シャールとの別れ
それから僕とラヴィーナはしばらくの間、一緒に過ごした。魔界の有名な場所へ行ったり、ラヴィーナのお気に入りの場所へ行ったりした。彼女から魔界の様々なことを聞き、また僕も人間界の色々なことについて話をした。ラヴィーナはいつでも楽しそうに僕の話を聞いていてくれた。
陳腐な言い回しだけど、どの日々もかけがえのないものだった。僕らはそのときだけは『勇者』でもなく『魔王』でもなく、ただの人間と魔族だった。お互いがいて、それだけでいいと思えた。
──それでも、別れはやってくる。
ある日、ラヴィーナの姿がなかった。
置き手紙も何もない。別れの言葉さえも。そんなものは僕たちの間には必要なかった。
ただそのときが来たのだと、それだけが分かった。
夢の日々は終わった。シャールはここで死に、僕は『勇者クリストファー』に戻る。
剣を鞘に収めてベルトに差し込む。壁際には灰色のローブが二着、置いてあった。外に出るときにいつも二人で着用していたものだ。これが僕の魔力を隠してくれていたらしい。
もう、必要がない。だからここに置いておくことにした。二人が過ごした証として。
小屋の扉を開けて後ろを振り返る。彼女と過ごした日々を思い出して、泣きそうになる。胸を締め付けるような痛みが走る。
その全てを堪えて僕は外に出た。
──さぁ、行こう。これが最後の戦いだ。




