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復讐の狼  作者: ネンネコ
1/5

非情

【番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えいたします。先ほど入った情報によりますと無法国家改正案が与野党ともに強制決議され、予定していた施行日より2週間ほど早まるとの見方が強まってるとの協議結果が打診されました。これを受け、内閣官房長官は、我々と、我々が守るべく国民は非常に憂慮すべき局面に立たされている、とのコメントを発表しました。総理は昨夜から設置された緊急対策室で各自治体との懸命な会議のもとメディアの前に姿を現しておらず、国際連合事務局はこうした我が国の対応に……】


あの当時、すでにテレビ放映されてる放送局は2つしかなく、ラジオも短波放送しか受信できない状態だった。俺の記憶している最後に見た映像は、半分崩れた国会議事堂周辺で物々しく武装した自衛隊に取り囲まれ、暴徒と化した市民が無差別に攻撃を受けてるシーンだった。


内乱というものがこれほど恐ろしい事態を招くとは誰が予想し得ただろう。


数週間前の上司の顔がよぎっていく。

いまさら俺にヘラヘラしたところでもう遅い。すでに殺しのリストはできている。


あれからちょうど1ヶ月…。荒れ果て、もうもうとした埃まみれの街はまるで世紀末の様相を呈している。

まず初めに襲撃を受けたのは予想通り、大型デパートとそれらに付随する商業ビル群のようだった。

普通に考えれば衣食住の揃ったそういった建物を狙うのは妥当に思える。だが、俺はあえて近づかなかった。

多くの人間が同じことを考える、ということはそれだけ様々なリスクも増えることになるのだから。

初日の頃ならまだしも今更安易に食料を求め近づこうものなら弱肉強食、体格差で天と地ほどの違いがある女子供は真っ先に餌食にされるだろう。よほどの容姿に恵まれてない限り。

おのずと各デパートビルには屈強な男性を中心にしたそれぞれのコミュニティが出来上がり、なかには外国人を中心にした商業ビルもあるようだった。


その代わり、俺は暴動初日、小さな薬局を拳銃を片手に何件か荒らした。内科などにある町医者、その隣にコバンザメのようにあるあの建物だ。抗生物質、包帯、痛み止め、風邪薬、睡眠薬、点滴セット…。のちのち長い目で見ればこれらは絶対必要になってくる。

次いで向かったのは乾物などを取り扱う卸問屋だった。みんながデパ地下なんかにある惣菜や生鮮食品に目を奪われてるすきに。

その倉庫には経営者らしき痩せ禿げた老齢のジジイが出刃包丁を持ち門番のように居て、銃を向けて脅しても一向にどく気配がなかった。弾がもったいないからなるべく銃は使いたくない。俺はそう思った。

三段階でスライドする特殊警棒を伸ばし、ガードする腕ごとぶっ叩いた。骨のへし折れる小気味イイ音が倉庫に響き、のたうち回る禿げた頭を中心に大声を上げながら何度も何度も殴打した。

そのたびに血が飛び跳ね、最後は蛙が鳴くような細い息をついていたが俺は頭部が変形して陥没し、脳髄が出るまで殴打しまくった。


生温かい血が俺の顔にも跳ねたが、それと同時に荒い息のなか、妙な快感が足元から這い上がってくるのを感じた。右手には拳銃。左手には特殊警棒…。それを握り締めた俺はいつしか小さく笑っていた。

殺人鬼と呼ばれる者はきっとこういう感覚になるんだろう。


妙なハイテンションのまま棚に積まれたイカの燻製を中心に、固形の栄養バー、干し柿や缶詰類を手当たり次第、キュウキュウになるまで2つのスーパーのカゴに詰め込み買い物カートごと、車の間を走って何往復もした。飲料水もタンクごと大量に盗み、各座席シートの下部にねじ込んだ。

そんな作業中、倉庫前、近所から盗みにきたらしい無防備な中年の男が俺の顔、そして床に転がって血まみれになったジジイの屍を見ながら小さな悲鳴を上げていた。


チッ… 殺してやろうか…。


今度はなんのためらいもなく簡単にそう思うことができた。澱んだ目をしながら銃口を向けつつゆっくり近づくと、その男は慌てて踵を返した。俺の顔はきっと相当恐ろしいものになっていたのだろうけど気にしないで作業を続けた。


帰り際、子供を連れたまだ若い母親が俺の車の様子を伺っていた。まだ年端のいかぬ子供はベタベタした小さい手でその大型の車を撫でていた。


「おい…」


ゴンっ・・・


警棒の芯をくった。そんな手応えだった。

柔らかそうな男の子の頭がクッキーみたいに割れ、内側からジャム化した血糊が辺りに弾け飛んだ。

余りの突然の出来事に悲鳴も出さず呆然とする母親の頭部めがけ警棒を振り下ろした。かわされた警棒だったが女の非力な肩の肉に食い込み鎖骨の割れる軽い音が聞こえてきた。


「なに・・・見てんだよ・・・」


次に振り下ろした警棒も頭部をはずれガードした細い片腕、肘関節を破壊したようだった。


「人の・・・家を・・・」


丸くうずくまった女の背中をやたらめったら殴打しまくった。横っ腹のあばら骨、そして背中の肩甲骨が砕ける音に続いて遅れたよう、やっと女が悲鳴をあげ痛みのなかで立とうとした。

俺は立ち上がろうとする女の裏側から脚部をすくうように警棒を思いっきり振り払った。


ゴキっ・・・


片脚、変な角度で膝下が曲がったと思うとスニーカーを履いた脚のつま先が真後ろを向き、見た目にも折れてるのが解った。

女はそのままもう一度地面に倒れこみ、変わり果てた子供を見ながら高く凄まじい悲鳴のまま、速い息使いで喘いでいた。這いつくばった後ろ側、もうトドメを刺すのは簡単だった。

だが、俺は大型車両の乗車口のロックを解除すると中に乗り込み、素早くエンジンをかけると蛇腹式の自動ドアを閉めた。


「アディオス・・・・・」


ザクロのような死体になった子供と重傷の母親。我ながら冷徹だと思ったがピリッとした得体の知れない快感が肉体全体を走り抜けるのを感じた。

想像を絶する痛みのなか地面に這いつくばり、憎く、恨めしそうに見上げる女の目と合ったとき、俺の股間が熱く勃起してるのに気づいた。


普段、法の下に生きてれば絶対に決してしない行為も、ここでは俺なりの生に対する美徳に感じた。

悪も正義もない。ならば、むごさも優しさも表裏一体だった。殺人は息をするのと大差ない。

力ある者が全て…。力こそが正義…。人類の祖先である猿人の時代から脈々と紡がれてきた攻撃、暴力、という遺伝子の鎖が業火に包まれて心の内で燃え広がっていった。


そこからすぐ近くにコンビニがあり、俺は辺りを警戒しながらその大きな車を止めると重武装のまま降り立った。店内は荒らし尽くされほとんど物色されていたがバックヤード、冷凍されたチキンやホットドッグの類が少し残されていた。車にある小型冷凍庫に備蓄できるだろう。俺はそう思いダンボールごと担ぎ上げた。

帰り際、レジの陰でうごめく人間が見えた。

そのメガネを掛けた小太りの女は、太ったニートのようでもありガツガツと店内に散らばった食べカスを漁ってる全く無関係な他人だった。


「チッ…このメス豚が…」


この距離ではずす気はしなかった。さっきのジジイを殺めた時と同様、弾が多少もったいなく感じたがそれよりも、1ヶ月前に民間人を射殺して以来、この手に持った拳銃が正常に作動するのかが気になった。

安全装置を外し、突然銃口を向けられた太った女は俺を見上げたまま絶句していた。


「え?…ちょ…ちょっと…」


バンっ!!…


予想通りの火薬音。ちょうど三段腹、みぞおちの辺りにポッカリ小さな穴が穿かれたと同時にドス黒い血が垂れ落ち、その女の着ている白いTシャツをゆっくり染めていった。拳銃の先から心地いい硝煙の匂いが昇り俺は小さく興奮しながら息を吐いた。


「かぁぁぁっ!・・・・・・・・かぁぁぁふ!」


レジ裏に周り仰向け、今はもう血みどろ、ひどく辛そうな呼吸をしてるそいつの脂肪の乗った重い上半身を足蹴にして裏側に回転させた。

思った通り、弾丸は背中側に貫通していない。


「チッ… やっぱアレだな…殺傷力に欠けるわ…」


すでに瀕死の肥満女の顔めがけ、勃起したイチモツを出すと勢いよく放尿した。臭いのキツイ、黄色がかった小便だった。肥満女の顔で跳ねた熱い尿がレジ裏の床に真っ赤な鮮血と共に輪を描くよう広がっていく。

こんな普段ならば、身も凍るような所業をしてても全く心が痛まないのが不思議だった。それだけ俺の人間として持ち得ていた心は麻痺し、活動を停止してしまったということなのだろう。

用を足した俺は最後に胸から大量出血し、蒼白した女の顔面を狙い定めるよう、厚底の安全靴のかかとで思いっきり真上から踏みつけてやった。何度も。何度も。何度も…。


コンビニの横側にある水道で肉塊の付着した安全靴を洗うと俺は再び車を走らせた。


灰色に荒廃した街中を見る限り、女、老人、子供、どうもこの順で至るところで殺戮が行われてるらしい、ということが段々分かってきた。

紛争や戦争、テレビのニュースなどで他人事みたくよく耳にした「弱いものが犠牲になる」ということはこうして見る限りあながち的外れではないらしい。




現にこうして、警察官・・・であるこの俺がしているのだから。




デパートなどの商業ビルに続き狙われたのは意外にも警察署や暴力団事務所だった。俺のように武器や防具、特にみんなピストルが欲しいに違いない。この平和ボケした国にどれだけの小火器が出回ってるか知らないが極めて数の少ない椅子取りゲームのようにも感じられる。

その日を境に俺は公務で着る制服を捨てた。同時にその職務も捨てたのだろう。


本来、国民の生活を守るべくあったその公の機関が機能を停止してからというもの、目に見える暴力が著しく増えてるように体感できた。

この国に生活する国民は俺を含め、比較的おとなしい民族だと自負していたがどうやらそれは根拠のない夢物語だったようだ。人間、追い詰められればどんな人種でも遅かれ早かれ同じような行動をする。


米軍基地はレベル5の警戒体勢を取りつつも、海を渡った本国そのものはこの国の法に批准してないようだったから、お互いに干渉し合わない、という合意はしっかり守られているのだろう。

数日も経たぬうちに今度は各在来線が行き交う大型の駅、消防、そして病院や学校などの公共的な施設が襲われだし1週間経ったいま、一部の繁華街を除いて都心は不気味な静けさに包まれていた。


そこかしこの道路の隅に野ざらしにされた死体や行き倒れた亡骸が横たわり、あまりの異臭に車内の空調ファンを止めて走った。


意外だったのは銀行、という建物に誰も興味を示さなかった点だ。考えてみればお金なんてあってもなくても同じでもはや価値なんかない。それはそうだろう。力、そう、暴力だけが真実で絶対的な価値がある世界なのだから。

原子力発電所やガス備蓄会社、水道浄化センターなどのインフラ関係の施設は一時は暴徒集団により占拠されつつも、そこから直接的に得られるものがない、と見込んだのか今は全くの野ざらしにされているようだった。

ただ、都市圏のガソリンスタンドだけは無法者達が今も各自専有してるようで、食料を引き換えに燃料を分けてもらえるようだった。


国を挙げての暴動が始まってから1ヶ月。地区によってかろうじて電力はまだきてるようだがやがて配電するにあたっての管制管理機能が失われ、あと数日もすればこの一帯も停電は免れないだろう。そう俺は踏んでいた。

事実上のサバイバル生活に陥ってから解ったことがひとつだけある。


それは、同じ場所に長く留まっていてはいけない、ということだった。


頑丈な家や施設に閉じこもる?核の攻撃にも耐えるシェルターに籠る?通常、人はそう思う。いつか救助がくる、という前提があるならそれはあながち間違ってはいない。

いや、それは半分当たっていて、半分間違っている。

見晴らしのイイ車内、時速30キロ以下にならないキープ速度を維持しながら俺はそう思った。


移動・・しながらる。

これが現段階、まだ落ち着かない混乱した世の中では正解のように思えた。


当然、普通乗用車では心もとない。ただでさえ幹線道路は乗り捨てられた車や事故車両によって溢れかえっているのにそんな貧弱な車両では自殺行為に等しかった。

初めの頃はよく目にしていた荷物を積んだオフロードタイプのバイクも今はあまり姿を現さない。きっと暴徒に奪われ結局のところ大事にしまわれてるか破壊されてしまったのだろう。

戦車?それは俺も考えた。だが運転できないだろうとすぐに悟る。

もちろん特殊な運転技術をマスターしたところで陸上自衛隊に配備されてる戦車なんかそうやすやすと手に入れられるハズもなく、事実、この国のアチコチにある駐屯地はどこもかしこも厳戒体勢で近づくことさえ困難だった。

自衛隊を司るはずの法が皆無なのにも関わらず、生真面目で優秀な多くの隊員は使命感や正義感に燃え、1ヶ月経過した今、この国でまだ唯一機能している組織のひとつとも言えた。


キャンピングカー?うん、イイ線いってるねキミ。

でも俺はもうワンランク上を目指した。街宣車…。

街中、ワーワーがなり立てるあの黒くゴツイ車は窓も塞がれこんな世の中にちょうどイイかもしれない。

非番だというのに、俺も何度あのデモの鎮圧に強制配属されたか解らない。

救急車…。なるほど。医療設備も備え優秀に思えたがやはり堅牢さでは心もとない。

実際、昨日だったかその白い車両を強奪してたのを見かけたが、次の瞬間には強奪され返されていた。


結局、俺の導き出した答えは警察車両である護送車だった。そう、水色のバスみたいなあの車。

仕事柄、署内にある車庫内部に近づくのは簡単だった。

俺も最近知ったが、実は相当頑丈に出来てるらしく防弾タイヤ、車体周りも爆発物に耐えられる仕様になっている。そもそも罪を犯した、もしくは検挙された人間を移送するためにある特別な車両なんだろうからヤワじゃ困るというものだ。

わずかにある小さな窓は細かいメッシュ合金と太い鉄柵に覆われていて外部からの投石などの攻撃にも長時間耐え凌げるだろう。一見、路線バスにも似た鉄製の乗降口は前方一箇所しかなく、3重のロックが掛けられ大男が外部から蹴ろうが叩こうがビクともしない。

構造的にも車両内部は鍵の掛かる3層に分かれていて分厚い鉄扉越し、それぞれ独立した部屋割りができるのが魅力的だった。

運転席から見ると前部が作業室、中部が武器防具室、そして最後部が食料庫兼移住空間というように。


おまけに普段から常備されてるモノなのか、透明な強化プラスチックのジュラルミン防護用ヘルメットと、多少重いが正規品の警棒や幅の広い盾も何人用かある。閃光手榴弾5個もいつか役に立つと信じよう。なかでも1番助かったのは足首までしっかり固定できる厚底の安全靴だった。

つまり、なにか重大な事件があるとよく機動隊員がするあの武装セットってやつだな。

そして腰にはピストル…。

本当はSITなんかが保有するショットガンやライフルでも所有できれば最高だったけど、どこに本部があるのかも知らないし知ったところでリスクを考えれば襲撃する勇気もなかった。

現警察官が所持する六発回転式、旧型の南武拳銃…。

だが、少なくとも、そこらを無防備に歩いてる間抜けな奴より何倍もマシな気がする。


暴動が発生して2日目。

交番内、気絶し倒れてる同僚の警官からこいつを盗んだ時、俺は生まれて初めて窃盗、という行為をした。

同じく暴徒によりナイフでめった刺しにされ絶命している、まだ赴任して間もない、後輩の警官がうなだれてるロッカーには24個入りの弾倉箱が3つあり、俺はそいつを懐に忍ばせた。交番に助けを求めにやってきたのか、後ろで若い女の一般人がその様子を見ていたが俺が銃を向けると足早に去っていった。


あの日から、もう1ヶ月も経ったのか…。


今はもう俺が着ているその警官が着用していた黒色の防刃ベストのポッケ、コンビニからカートンごと大量に強奪してきた1箱のタバコを取り出し、護送車のなか、ゆっくり紫煙を吸い込んだ。普段の公務、パトロール中には感じなかった線維状のベストは意識してみると妙に重く感じたが、胸もとから腹部にかけ急所を守ってくれている。

この上に機動隊員が羽織る紺色の防弾チョッキを着れば、鋭利に研ぎ澄まされたサバイバルナイフさえ貫通することは絶対ないだろう。


何事も初動が大切だ、ということがここでも実践された。いまさら食料や武器を求めてもすでに集団化した暴徒グループから奪うことは容易ではない。その辺の歩道を幽霊のよう、痩せ細った体で無防備に歩いてる奴らは時間の経過と共に死への砂時計が落ちる音を聞いてるに違いない。


都心から抜け、今は関東圏の寂れた幹線道路をヒタヒタと走行している。

実のところ、今、俺は運転をしていない。自動走行…。いや、厳密に言えば自動走行のテスト中だった。

暴動初日、朝も明けないうちだというのに暴徒で膨れ上がった大型電気店とホームセンター、そしてカーショップでくすねてきた数十個のアイカメラやセンサー部品、それにナビとノートパソコンを2台リンクさせうまいこと設計、装着させて3日がかりでこの装置が出来上がった。


全部で14箇所に取り付けたカメラとセンサーが道路に引かれてる白線とおおよその道幅を視認計算し、特別大きな障害物がない限り、この車は永遠とプログラムされた時速で指定されたルートを走り続ける。この国の真上に浮いてる衛星自体はまだ機能してるらしくGPSに支障はない。

カーナビに沿ったおおまかなルート思考のもと、前方が塞がれたり崖のような空間があると一定間隔で馬鹿でかいクラクションを鳴らし車内に居る人間に教えてくれ、30秒経過しても障害物がどかないと自動でバックギアが入り時速5キロで適切なスペースに後退する。

その後、同じ道を選択しないよう自動ハンドルを切るとまた前進を続けていく仕様だった。

思考プログラムそのものは子供の頃、パズルレールを敷いてやった自走式オモチャと変わりない簡素なものだった。運転席のボード内部に差したLANケーブルを抜きさえすれば、すぐさま手動運転に切り替えられるような工夫もした。

大型、予備のバッテリーも2つ積んでいる。電力がいつ途絶えても不思議でない街なか、この大型車両の持つ発電システムは実に有用に思えた。


動く要塞…。つまり、ここに武装し籠ってさえ居ればとりあえずの安心は担保できる。

もっともガソリンが尽きるまでだが…。その燃料も車体の後部、ベッド代わりにしてるタンクに数百リットルは積んである。また人気のないスタンドでも見つけ次第、武器を片手に補給すればいい。


ガゴンっ!・・・


運転席の隣に立って自動走行の様子を見ていると前方、乳母車を引いてヨロヨロと横切る老婆が低速で走るこの車体に巻き込まれるのが見えた。

やはりあの位の障害物では反応しないらしい。前タイヤ、それに続き後ろタイヤがなにか肉の塊を乗り越えるよう小さくたわんだ。しかし俺にしてみれば好都合だった。いちいち人が居て止まっていたのではキリがないし安全面でも良くはない。人生の終焉間際、護送車にゆっくり轢き殺される老婆の人生とは一体なんだったのだろう。

ゴミクズのように後ろ側から吐き出された小さな肉塊とボロボロになって転げてく乳母車がサイドミラーの片隅に映った。

今は20キロ~30キロをキープしつつ走らせてるがこのぶんだと、もう少しプログラムをいじれば50キロ程で走らせることも可能なようだった。


俺は自動走行テストに半ば満足し、ゆっくり殺しのリスト帳をめくると、上司の刑事部長である長谷川の家をカーナビに打ち込んだ…。



さぁ、こんな暗い話しばっか読んでないでノクタへGO!ヽ(´▽`)/

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