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放課後、私たちは遊歩道に隣接した公園の一画にあるベンチに腰かけていた。私が少し休憩しようと言って誘ったのだが、なかなか本当に言いたいことを口に出すことが出来ず、何処にでもある空虚な会話で徒に時が過ぎていった。
気づけば、美恵の視線がスマホの画面にくぎ付けになっていた。
「ごめん。私の話、おもしろくなかった?」
美恵は首を横に振り、私にスマホの画面を向けた。
見知った名前があった。ゆうき。横田勇樹のアカウントネーム。
――最近、色々変な噂をたてられてるみたいだね。許せないよな。ここんところずっと連絡取ってなくてごめんね。俺、美恵のこと忘れたわけじゃないし、例え美恵にどんな過去があったって、気にしないよ! 今度会おうよ。お金できたからさ。焼肉とかカラオケにでも行こうよ――
言葉の締めに頭上にハートマークを浮かべた可愛い動物のスタンプを貼ってあった。それに続いて美恵の返事に既読がついている。うん。その言葉に、私は眉間にしわを寄せたまま、視線をはがせずにいた。
「本当に会うの、美恵」
「うん。焼肉っていってるし、週末の夕方にでも」
「あのね、美恵。勇樹は、あの子にはもう」
「早苗ちゃんは、今まで誰かを好きになったことってある?」
私の言葉がぴしゃりとせき止められる。
夕暮れの赤い陽が、広場と私たちとを同色に染めていた。その時の私の顔は背後から日の名残りを受けて陰に包まれていたが、醜くゆがんでいたことだろう。美恵に見られたくなかった。
「あるよ」
「その恋は実ったの」
「まだだよ。・・・・・・想っても、届かないものなんだ」
「私もだよ。想っても届かない。だからせめて、いつどんなところからでも勇樹君から発してくれている信号を、受け止めてあげられるようになってたいの」
皆まで言う前に、私は美恵の肩に縋りついて顔をうずめていた。
「早苗ちゃん」
名前を呼ぶ声に、いやいやと首を振る。喉から、抑えきれなくなった嗚咽がほとばしった。
――勇樹は駄目だよ。これ以上、男の欲望や気まぐれに振り回されないで!
頭に浮かぶその叫びが、声にならない。声にすれば、きっと美恵は私に失望するだろう。
「もしかして、早苗ちゃん・・・・・・」
私は顔を上げた。涙で滲んだ美恵が私の顔を見て口元に手を当てる。その目の縁に涙がたまっていくのが、ぼやけた視界にも分かった。
「勇樹君の事、好きだったの? 私と同じで」
違う。首を横に振った。もう勇樹に未練はない。
「ごめんね、早苗ちゃん。でも、私は」
美恵は誤解をしたまま言葉を継いでいく。頭の中が真っ白だ。思いついた言葉やイメージの欠片が全てその白い雪面を上滑りしてどこかへ掻き消える。その間にも美恵の言葉が私の耳を通して血液のように体中をめぐり、脈を打つ。
「違うの」
もうごまかせないと思った。私は涙をぬぐい、美恵の目を正面から見つめた。美恵の目もそれに応じる。
「私は、美恵が好きなの」




