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「あら美恵ちゃんじゃない、お久しぶり。大きくなったねぇ」

 玄関先で、私の母は快く美恵を出迎えた。むこうの親には私が連絡するから美恵を数日ここに泊めてほしいと説明すると、母は「それなら構わないよ」とだけ言って微笑んだ。

 父も母も、小さい頃から今までずっと、私に優しかった。怒られたことがないとは言わないが、ほとんどないとは言える。

 小学校の時、班通学を守らなかったのを一度咎められたが、美恵と一緒に歩きたいがために私は何度となく破り通した。小さいころからわがままで、自分のやりたいようにやり、動かしたいように何かを動かしてきた。母も、そんな折れない私をずっと見てきたせいか、それ以上何か言うこともなかった。通学班の家族には後で頭を下げただろう。申し訳ないことをしたと、今は思う。

 三人でリビングに行くと、通販で取り寄せた品物の段ボール箱を開けようとしてた父の背中が見えた。化粧品の下請け製造会社の経営をしている父親はおおらかな人で、いつも家では母とにこにこ笑いあっていた。私のわがままを何でも聞いてくれた。私は結局、反抗期らしい反抗期を迎えずに今日まで過ごした。欲しいものはすべて手に入り、親には反抗する必要などなかったからだ。

「美恵ちゃん懐かしいねぇ。何年か前、夏におばあちゃん家に行って以来だろ? 娘がもう一人増えた気分だよ。自分の家だと思ってくつろいでいってね」

 父は首だけ振り向いたままにこやかにそう言うと、向き直って上機嫌で箱の中身を物色し始めた。

「もうお父さん、ちゃんとこっち向いて挨拶なさいよ。いつまでも子供なんだから。またアニメのDVDなんか買ってきて。……ちょっと! 何で同じものが二つあるのよ」

 母がやんわりと咎める姿に父は満面の笑みを返した。

「一枚は観賞用。一枚は保存用だよ。男っていうのはね、大切なものはちゃんとこうして誰も触れられないところに入れてコレクションするものなんだ」

「やだこの人、全然男らしくないのにどうでもいい事で男の代表づらなんかして。何でこんな人とくっついちゃったんだろう。惚れたもん負けってやつよね」

 いつもこんな調子で惚気ている。美恵の方を振り返ると、二人の姿を呆けたように見つめている。その視線は羨望の色を覗かせていた。美恵の両親は私たちとは対極なのだと改めて思い知らされた。美恵が私の妹か姉だったらいいのに、とまで思った。

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