死者からの呼び声
僕には昔から死者の声が聞こえる。
なぜそうなったのかはわからないが、友達曰く、波長が合うんじゃないかって。
でも気持ち悪い…。
呼んでるような声の時もあれば独り言を言ってる声の時なんかもある。
今日ももう十分声が聞こえていた。だからうんざりしていた。
「また?もう嫌だ!なんで、僕ばっかこんな目に?僕が何かした?」涙声で独り言をつぶやいている。
その場にいた人たちは皆不思議というかなんというか変なものでも見るような目で僕を見てくる。
そりゃそうだ。
相手がいないのに大声をあげて叫んでいるからだ。クスリでも飲んでるのかもと思われたのかもしれない。そんな事してない。でも、僕にはどうしようもないとわかってるから困るのだ。
最近ではあきらめ始めている。
誰に何を言っても当事者でないとわからない気持ちというものがあるからだ。
そんな時、1人の少女と出会う。
少女は町で1人で歌っていた。独り言の歌のようなものだ。
「なんで〜〜私だけが聞こえるの?
なんで〜〜私だけが見えるの〜?
なんで〜〜、なんで〜〜?」
吸い寄せられるように少女の元へと歩いて行った僕は目の前に立つこの少女に話しかけようかどうしようか迷っていた。
「どうしたの?お兄ちゃん。」
「あ、えっとぉ〜。あのさ〜、君もしかしていないものが聞こえるの?」
すると少女は一瞬固まったが、ユックリとうなづいた。
「そっかぁ、実は僕もなんだ。一緒だね。」
その言葉を聞くと少女は嬉しそうに微笑んで抱きついてきた。
「私と一緒。一緒一緒。」
パンパンと手を叩く。
「君はいつからだい?聞こえるようになったのは…。」「最近だよ。お兄ちゃんは?」「僕はずっと前からだよ。そうだな…君くらいの頃かな?」「じゃあ一緒だね。」「ああ。」そして握手をしようと手を握ると手が異様に冷たいことに気がついた。
まるで死人のようだ。
そう考えた時、僕はとんでもないことに気がついた。僕の周りを皆避けているのだ。
それはもう避けてるなんてものじゃない。見ないふりをしているのだ。
「じゃあ、僕は行くよ。行くところがあるからね。」「うん、じゃあまたね。」「ああ。」
後ろを振り返ろうとしたが気持ちがついていかない。もしかしてもういなかったりなんかするのか?いや、このひと通りだ。急に消えたらおかしいだろ。しかし、振り返った時にはそこにいるはずの少女はいなかった。
僕は辺りを見回したが、少女らしき姿はどこにもなかった。
ヒヤリとしたものが背中をつたったのはその時が初めてだった。
次の日からその少女と出会った時間は避けるようになった。出会わないように…。何故かそれがいいことのように思われたのだ。
実際、数日経つと少女のことは忘れてしまっていた。
そんなある日ーー。
いつもの時間を過ぎていたので大丈夫だと勝手に思い込んであの道を歩いてきてしまっていた。
もう少女はいないだろうと思ったが探してみるとまたいた。今回は歌ってはいなかった。ただ誰かを探しているような…まさか、な。僕は嫌な汗をかいた。
そう、僕を探しているんじゃないかなぁ〜と。
今日は少女は深く帽子をかぶっていた。
まるで何かを隠すかのように。
そして見つかった。見つけられてしまった。
ぱぁっと明るくなった少女の顔半分には包帯が巻かれていた。
ぐるぐる巻きだ。
その包帯も緩んできているらしく下のガーゼがちらりと見て取れた。
僕は近寄るなと願ったが寄ってこようとしたのでその場から走って逃げた。
「……。」
「………………。」
何を言っているのかわからなかったが聞きたくはなかった。
「お兄ちゃん、なんで逃げるの?もうお話ししてくれないのぉ〜〜?」
そう叫びながら走ってくる少女から逃げるのに必死だった。
あちこちグルグル回っていたのでどこをどう走ったのか全くわからない。ただ少女から逃げ出すことさえできればどうでもよかった。
「待って、待ってよ〜。待て!待てって言ってんだろ!」声が徐々に太いものへと変わっていく。まるで男の声のようだ。
怖くなった僕はそのまま後ろを振り返ることなく走り続けた。額に汗をかきながら、足がもつれても走ることをやめずにいると次第に声が小さくなっていく…。
正直安心した。そう思った。その時耳元で声が聞こえた。
「つーかまえた。」
そう言って腕を掴まれた。
「ヒー!」僕は叫んだ。
すると周りの人が気がついて僕を見た。僕が変なポーズをしているのを見て不思議そうな顔をする者もいた。
僕は逃げ出したかったが、捕まっているため逃げることもできない。それが余計に恐怖を増長させた。
「離せ離せ離せ!」その場で暴れたが腕が振り解けない。そのせいで腕を痛めた。「いつっ!」そうは言っても振りほどけないまま時間だけが過ぎていく…。そして、急に腕を引っ張られた。痛めた方の腕だったのでなおさら痛みが強くなる。
少女は腕を引っ張って道路の真ん中に行こうとしている。僕を道連れにでもするつもりかと考える余裕もなかった。ただただこの腕の痛みに耐えるだけだった。
と、突然腕が解放されホッとしたところに車が走ってきた。とっさの事だったので間一髪で避ける事ができたが、少女は怒りで顔を真っ赤にしていた。
「何故逃げる!私と行こう。お兄ちゃん見えるんでしょ?話せるんでしょ?じゃあ、仲間じゃん。」「見えても聞こえても、仲間じゃない。僕は見たくも聞きたくもない!2度と近づくな!」
そう言って逃げ出した。
「あ〜〜!」少女はその場で喚き散らしていた。そして最後に一言、「逃がさない。」と。




