赤い証
「ハル、起きろ」
アルトの声で目が覚める。
どうやらあのまま
眠ってしまっていたらしい。
「ん〜、おはよぉ…」
「あぁ」
「ふぁ〜ぁ…、ねぇアルトぉ〜」
「何だ」
支度をしながらアルトに言う。
「少し付き合ってよぉ〜」
「っりゃぁぁぁっ!」
「…甘い」
鎌に変わった右腕を振り下ろすも回避され、
代わりに火球が飛んでくる。
「ぅわっと…、…絶望の黒槍!」
「っ!…火焔障壁」
僕の身体から放たれる沢山の黒槍を、
アルトの炎が弾き返した。
「はぁ、はぁ…、いやぁ〜、流石だねぇ♪」
「…別に」
「良いなぁ〜、
羨ましいよぉ、火が使えるなんて☆」
「お前の力も大概だろ」
「ん〜、そうかなぁ?」
僕の力。それは、自身の持つ感情によって
身体から様々なものを作り出せる
というものだ。
基本は右腕の大鎌。
そこから槍を出すこともできるし、
翼のようなものも作れる。
一見、すごく便利な感じなんだけど…
「…でも、そのせいで僕は
こうなったんだよぉ?」
首元の包帯に手を当てる。
この下には赤い糸が縫ってある。
これはただの自己満足の証。
妖になって僕は、沢山の人間を殺した。
その度に罪悪感で
押しつぶされそうになった。
殺した事を忘れていく自分が嫌になった。
殺しに慣れていく自分が怖くなった。
だけど " 死にたい " なんて思ったら、
それだけで僕の中の力は、
僕を殺そうとする。
だから僕は身体に糸を通した。
痛みが、目に見える糸が、
僕の罪悪感を和らげてくれる気がした。
忘れてないんだって。
殺した罪を覚えてるんだって。
そしてそれを続けていくうちに、
僕の身体は、心は、壊れていった。
心の痛みが、分からなくなっていった。
「ま、これも好きでやったんだけどねぇ♪
でも、 "普通 " じゃないでしょぉ?」
「…ここにいる奴らは誰だって
普通じゃねぇよ」
「…!…うん、そうだねぇ〜、
アルトも普通じゃないもんねぇ」
「うるせぇ」
アルトが歩き出す。
「どこいくのぉ?」
「飯」
「待って、僕も行くぅ☆」
アルトはこんなおかしい僕を
受け入れてくれる。
もしかしたら、アルトの隣が
僕の居るべき場所かもしれない。
けれど僕には、この場所を犠牲にしてでも
手に入れたいものがあった。
わかってる。
どっちもは手に入らない事も。
だけど。
それでも分かってるのに
アルトの優しさを
ずっと感じていたいと思うのは、
僕の甘えなんだろうか。




