に関するものにだけ反応して、イメージしたものが召喚されるらしい。何だったかな、魔術師のあいつがいれば説明してくれるんだが・・・」
「あら?浅逹さん、こんな所にいたのね?」
店の入り口を見ると、若い女性と魔術師風のローブを羽織った男性が立っていた。
「ん?あぁ、これは丁度いいタイミングで。こちらは三智雷人くん。今朝、転移してきたばかりで何も知らないんで、同郷のよしみで今から色々とこの世界のことを説明しようとしてたんですよ。」
「初めまして、三智雷人です。皆、ライドって呼んでくれますので、お二人も遠慮なく『ライド』と呼んでください。」
「初めまして、マリナ・エトワールよ。『マリナ』でいいわ。」
「初めまして、ゲンデルワーフ・クリミストスと申します。私も皆からは『ゲンさん』と呼ばれていますので、遠慮なくそうお呼びください。」
若い女性『マリナ』は俺と同い年?いや、もう少し年下かな?俺が20歳だから17歳くらいに見える。例えるなら、女優やアイドルで充分やっていけそうな美少女だ。
で、ゲンさんは30歳くらいかな?イケメンで優しい感じがする。
「ゲンさんよう、ちょっと魔法陣の仕組みを説明してやってほしいんだが・・・」
「はい、大丈夫ですよ。えっと、ほんとに細かい部分は魔法陣論理学を勉強していただかないといけませんので、そういう難しい部分をなるべく優しい言葉で説明しますと・・・」
何でも、錬金術とナノテクノロジーに似た理論と量子力学に似た理論を魔術的に組み合わせた仕組みを使っていて、魔法陣内で自分のイメージしたものを合成、生成して製造されたものが出てくるんだそうだ。なので、別の空間、例えば『日本』から召喚したわけではない、つまり『盗んだものではない』という。あくまでも《 俺のイメージ =情報 》を魔法陣が読み取り、量子飛躍でその現物の全ての情報をコピーして、この異世界にあるナノ分子が物質を生成構成し、全く同じものを魔法陣内で合成製造され商品が出てくるのだというが・・・やっぱり全くわからん。
一応、『盗んだものではない』という点を聞いて安心した。日本のどこかのショップから呼び寄せてしまっていたら、そのショップに対して迷惑をかけてしまうし、盗まれたと思うだろう。逆の立場でそんなことをされたら、俺は嫌だ。
「へぇ~、全くわかりませんね。」と正直に答えると。
「プププッ!」っとマリナが笑った。何なんだよ!
「いえ、ライド殿は正直で素晴らしいですね!この説明ですぐに理解できる人はいませんし、もし理解されてしまったら、長年研究してきた研究者達が皆、やる気を失くしてしましますよ。」
「ところで、ライド、なぁにこれ? へぇ、この棒・・・冷たくて気持ちいいわね。ちょっと臭いけど。」
マリナはロードバイクのトップチューブを手で優しく握って前に後ろにと撫でていた。『臭い』のはタイヤのゴム独特の匂いのことだろう。
『・・・ちょっと、誤解を生みそうな発言だな。面白いけど。』と思いながら、にしても綺麗な人だな~と見惚れていた。
「マリナさん、それはロードバイクと言って、私の故郷では大人気の乗り物なんですよ。」
「ライド?『マリナ』でいいわよ?へぇ~これが乗り物ねぇ。」
「おい、ライド!早速何か召喚してみろよ。」と浅逹さんがワクワクした目で俺を見てる。なぜ?
「え?あぁ、そうですね。」
マリナに見惚れていたけど、急に現実に戻された。
「よし、じゃあ・・・・」
試しに『テールランプ』を念じてみた。すると魔法陣が光り輝き、イメージ通りのテールランプが出てきた。
「おお!すごい!ほんとに出てきた!」
「な?これで仕入れは大丈夫だろ?」
「ほう、ライド殿、筋がよろしいですなぁ。」
「どういうことです?」
「最初はイメージが中途半端だったり、うまくいかなくて、変なものが出てくることが多いんですけどね。ライド殿はイメージ力がしっかりしているので、羨ましいです。」
「へぇ、そうなんですね。」
よく、わからないのでから返事だ。でも、これならお店としてちゃんと継続してやっていけそうだ。
『ぐ~っ』と安心したのかお腹が鳴った。
「あ、そういや朝食をまだ食べていなかったな。」
「ん?あぁ、そうか。それは悪かったな。ゲンさん、マリナ、そろそろお暇しますか?」
「えぇ、そうね。あんまり長居してもいけないわね。ライド、今度、ロードバイクの乗り方を教えてくれる?」
「もちろん、いいですよ!」
「よし、じゃあライド、また昼過ぎに来るから、よろしくな!」
「えぇ、浅逹さん、ゲンさん、マリナ、ありがとうございました!」
三人は、そろって店から出て通りを歩いて行った。日本の都会と違って空が良く見える街だ。
少し向こうの方にはお城のようなものが見えた・・・。ディズニーランドにありそうな洋風の立派なお城だ。
「へぇ、あれは王城かなぁ?ってことは、ここはたぶん王国なんだなぁ。」と本当に異世界に来たんだという気持ちの整理ができて、生活も何とかやって行けるかも知れないという希望を持って、俺は朝食の準備に取り掛かった。で、冷蔵庫を開けて気がついた・・・そういえば電気がないな。どうしよう(汗)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回。