第四話 苦しさと決意
ぼくは話をそこで一度やめた。正直苦しかった。ずっとそれはまとわりついてきていた。
彼女は僕に問いかけた。
「ねえ、その後どうなったの?」
「帰り際、トイレで見た僕の体のそこら中にキスマークがついてた。気持ち悪くて気持ち悪くて、一日はいてた。」
「その女の子とは?」
「すぐブロックしたからわからない。」
「そっか。」
「ぼくはそれからきっといつの間にか人間不信は治ったと思った。でも高校卒業するくらいに気づいちゃったんだ。僕は治ってなんかなかった。ただ自分がしてたのは心の中を厚い殻に閉じ込めることだった。どんなに楽しい思い出もそのころにはつらい思い出にしか感じなくなったんだ。」
「…でも、ならなんで…」
「楽しかった、ほんとに今日は。でもこれ以上僕が無理してる姿を君に見られたくないんだ。僕は好きな人に弱い姿を見せたくもないけど、無理してる姿はもっと見せたくない。」
「…」
「だからもう、きみとは会えないんだ。これは僕の決断だから。」
「悔いはないの?苦しくないの?」
「当たりま…」
「ならなんで泣いてるの。」
自分が泣いてることにその時初めて気が付いた。その瞬間僕の心は穴が開いたような痛みが走った。
「…」
彼女は何も言わずそっと近づくと僕をぎゅっと抱きしめてくれた。
「苦しいときは苦しいって言いなよ。私、それくらいの覚悟があってあなたに告白したんだから。」
彼女のその言葉にぼくは思わず泣いてしまった。きっと、何か変わる。その時は本当にそう思っていた。