極夜と白夜とプロローグ
はじめまして。初投稿ですがよろしくお願いします。
某県に隣接して存在する二つの市は様々な意味で日本中にその名を轟かせている。
白夜市と極夜市。
それぞれ市と同じ名前を持つ組織によって支配されているという共通点を持っていて、有名なのはその組織だ。
その組織たちは、元となっている言葉が対義語であることからなんとなくわかるかもしれないが、とにかく仲が悪い。
元々は一つだったものが分裂したのだが、仲の悪さはそれが原因ではない。内部紛争はもう片が付いている。
単純に社長同士仲が悪い、というのがその原因で、いやお前ら仲良くしろよと言いたくなる。
組織と言っても脛に傷がある連中ではなく、元は普通の株式会社だったものだ。今では成長しすぎて【会社】の枠組みを軽く超えている気がするので便宜上【組織】と呼んでいるのだが、その本質は生産業である。
あらゆる分野に手を伸ばし、どちらでも一定以上の成果を出し日本経済を語るにおいて外せないとすら言われている白夜と極夜だが、その力が主に向けられているのはゲーム産業。
ゲームに関しては仲が悪いはずなのに全力で手を組み他国の追随を許さず、ゲームの為ならばなんでもしてしまうちょっとどうかと思う連中だ。
その傘下にある両市では毎週のように何らかのゲーム大会を開いていて、それを観光の目玉にしているのだから商魂たくましい。
どれほどゲームに力を注いでいるかというと、極夜が誇る最高峰の頭脳と謳われる開発主任を、ゲーム開発の為だけに白夜に派遣するほどだ。何度も言うが、社長同士は本当に仲が悪い。
後にその主任は、潰した苦虫を入れた苦渋を飲んだような顔だった、と娘に語るのだが、とにかくそこまで嫌なのにゲームの為、の一言で首を縦に振るほどの馬鹿だ。
そんなわけで極夜市に住み極夜に所属しているはずの私の父は現在白夜市の白夜本社に出張中。年の離れた兄は高校があるため母と極夜に留まり、私は父と共に白夜にきていた。
単身赴任に近い扱いで送り込まれた父さんが白夜と共同開発したのが【plural strategy】、通称【ステラ】。
複数人戦術の名の通り、二人以上で対戦する、部類としてはTRPGに含まれるゲームだ。
ステラはいわゆる【ダイスの代わりにカードを使うTRPG】と言われていて、多彩なカードを自由に組み合わせ、それに話術を加えて相手もしくは相手チームと闘う。
日本で爆発的に広まったこのゲームだが、父さんとその開発チームは更なる発展を目指しているらしく、未だに実家に帰るという話は出てこない。
とは言っても隣町、帰ろうと思えば帰れるのだが……。仕事に関してはどこまでも優秀で有能な父は日常生活では不適合者。私が言わなければ夜も寝ないほどだ。
私の一日はそんな父を叩き起こすことから始まる。