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二人目、力比べ

「続いて力比べだな」

「【比べ】つってんのに相手出てきませんでしたけど?」

「安心したまえ、今回は相手を用意してあるのだよ」


 水と氷が消え去った広間にて、次の【余興】が始まった。

 次は兄さんの番、その前に現れたのは灰色の猫だった。


「…………おう、幻術」

「対戦するのはこの猫なのだよ。見事撃ち負かせてみせたまえ」

「わかった」


 頷く兄さん。そんな奴に素直に返事しなくていいです!


 兄さんはフェンリルを繋ぐ鎖を解き放つ。最初から全力で行く気です。これ、相手が神話通りヨルムンガンドだったらダイナミック兄弟喧嘩だ。


 フェンリルを出現させると灰色の猫の隣に黒い猫が現れた。二対二ということか。


「最初の猫を倒せばお前の勝ちだ。――始めたまえ」


 猫と狼と人間という異色の闘いが始まった。


 兄さんはフェンリルの能力を使え、フェンリルのATKがそのまま適用される。フェンリルは60、よって兄さんもATK60。


 もっとも数値は単純計算。反映されるのはステータス全てだ。

 その結果。

 狼が四体いるとしか思えない光景が広がっていた。


「猫じゃねえ。絶対猫じゃねえ」

「ラァンが見たら泣きますねえ」


 私たちは脂汗すら滲ませながらそれを眺めていた。汗が出るのは気分だけど。


 フェンリルが黒い猫に襲い掛かると灰色の猫が横から飛びかかる。それを兄さんが蹴り飛ばし、その間にフェンリルが黒猫に反撃されていた。

 黒猫を引き剥がしたフェンリルが怒りに咆哮すると灰猫も鳴き声を響かせる。兄さんが蹴りで、黒猫が爪で結びあっている後ろでフェンリルと灰猫がもつれるように転がり。


「……肉食獣!」

「ライオンとか?」


 猫と狼の攻防が続くのだが、全員拮抗しているのか決着はつかない。

 ステータスを見なければわからないが、猫たちもATK60はあるのだろう。ステータスもほぼ同じか? やはりヨルムンガンド、弟だな。


 床を滑りながら距離を取る四体。

 兄さんは額の汗を拭う動作をする。癖であって、何度も言うがゲーム内で汗はでない。

 貫き通すように無表情の兄さんは、相棒をちらり、と見て。


「フェンリル、効果発動」

「うえ!?」


 予想外の発言にルイファイスの声が裏返った。


「ATKを60下げる」


 MOB破壊だが、この場には二匹の猫しかいない。その上、猫のATKは60はある、同数値以上のMOBはこの能力で破壊できない!


 結果どうなるか。


 フェンリルのATKが零となり、その身体に巻き付いている鎖が増えていた。

 兄さんはその場に動けないフェンリルをその場に残し、単身で飛び出していった。


「レイル!」

「……あ、はい!

 兄さん――ルウはフェンリルの元々の能力値を適用しているだけで、フェンリル自身と連動しているわけではありません。故に、フェンリルのATKを零にしても、ルウのATKは60のままです! 審判!」


――承認。審判として許可します――


 兄さんは、何故か固まったように動かない灰猫を殴り飛ばした。

 灰猫の幻術が解ける。

 そこには、鎖に雁字搦めにされた黒い巨狼の姿が一瞬現れ、兄さんの拳に貫かれて消えていった。


「見事」


 ルーズの声で、黒い猫が消えた。




 パーティーを組んでいる今、私たちは仲間、オフステラで言うところの【チーム】。

 オンステラでのパーティー編成は、【ロール】の効果を仲間たちにも及ぶように設定する、ということ。


 兄さんとルイファイスに説明され、初めて知ったのだが……素直に感心してるとルイファイスが頭痛そうにする。


「知らないで【ロール】したんかい……」

「兄さんが言ったんで、できるのかな、と」

「具体的に何するか言ってないのによく伝わんな……」

「ええ、まあ。兄妹ですから」


 普通の兄妹そんな高性能じゃねえ。

 ルイファイスの口だけが動いた。


「灰猫はフェンリルの、黒猫は俺のATKと連動していたんだ。だから、俺がフェンリルのステータスを受けた瞬間、同じ存在が四つになったようなものだ」


 比喩でもなんでもなく本当に全員ATK60の同じステータスだった。

 道理で決着がつかないわけです。


 途中で気付いた兄さんがフェンリルのATKをわざと下げ、ATK零になった灰猫をぶっ飛ばして終了、ということだったそうで。


「よくぞやったものだな。見事の一言に尽きるのだよ」

「最後は力試し? お前の額をぶん殴ればいいのですか?」

「その通りだよ。しかし……」


「殴れたら、の話なのだがね」


 玉座を立ったルーズが広間に下りてくる。いつの間にか、ルーズ以外の巨人がいなくなっていた。


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