謎展開から始まる物語4
『題名回収の遅さに私は驚くわね』
(異能を使った第一声がこれとは一体どういうこと?)
初めてエンディアが異能を使ったのは、生まれたばかりでやることが無かったときのことだった。
『おっと、流石に初めからこの展開は不味いわね。異能である私は第四の壁を破りし者とかなんとか言われているわ』
(何者というのは異能ということでいいんだけど、原作にこんなの存在していたかな……)
誰もいない部屋で困惑しているエンディアである。従者が居ない理由はエンディアの食事を作りにいってるからだ。
『存在しないわね。既に少し触れられていたけれど、異能というのは世界を越えた者……言い換えれば転生者にしか手に入らないものよ』
(私は平穏に……ありきたりに過ごしたいんだけど)
エンディアはキャラの概要と、元となったゲームのコンセプト上、エンディア・スフィアリードというキャラクターの最後は破滅だったのではないかと予想していた。
だから、会話が一応成立していて長い付き合いになりそうなこの異能に対して自分の望むものを告げる。
『平穏とありきたりは等号で結ばれるとは思ってはいないけれど……。それがこれからエンディア・スフィアリードとして生きるあなたの願うことかしら』
(こんな公爵なんて位の高い身分に私が成れるとは思えないから、スフィアリードという名前は要らない)
従者が部屋に入ってくるが、意識が内側に向いているエンディアは気づかない。従者からすれば眠っている様子にしか見えないが、近づいてくることもなく入口付近で立ち止まる。
『あなたの望むものはこちらで把握したわ。まだあなたの人生は始まったばかり……ですが、最初からどこへ向かうか分かっているというのは私からすれば楽ね』
(…………どうやって呼べばいいの?)
異能の言葉はエンディアの頭に直接語りかけてくるという様子だった。だが聞いているエンディアは時折、聞こえていないのに脳内に文字が浮かび上がる様子がある。
『私のことかしらね……ふむ、星の導き手様とでも呼びなさい。声をかけてくれれば反応してあげるわ』
(なんで様付け?)
その言葉を境にエンディアの脳内に語りかけてきていた言葉は途切れる。そして、エンディアの真横から突如として間延びした声がかかる。
「お嬢様、お食事の時間ですぅ。お待たせ致しましたぁ」
入口付近で立っていたはずの従者は、異能である星の導き手様と呼ばれる者との会話が終わったことを見計らった様子で、エンディアの側に向かった。
(い、いつの間に……。この異能の使い道が結局分からなかったし……)
食事をさせてもらうことしかできないエンディアは、暇なときに星の導き手様に脳内で話しかけようと決意するのだった。生まれたばかりなため何もすることがなくて暇だったいう理由もある。