第二話 初デート
あれから1週間たったある土曜日僕は春なのに暑い日差しの中駅の前で立っていた。理由はもちろん昨日唐突に言われたデートだった。どうやら彼女の頭には「ダメ」という言葉は聞き取れないらしい。まあ、来る自分もどうかと思うが・・・。
「せんぱーい。」
声をかけてきた彼女はとてもかわいいワンピースにミニスカートをはいていた。まだ春ではあるもののこの暑さではそれも一理ありである。
「先輩?」
はっと我に帰る。
「ごめんごめん。考え事してた。」
すると彼女はにやっと笑って
「可愛すぎて見とれてたとか?」
「なわけないだろ。」
なぜか顔の温度が上がる。
「先輩、私行きたいところあるんですけど。」
「いいよ、今日は存分に付き添ってやる」
それから僕たちはいろんなところを回った、カフェ、カラオケ、プリクラ、ゲーセン。とても楽しかった。ゼロ距離で来る彼女から匂う柔軟剤のにおいや、女の子らしいにおいに僕は何度もやられそうになった。
その帰り道
「先輩、今日どうでした?」
「楽しかったよ。とても。」
「ほんとうですか!」
「ああ。」
彼女はよく感情を顔に出すタイプらしい。彼女はさっきよりもにこにこしていた。
「じゃあ、またデートしてくれますか?」
「…」
「先輩?」
「俺、一個行きたいところあるんだ。どこに行ってもついてきてくれるか?」
「はい。」
ただならぬ僕のいつもとは違う雰囲気に彼女は黙り込んでしまった。
「ここって…。」
僕が彼女を連れてきたのはラブホテルだった。
「先輩?」
「さあ、行こう?」
「…」
彼女は少し震えていたが僕の後を静かについてきていた。
「すいません。205って空いてますか?」
「ちょうどいま空きましたよ。」
「じゃあそこで」
会計を済ませエレベーターで上がる。部屋に入り彼女をベッドに座らせ、少し遠いところに僕は座った。少しの無言の後、僕は話し始めた。
「まず、先に言っておくけど、僕は君と話がしたいだけだよ。場所が場所だけどね。」
僕は彼女を見て少し笑うと彼女も少し肩が下りた。
「今日はとても楽しかった。ほんとに…。」
「ありがとう。」
「でも、今日でデートもお付き合いも終わりにしよう。」
「…障害があるから?」
「それもだね。でもそれくらいならきっと君が何とかしてくれると今日感じたよ。手をつないでくれたり絆創膏を携帯したり。少し惚れたよ。」
「なら…」
「でもだめなんだ。」
「…」
僕は少し視界がぼやけ始めるのに気づいて彼女から目をそらした。
「なんで泣いてるの。」
「…僕は君の思ってるようなきれいな人間なんかじゃない。」
「…」
僕は涙を拭いて彼女を見つめた。
「僕は高校の時この場所に来たことがある」
「え…」
「僕は襲われたんだ…。」
その一瞬で空気は凍り付き、換気扇の音が少し大きく聞こえた。