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第31話

ありがとうございます!

「もう少しで校門のところに迎えが来るから、行きましょうか」


可憐は4人に声をかけると、すたすたと外に向かって歩いて行き、悠里達は可憐を追いかけた。その背中に向かって悠里が話しかける。


「何から何まで悪いな……」


「気にしなくていいわ。他の人と一緒にやるのもいい経験になるでしょうしね」


「そう言ってくれると助かるよ」


出口を出る際にふと後ろに目をやると、先ほどまで確かにあったクレーターや焦げ跡は跡形もなく消えていた。まあ、また別の場所に同じようなものが発生していたが。どうやら闘技場と同じく、放っておけばそのうち直るようだ。


「どうしたの悠里?みんなもう先行っちゃったよ?」


「ああ、いや何でもない。すぐ行く」


後ろに目を向けている悠里が気になって声をかけた和葉に悠里はそう返すと、早足で修練場を後にした。


校門前に着くと、そこには黒く長いリムジンとその側に控えている執事服に身を包んだ壮年の男性の姿があった。


「お帰りなさいませ、お嬢様。お待ちしておりました。そちらの方々は御友人の方々でしょうか?」


「ええ、遅くなって悪かったわね。こっちの5人も一緒に行くわ」


「かしこまりました」


そう言って綺麗に九十度頭を下げる男性。

その後、悠里達の方を向く。


「私、蒼乃家で執事をさせていただいております、真原(まはら)と申します。以後お見知り置きを」


「ご、ご丁寧にどうも……僕は朝比奈和葉って言います」


一番近くにいた和葉が真っ先に名乗り返し、他の4人も和葉にならった。


「皆様ありがとうございます。それでは早速行きましょうか。どうぞお乗りくださいませ」


真原がリムジンの左右の扉を開く。悠里達は3人ずつに分かれて乗り込んだ。


中に入ると思っていたより広々としており、窮屈さを感じさせなかった。


全員乗ったのを確認すると、真原は運転席に座り、リムジンを発進させた。


十数分の運転の後、リムジンは緩やかに停止する。


「ここは……」


「対魔士ギルドよ」


リムジンから降りた悠里達を出迎えたのは対魔士ギルドの本部だった。


「ここで訓練するのか?」


「ええ、そうよ。中に入りましょうか」


可憐を先頭にしてぞろぞろと中に入る一行。入ってすぐ正面には受付が見える。左右にある備え付けの机と椅子には何組かの対魔士達が座って話し合っている。笑顔のところもあれば、険しい顔で紙とにらめっこしてるところもあるので、大方雑談やら作戦会議やらをしているのだろう。


可憐はそんな人たちの中をまっすぐ受付に向かう。


「今日、訓練場を予約していた蒼乃可憐です」


「あ、空さんの妹さんですね。それなら第二訓練場になります。案内は………必要ないみたいですね」


頭に疑問符を浮かべる間も無く、何かが一瞬で可憐の背後に現れ、そのまま抱きついた。


「何してるのかしら姉さん?」


「はわぁ〜可憐ちゃんの匂いがするよ〜癒されるよ〜くんかくんか」


世間的にアウトかセーフでいえば、スリーアウトチェンジであろう変態的な台詞を口走っているのはこの国最強との呼び声高い蒼乃空である。


一瞬で現れたのは、可憐に避けられないよう身体強化を駆使して高速で移動したのだろう。完全に能力の無駄使いである。


「ふぅ、これで可憐ちゃん成分はある程度補給できたかな。やっぱりまだ足りない気がするからもっかいやっていい?」


「……いい加減にしないと怒るわよ?」


「ちぇ、つれないなー。さて、冗談も程々にしとこうか。黒羽君達はまた会ったね、今日はよろしくね!」


「「「はい、よろしくお願いします!」」」


「うん、いい返事だね。じゃ、早速行こうか。私が案内するよ」


「あ、はい、お願いします。ところで今日は空さんが教えてくれるってことですけど、本当に俺達来ちゃっても大丈夫でしたか?蒼乃の訓練の邪魔になるんじゃ……」


「あれ、可憐言ってなかったの?」


「そういえば、ちゃんとは言ってなかったかもしれないわ」


「えっと、何のことですか?」


「ん?今日みんなと一緒に訓練するのが正確には私じゃなくて私が所属するシルフィードだってことだよ」


えええっ!!という光輝の絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


悠里達が案内された第二訓練場は、床も壁も白色に塗り潰された部屋だった。その異様な様に悠里達は困惑する。


ちなみに訓練場は全部で10個あり、そのうちの第二訓練場を今日は貸し切っている。


「なんか……すごいですねこの部屋」


「まだ驚くのは早いと思うよ?」


「え、どういう……」


意味ですか、と聞くよりも早く部屋の床と壁が光を放つ。すると端の方からその色が変わっていく。色の変化が端から端までたどり着くと、そこに現れたのは学校の闘技場と良く似たフィールドだった。


「すごいこれ!地面の感触なんかもそっくり!」


和葉が驚嘆の声を上げる側で、空が胸を張る。


「すごいでしょ!その気になれば、砂漠とか森林とか色んな状況が再現できるんだよ。まあ今日はこのフィールドが一番だからお預けだけど」


本来ここは魔物との戦闘を想定して作られているのだろう。そのために悪い足場での連携であったり、そこでの戦闘に慣れるために様々なフィールドが用意されている。


「すまんな、遅くなった」


訓練場の変化に呆気にとられていると背中から声がかけられた。


後ろを振り返ると、そこには岩瀬をはじめとしたシルフィードのメンバーがいた。


「ううん大丈夫、私たちも今来たところだから」


「それなら良かったのだが……」


そこで岩瀬は悠里達に目を向けた。


「そうか。今日来るリーダーの妹の友人とは君達のことだったのか。二人程知らない顔が見えるな」


「木原杏里と言います。本日はよろしくお願いします」


「あ、朝比奈和葉と言います!お願いします!」


「俺は岩瀬厳(いわせげん)だ。今日はよろしくな」


真顔だと少し怖く感じるが、ニカッと笑うその姿には幾分かの親しみやすさを感じる。


「自己紹介も済んだし、訓練を始めようか」


「まずはじめは何をするんですか?」


「うーんとね……あ、始めに言っとかないといけないことがあるんだけど」


「?」


「今日私たちが君達に積極的に何かを教えることはないよ」


「え、じゃあ俺達は何をすれば……」


「盗め」


岩瀬が放った言葉は、悠里の頭の芯に深く響いた。


「盗む……」


「そうだ。技術、発想、工夫……何でも良い。少しでも多く盗め、考えろ、それがお前らの力になる」


「まっ何かあれば全然質問してくれて良いからさっ。それぐらいは答えるよ。みんなもそれで良いかな?」


「「「はい!」」」


「うん。じゃあ早速やってこっか」


「あ、結局最初は何をするんですか?」


「そういや言ってなかったね。最初にするのは私たちとの模擬戦かな」


「……え?」


「何かを盗むってなると実践が一番だよね!」


あ、はいと言うことしか悠里には出来なかった。

ありがとうございました!

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