過去
「はやとくんっ!」
白が俺を呼ぶ。
「何?」
「遊ぼうよっ!」
白はいつもそうだった。
明るくて、元気で、
いつだって俺の側にいてくれた。
ずっと前から一緒にいて、
それが当たり前、の筈だった。
その当たり前が崩れたのは、
ある、晴れた日の事だった。
その日、小学生だった俺は、
一人で帰路についていた。
その途中、何者かに拐われてしまったんだ。
暗い部屋に閉じ込められ、
ベットに鎖で繋がれる。
そして何かの術を掛けられて、
意識がぼーっとしていた。
もう一生、死ぬまで此の儘なのかな、
なんて考えると、とても怖かった。
だけどそんな地獄のような日々は、
突如として消え去った。
白が、助けに来てくれた。
ぼやける視界で白を見る。
白は俺を拐った奴と何か話したと思ったら、
俺の所に来て、手と足の鎖を解いた。
そして、俺の耳元で囁く。
「はやとくん、生きて。
そしていつか、僕を助けて」
その言葉を最後に、俺の意識は途絶えた。
眼が覚めると、
其処は家の近くの公園だった。
そして、
「しろ……っ!」
白は何処にも居なかった。
公園にも、家にも、学校にも。
あるのは白の面影ばかり。
なんで。どうして。
不安と絶望が心の中を渦巻く。
「…どこにいるんだよ…」
白の最後の言葉が頭をよぎった。
『僕を助けて』
そして俺は自身に誓った。
必ず、白を見つけ出すと。
必ず、助けてみせると。