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『リング』のストーリーの優秀さについてであるが、「主人公の行動」がホラーとしては特異なものであると思われます。新聞記者である主人公は、職業柄好奇心を満たす為に呪いのビデオを見ることになってしまいます。いわゆる巻き込まれ型主人公です。
呪いのビデオを見た主人公がとる行動ですが、まず一緒になって呪いを解いてもらうために相棒を探します。この時相棒として白羽の矢が立ったのが、医学に精通しており頭脳面、精神面で主人公よりはるかに優秀な高校時代の同級生であります。
この同級生は人間性に問題はあるものの、純粋な好奇心のみで死に至るかもしれないというリスクをおかしてビデオを見てくれます。
ホラー特有の「頼りない味方」や、「誰も信じてくれない」という状態を回避したことで、主人公の行動はここから「いかに最適な行動をとるか」に重点が置かれます。これにより、「何故そこでわざわざ墓穴ほる行動をするんだよ」というツッコミが入りにくくなります。
そうです、『リング』という物語は「最適行動」で話が進んでいくのですね。具体的には、呪いのビデオを何度も繰り返し見て、そこから少しずつ「呪い」の正体をつかもうとします。
相棒の観察眼と推理力により手掛かりを掴めば、新聞記者という主人公の特性を活かして、「取材」という方法を駆使して、「呪い」の真相に近づいていきます。
それはまるでホラー小説というより、ミステリー小説並に論理的に行動していく主人公達の様子がみえます。
最終的に主人公達は、呪いの正体は「山村貞子」の怨念だと突き止めます。
全くの手掛かりが無いところからこのように自力で「貞子」までたどり着いたんですね。この後も貞子の関係者などに接触をはかり、最終的に「呪い」を解く方法までたどり着きます。
「頼りになる味方」「情報収集」「論理的行動」 が組み合わさっていることで、ただのパニックホラーに収まらないストーリー構築がされております。
そして、「呪い」を解き助かったと思われた主人公と相棒ですが、最後には「どんでん返し」が待っており、心に引っかかるような終わり方をする点は、ホラーのテンプレを踏んでおり、読者をがっかりさせるようなオチではありません。
以上のように小説版『リング』は、ホラー作品として非常に参考にするべき点が多いと思います。是非とも『リング』を読んだことのない人は参考にして下さい。