笑う
目の前で、さっきまで生きていた人間を、
仲間を、白が食べている。
「っぐ…あ"ぁ…っはは……
あははははっ!」
白は急に笑い出し、
「…もっ、と…食べ、た、い…!」
俺に襲いかかってきた。
咄嗟に刀で白の鎌を受け止める。
「白…!どうしたんだよ…!?」
「…っふふ…はははっ…」
「白…っ!」
「無駄ですよ」
白の隣にいた男が話し掛けてくる。
「どういう意味だっ!!」
「今彼は理性を無くしているんです。
私の術によって、ね。
まぁ、すぐに戻りますけど」
話している間にも攻撃は止まない。
「お前、誰だ…っ!」
「…申し遅れました。私、
アルトリアのボス、カインと申します」
「ボス…!?」
次の瞬間、攻撃が止まった。
「っはぁ、はぁっ、うぅ、っは、」
白が倒れ込む。
「…白っ!大丈夫か!?」
「近、づく、なっ!」
白の右腕から黒い槍が出て、
俺の足元に刺さる。
「…っ」
動けずにいると、
カインが白に近寄った。
「白、大丈夫ですか?」
「…う、ん」
「それでは、あの人間を刺しなさい」
カインが指差す方向には、明さんがいた。
「…っ!明さん!逃げ______ 」
「分かったよ、ボス」
そして黒い槍が、明さんの肩を貫く。
「やめろお"ぉぉぉっ!」
俺は白に斬りかかるが、
白はそれを避けてカインの隣に立った。
「それでは私達はこれで」
「…またねぇ」
2人は空に消えていく。
俺はすれ違いざまに聞こえた白の言葉が
頭の中から離れなかった。
『…ごめんね』
「…謝るなよ…!」
お前がそんな事するから、
俺はお前を憎めないんだ…!
2人が去った後、明さんの元に駆け寄り
怪我をしていない方に肩を貸す。
「っ、う、」
「…明さん…」
「はぁ、っすま、ねぇな…」
「俺の方こそ…」
「人型、1人、で…
相手、して、たんだ、ろ…?
凄ぇ、よ…氷神、は…」
明さんは笑って言った。
痛いはずなのに。苦しいはずなのに。
「ごめんなさい…」
「大丈夫、だっ、て」
明さんは救護テントの中に入っていった。
「…俺、何してんだろ」
自分が酷く情けない。
「…はぁ……」
今日はもう、休もう。