大切な存在
「おはよう、奏音。」
「…おはよう、隼。」
いつも通りの朝。今日は中学校の入学式だ。
幼馴染の松下隼は私、如月奏音を迎えに来た。
「じゃあ、行こうか。おじさん、おばさん!行ってきます!」
「……」
「あぁ、隼行ってらっしゃい。奏音もね。」
「…行ってらっしゃい。」
「はい!」
「……行ってきます。」
「奏音!」
ビクッ
「な、何?びっくりしたー」
「僕達今日から中学生だね!」
「うん、そうだね。」
「もー!なんでそんなに興味無さそうなの?」
「いや、だって小学校とほとんど変わらないじゃん。中学校なんて。」
「そーなんだけど!新しい友達できるかもじゃん!!」
「隼」
「何?」
「友達は元から居ないでしょ、私には。てか、作ったらダメなんだよ。」
「……奏音…。奏音には僕がいる。僕は友達じゃないの?」
「あー、忘れてた(笑)友達だね」
「忘れないでよー」
「ごめん、ごめん。あははっ」
「もー!」
私は、『地獄の家』にとらわれている。
『地獄の家』これは、私が名付けた、自分の家のことだ。
きっと、この家の事を知る者は身内と、音楽家達だけである。
根拠はない。しかし、近所の人などに話す家の出来事と、実際にあった出来事は違うことだけは、確かだ。そして、音楽家達は、地獄の家の住人であり、私の先生である。
「おはようございます。入学おめでとう!名前を教えてくれますか?」
「おはようございます。如月奏音です。」
隣では隼が先生と思われる人と私と同じように話している。
「おはようございます!松下隼です!」
「はい。これ、名札ね。胸に付けて、教室に行って下さい。」
「はい。分かりました。」
「あーあ、奏音とクラスで離れちゃったね。」
「うん。まぁ、6クラスもあるんだから確率は低いでしょ。」
「そうだね。でも、隣のクラスだからすぐに奏音のところに行けるからいいや!」
「…それなんだけど。隼、中学生になったことだし、もう私のことなんか気にしなくていいから。隼は、自分のことを大切にして。」
隼はいつも私を最優先して、自分のことを後回しにする。隼は人懐っこい性格だから、友達だって、私がいなければ沢山出来るはずだ。私がいるからと、隼は友達を作ろうとしない。
「奏音、僕は自分を大切にしてるよ?奏音と一緒にいるのは、気にしてるからじゃなくて、僕自身が奏音といたいからだよ!もう、何度も言ってるじゃんか。」
「……うん、ごめん。ありがと、隼。」
1年2組▷▶︎▷▶︎隼
1年3組▷▶︎▷▶︎私
今日は平和な一日だといいな。