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イチ




おひとり様を満喫し、アラサー世代を生き抜いて来て、気が付けば結婚相手どころか、お付き合いする人物すら見当たらなく、ああ、このまま永遠におひとり様なんだろうか?と、怖くなり婚活に勤しんだはいいものの運が悪かったのか、婚活パーティーで出会った人物がまさかのストーカーになり、呆気なく殺されこの世からさようならした私、桜田さくら、苗字と名前にサクラだなんて!!!


 両親よ何故その名前にした!と思えど、もう遅い。

死んでしまったらそれも叶わぬ事だろう。


ああ、今更だが、もう少し親孝行しとくべきだった。

孫の一人位抱かせてあげたかった。

ウエディングドレス姿も見せたかった。


今更ながら言うが、結婚もしてみたかったけど、子供好きな私は子供も欲しかった!と、言うか子供が欲しかった。


 まぁ、愛する人との子供が一番望ましい!だけど、死んだものは、もう、どうする事も出来ない!し、もう、グダグダ言うまいと、思う訳!!!来世に期待しようと思い拳を握り締め顔を上げた所で声が掛かる


「ミリィ!何ボーッとしてんだい!!!早くポティの皮を剥くんだよ!!!」


ハァーと大きなため息を吐きながら丸めた紙でパシッと頭を叩かれる


 そうだったと思い出し、私は一心不乱に手を動かし始める。ジャガイモに似たポティの皮むきは慣れたモノで今では目を瞑っても綺麗に剥く自信がある位、手慣れたモノだ。


最初こそ慣れぬナイフでの作業だったけど、傷を作りながらも頑張ったのはコレが私の仕事だからだ。


 前世の記憶を思い出した当初、それはそれは混乱し...はしたが取り戻すのも早かった


いや、混乱する前に、毎日の忙しさにてんてこ舞いで考える余裕も無かったと言った方が正しい。


 朝から深夜遅くまで働き、寮に帰っては泥の様に眠りに着く、そして朝からミッチリと身体を動かし指示される事を必死にこなして来て、今日まで来た。


元々、不器用で特技という特技もなかった私は半年で漸くポティの皮むきと言う芸当を身に付けた。


かと言って自慢出来るものでも無いが、何をやらせても半人前な私の、今のところの特技の一つ。


 山の様に積み上がったポティと格闘する事数時間、一体この大量のポティを毎日毎日、何に消費すると思うだろうが、ポティはこの世界で言う味噌汁みたいなモノだ。


ポティのスープはこの世界で毎日欠かさず飲まれるモノで、食事には必ずポティのスープが付いてくる。


それこそ身分に関わらず王族から庶民にまで毎食飲むのだ。


かく言う私も毎日頂いてる。


私が働いてるここは王族も暮らす王宮。


 そして、なんと、この世界は魔界ならぬ魔物が住む異世界なのだ。


勿論、魔物も魔人やら竜人やら鬼人...挙げればキリがない程の人種が生息している。


勿論、凶暴な種族から穏やかな種族まで多種多様。


因みに私の種族は底辺も底辺の亜人と言う種族だ


亜人の中でも強い者と弱い者が居り、私は勿論弱者だ。


人間の姿形を取れる亜人程、能力が高い。


 獣の姿から少しも変化出来ない私は里の中でも最下層のモノだった。


私の両親も同じ様な最下層の人種だが、辛うじて人の姿を取れる。


だけど二人の能力は微々たるモノだ。


その娘の私もお察しの通りだ。


 やはり同じくらいの能力者同士でくっ付くのがこの世界の常識で、偶に能力に関わらずくっ付くカップルも居たりする。



 私は人の姿を取れないまま成人を迎えた。人の姿を取れないモノは番探しに専ら苦労する。


それに何より、人の姿を取れないと言う事は一人前の大人と見なされなかったりする。


当時は物凄く落ち込みもした。


 幼馴染二人や悪友にも、励まし序によく馬鹿にされたモノだ。



『結婚出来ねぇな』と、意地悪く笑う幼馴染み二人は凄く嬉しそうだった。


だけど、ついに画期的な発明がドワーフ族によってもたらされた‼︎



その名も人間にナァルだ!!!略して人ナルだ!!!


 両親は全財産を投じて私の為に人ナルを買ってくれた。


 辛うじて人の姿を取れる両親からしたら一人娘の私を心配してのモノだった。


 人の姿を取れたからと言って能力が高くなる訳でもないし、何かが大きく変化する訳では無かった。


だけど生活はしやすくなった。

獣の姿では出来ない事も出来る様になった。


その一つが城の下働きだ。


 城の下働きとして働き出して早十年、働き出して半年でポティの皮むきを覚え十年間、主にポティの皮むきは私の仕事なのだ。


 いや、他にも掃除や洗濯や色々有るけれど、愚図な私が手伝ったら掛かるモノも倍になるのだ。


だから主にポティは私の仕事なのだ。

この仕事が無かったら野垂れ死ぬ所だ。


 記憶を取り戻して3年、私は今日もポティの皮を剥き続ける。



 そして最近、皮むき要員から昇級して、味付け要員もさせて貰える様になった。



まぁ、最終的な手直しはされるものの大きな進歩だ。


 明日は久々の休日で里に帰る予定だ。ポティの皮剥きにも精が出る。



それもなんと三日間も!!!


明日から楽しみで仕方ない!早く明日になれと祈りながらポティの皮むき。ポティは余す事なく使われる。


 剥いた皮は最下層の者達のオヤツに早変わり。勿論、上位の者達はちゃんとした高級なお菓子を食する。


 私は余った皮を譲り受け、寮に帰る。明日からの休暇の為、節約料理をするのだ。


そして、余った小銭で両親に土産の一つでも買って行くのだ。


 里に居る二人の幼馴染みにも念の為買って行かなきゃならない。何を言われるか分からないし、後が怖いからな!


まぁ、あの二人には出来れば会いたくない。


 彼奴ら、私の幼馴染み二人は会えば会うだけ馬鹿にするんだ。


それに面倒臭い。


「お前の様な出来損ないは誰も嫁に貰わない?」余計なお世話だってーの!!!


 少しお洒落した私に「地味な顔してるくせ生きがるな!?」五月蝿い!お前が奪ったのは両親に買って貰った大事な髪飾りなんだからな!!!返せ!!!


耳引っ張るわ、しっぽ引っ張るわ、追いかけ回すわ、虫食わそうとするわ、嫌いなミミズ持たせるわ、蛙は投げて来るわ、彼奴らはホント最悪なんだ。



 此処の世界では寿命が遥かに長く、十年なんてあっという間だ。


彼らが少しは成長してることを願おう。


 成人を迎えて十年、まだまだひよっ子の私だけど、友人知人は番を迎えた者も大勢居る。



 私は焦ってはないけれど、前世での苦悩が今世ではどうも引き摺っており、今回里に帰るのは両親の知り合いに良さそうな人が居ると聞いたからだった。


所謂お見合いだ。


 その人は同じ最下層の人物で、この春王都に出て来る予定だそうだ。



だから上手く行けば結婚が決まり、一緒に帰って来れるかもしれない。


手を繋いで仲良くウフフなんて...。


寮を出て二人の愛の巣なんて!!!そして、なんと言っても可愛い子供!!!


それなのに....



そ、れ、な、の、に!!!


どうしてこうなった。


右見たら鋭い眼差しのシルバーウルフの亜人。


左見たら温和な微笑みながらも目が笑ってないブラックキャットの亜人。



 里に帰省した筈が、その三日後、私は懐かしい顔ぶれの幼馴染二人を伴って王都に戻ったのだった。



結果だけで言えば、お見合いは散々だった。

何があったか言うのもおぞましい。


 懐かしの故郷を満喫して、両親にお土産を渡して甘え、獣姿になり毛繕いをして貰い、母のお手製ポティサラダをモリモリ食べた1日目までは非常に良かった。



 王都の忙しさも忘れ、癒された所にやって来たのが幼馴染二人だった。


二日目の朝、私は母に髪を結ってもらいご機嫌だった。


 お見合いなんだから少しはお洒落しなきゃと母が言った。


父は大きくなってと涙ぐんでいた。


 まだ決まっても無いのにしんみりな中、ドアをノックする音が響き渡る。


 私は苦笑いしながら「もぉ、気が早いよ!」なんて言ってドアを開けたのがイケなかった。



 そこに立ってたのは数年ぶりに再会した幼馴染二人だった。


 二人ともグンッと身長が伸びており、見上げなければならない程だった。


一瞬壁かと思った私。



「久しぶり、ミリィ元気だった?」


 そう言って話し掛けて来たのは、黒い毛とブルーの瞳が特徴の幼馴染のノーマだった。


温和な口調と表情に本心を隠しニッコリ笑う。



 数年前まで華奢な体格をしており、女の子より可愛くて綺麗だった幼馴染は可愛さが抜け落ちており、優美な面影をそのままに端正さが増していた。


その、ノーマの手の甲には、立派な雄のブラックキャットの特徴の宝石がキラリと輝く。


 普段は手袋をしてる右手をヒラヒラさせ見せびらかすのは、どんなに怒ってるかを私に見せる為なのか、真っ赤に色付く甲の宝石は怒りで赤く鈍く光る。


そう、ブラックキャットはその感情から手の甲の宝石を変化させるのだ。


 久しぶりに会った幼馴染はどう言う訳か、何かに怒ってるのか酷く苛立ってた。


 いきなりやって来て訳も分からない私は頬を引き攣らせ手を振る。


「ひ、久しぶり、ノーマにグレン、二人共、元気そうだね」


 瞳の奥をギラリとさせながら、その怒りを隠そうともしないらしいグレンは尻尾を逆立て私の声が届いた瞬間、耳をピンッと立てる。


 耳と尻尾が出てるのは隠しもしない為なのか、久しぶりに見た二人は半獣の姿だった。


 幼馴染の二人は私とは違い、亜人の中でも強者の部類に入る。


 王都でも引けを取らないその能力は、女の子にもモテモテなのに、性格が悪いせいか、未だに番は居ない。


 さっさと可愛い番でも見つけてくれれば私の心の平穏は無事なのにと思うのに、二人は中々番を決めない。


里のほぼ全ての女の子達は二人に恋したと思う(番持ちを除く)


 兄妹の様に育った私に言わせれば碌でもない二人にキャーキャー言う心境が分からない。


 この二人の顔、姿は良いが、性格は碌でもないぞと教えたい。


番になんてとんでもない。


私は知ってるんだ。


 番は中々決めないくせ、手当り次第食い散らかしてるのを!


 まぁ、この世界は性に奔放だけど、前世の記憶を持つ私からしたら有り得ない!


身体の相性を見てから?とんでもない!

身持ちが固くて何が悪い!?


 何が言いたいかと言うと、この二人を番に選んだ所で大事にされる気がしないのだ。


まぁ、そもそも、そんな気も無いから考えるだけ無駄!!!


 その二人がニッコリ笑いながら玄関先に立ってるのだ。


どうした!?ってなるよね?


 両親はのんびりした性格で疎いのか二人の性格を見誤ってる。


あらあら〜なんてノホホンと笑う父と母。



「ああ、頗る元気だ。機嫌が良すぎてどっかの誰かを噛み殺しそうだが、ミリィはどう思う?」


「へ?」


「うん、誰とは言わないけど今なら何でもしそうな位高ぶってるんだけどどうしたら良いかな?」


「へ?」


 何故こんなに怒ってるのか分からないままポカンとする私を放ったらかしにして話し出すのは両親だった。


「まぁまぁ二人とも、久しぶりじゃない!良かったらお茶でも飲んでゆっくりして行きなさいな」


「ハハハ母さん、ゆっくりしてる時間は無いんじゃない無いかな?なんたってミリィのお婿さんが待ってっ...っ!!!可愛いミリィのっ...俺の小さかった娘がっ...見合いを...っ」


「もぉ、父さんったら!ミリィがお見合いするってだけでこうなんだから!ほらほら、鼻水拭いて、はい、チーン。まだお見合いをするだけでしょ?」


「っ...そうだな、まだ見合い...二人とも、今度ゆっくり酒でも飲もう!...俺はちょっと用を足して来る」


 そう言いながら部屋を出て行った父の瞳には涙が浮かんでいた。


「あらあら〜お父さんったら、歳のせいか涙脆くなっちゃって」


父の後を追うように母が出て行く。


今、この二人と三人にしないでっ!!!と、叫びたかったが、二人の無言の圧力に私は何も言えなかった。


 そもそも子煩悩な両親を見て育った私は早く初孫でも抱かせてあげたかった


記憶を取り戻してからはそれも益々深まる。


 いや、以前は幼馴染二人の影響で男性が少し怖かった。


 嫌な事ばかりして来る異性は私に取って苦手の何者でも無かった。


そうこうしてる内に時間は刻一刻と過ぎて行く。


 一体何しに来たんだと言わんばかりの目付きをする私を他所に二人は沈黙しながらも、その強い眼差しを向けて来る。


その視線は鋭く、何かを言いたそうにも見える。


沈黙に耐えかねたのは私だった。


「あのね、今から出掛けないといけないんだけど」


本当は大事な見合いが有るんじゃ!!!だから出てけ!って強気に言いたかった。


けど実際、そんなに強く出れない私だった。


 この世界の上下関係と言うものは絶対で弱者は死んでも強者には勝てないのだ。


 本能で従うと言うか、畏怖すべき者として意識しなくても身体が緊張する。


昔からそうだった。


嫌だと思っても逆らえないもどかしさ。


幼馴染で気安い存在でも、やはり私達は力の差がある。


コレが男同士なら尚更だろう。


この二人も昔は物凄く対立してた。


二人の力、能力は五分と五部。


だから喧嘩したら中々決着が付かない二人。


 何が原因でそうなるのか分からないけれど、目が合えば言葉よりも先に拳と足が出てたっけ。


血を流し、本気の勝負なんて珍しくも無かった。


 大人になれば本当にどちらか死んでしまうのではないかと思った。


怖くて怖くて堪らなかった当時。


それも異性を苦手だと思う一つの要因だった。


 だけどある日を境に闘いはピタリと止み、誰もが入り込めない絆の様なモノまで出来る始末。


何があったか聞いても教えてはくれなかった。


ジッと見つめる熱い眼差しに目を逸らしたのは私。


 「大事な見合い相手が待ってるって?」


瞳をスッと細めたグレンは本当に恐ろしかった。


 今にも飛びかかって来そうな雰囲気に私はソワソワと落ち着き無く視線を彷徨わせる。


一方、ノーマはと言うとニコニコと微笑み、優雅にもお茶で喉を潤す。


「ねぇ、誰の許可を取って見合いなんて行くの?」


言ってる事は少しも優雅とは程遠いが...。


 「ミリィの癖に見合い?笑っちゃう」


クスリと鼻で笑うノーマは本当に性格が悪い。


 パシッパシッと何かを打ち付ける音の正体はグレンのシルバーのフサフサした尻尾で、ノーマの手の甲の宝石が最初来た時よりも明らかに真っ赤に染まって見えるのは気のせいだろうか?気のせいだと思いたい。


怒りの度合いがその色から伺い知れる。


 だけど、今日は黙ってないぞ!と意気込む私は口を開く。


「私っ、番を見つけるの!!!今日、その人が良い人ならっ、そのまま番の誓をして決めようと思う!!!それに今日会う人は私と同じ最下層の亜人で、穏やかな人って聞いてる!こんな良縁滅多に無いの!」


 出会いも無ければ見初められる美貌も無い私は両親の伝を伝って結婚するしかないと思う。


だから邪魔しないでと言ったところでハッとする。


二人がもの凄く笑顔な事に私はゾクッとする。


本能が逃げろと警告する。



 「へぇー良縁ねぇ」


 「確か、ルートの従兄弟だったっけ?能力も並、容姿もパッとしねぇ男で?口だけは達者なルートの腰巾着?で、仕事も長続きしねぇ出来損ない」


「出来損ないって...」


「事実だろ」


「少し睨んだだけで逃げて行く負け犬とミリィ...何だっけ?何するって?」


「「番の誓い?」」


 そう言った所で両親が帰って来た。


ガチャと扉が開いて、両親がすまなそうに眉を下げる。


「二人ともごめんなさい、もうそろそろ行かないと」


時間だと言いながら母が近付いてくる。


 両親にとって二人は実の息子の様に可愛がっており、本能で強者と分かるものの、生きて来た年月からか私より大分気安い。


私はホッと息を吐き出して立ち上がる。


 おそらく二人は私の様な最下層の人間に先を越されるのが許せないんだろう。


自分達はまだ可愛い番も見つけて無いのに見下していた私がまさかのまさか結婚するんだ。


しかも、今日決まるかも知れない。


邪魔したいとでも思ってるのかも知れない。


だから出来れば二人には会いたくなかった。


このまま何事もなく見合いに行きたかった。


 「オジさん、オバさん、鈍感で愚図なミリィが心配だから俺らも付いて行って良いですか?」


おい、何気に貶してる!


父よ、母よ!気付いて!!!絶対心配なんてしてないから!!!


ぶっ壊そうと企んでるから!!!


駄目だと言って!!!



 そんな私の願いも虚しく両親は涙ぐみながら喜ぶ。


 「まぁまぁ!二人供優しいわねぇ!妹の様なミリィが心配なのね!」


「俺らが見極めてやります!」


そう言いながら爪を尖らせるノーマの瞳は爛々と輝いていた。


 犬歯を尖らせるグレンの表情はチビル位恐ろしかった。


騙されやすい両親は少しも疑う事無くウンウンと頷く。


 そうして二人を連れ、お見合い場所までやって来た私達だけど、後悔し通しだった。


 里でも有名な見合い場所は綺麗な花畑がある公園だった。


 涼し気な小川なんかもあって、建物は連日満員御礼の予約で埋まっており、見合い客で賑わって居たりする。


私も漸く取れたのに、見合い場所に付いてまず後悔。


 仲人がノーマとグレンの二人に気が付き、私そっちのけに二人に食いつく。


 二人に似合いの女の子を紹介させてくれと鼻息荒い仲人にドン引きしたのは私を含めて両親と相手方だった。


更に後悔したのは、気を取り直して出て来た料理を見た瞬間。



そりゃ、強者の人達の華やかな見合いと比べると駄目だけれど、これでも奮発した方だった。


並べられた料理にケチを付けたのは幼馴染の二人。


 断りも無く一口齧った料理に二人は不味いと言い放った。


そしてお前は食うなと取り上げられる。


「まったく...とんでもないねぇ」


 口元を隠し、ふふふと笑いながらノーマは相手を見つめる。


 水をガブガブ飲むグレンがべーっと舌を出す。


「くそまじぃ...最悪」


 何か変な味でもするのかな?とソッと手を伸ばせばパシッと手を振り払われる。


結局、私は一口も食べれなかった。料理は全てグレンの胃袋の中に収まる。


朝から二人突撃により私は何も食べてなかった。


お腹が空き過ぎてグーグー鳴る腹の虫。


 相手が優しくて笑ってくれたからよかったものの恥をかいた。


更に後悔したの水瀬でボートに乗った時。



 私達の乗るボートに何を思ったのか激突して来る二人。


危ないから止めてと言ったけれど止めてくれなかった。


二人は少しも成長してなかった。


悪ガキのままの二人


私は耐えた。



 二人が威嚇する様に相手を見た時も、質問攻めにした時も...


「年収は?」なんて、私でも聞き辛い事をペロリと聞くノーマと「今までヤッタ人数は?」なんて平然と聞くグレン(思わず吹き出したね)


 相手は常に引き攣った笑顔だったけれど、やはり強者だと本能で分かってるのか何も言わなかった。



そして帰りに一言


「今回の話しは無かった事に」


と、断られた私だった。


 更に付け加えるなら、やるせない思いのまま不貞腐れる私に二人は妙に優しかった。


帰り際、本当の兄妹の様に頭をポンポンとして来るノーマ


 グレンは常に何かに耐える様に眉を寄せていた


息も少し荒かった様な気がする。


そう、出された料理を食べてから...




そうして二日目が過ぎて行った。



次の日、私は帰る為、馬車の順番待ちをしていた。



 お見合いは散々な結果に終わったものの私は諦めては居なかった。


今回はたまたま上手くいかなかったけれど、城で働く先輩に恋のキューピットを名乗る人が居る事を思い出す。


 知り合いでもなければ話した事も無いけれど、少し仲良くしてる同僚の伝を使ったらなんとかなるだろうと考える私は1日も早く王都に帰りたかった。


この世界に電車や車なんてものは無く、羽がある者は飛んで行ったりもできるかもだけど、最下層の人種は専ら馬車を利用する。


馬に似た生き物は凄く大きくて鬣が異様に長い。


 荷物を手に持ち順番待ちをしてる私の目に飛び込んで来たのはまさかのまさか、幼馴染の二人。


片手に小さ目な鞄一つの二人は、見ればちょっと買い物にでも行くのでは無いかと思う程の簡単な装いだった。


まさかのまさか、そのまま王都に居座るなど誰が思う!!!


こうして私は何時もの日常に戻って行く。


 変わった事と言えば、日常に幼馴染二人が加わり、それによって生活が大きく変貌するけど、私はまだ知らない。



コレは私が聖獣様と出会うまだ前の話し....。














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